2年度胆振管内教育推進の重点 教育効果高い学校づくりを 小・中校長会議で山上局長説明
(道・道教委 2020-05-20付)

胆振教育局長山上和弘
胆振教育局・山上和弘局長

 【室蘭発】胆振教育局は4月上旬、むろらん広域センタービルで管内公立小・中学校長会議を開いた。山上和弘局長が令和2年度の管内教育推進の重点を説明。推進テーマには、前年度に引き続き「オール胆振で教育効果の高い学校づくり」を掲げた。管内すべての学校で取り組むこととして、学力・体力の向上など4つの重点を示した。

管内教育推進の重点はつぎのとおり。

◆はじめに

 本年度の胆振管内教育推進の重点については、管内全体が諸課題の課題解決に向けて、足並みそろえた取組を図るため、前年度に引き続き、推進テーマを「オール胆振で教育効果の高い学校づくり」とした。

 また、諸課題の解決に向けた共通の取組姿勢として新たに“重点達成への鍵”を示した。

 学校や地域の実態を踏まえながら、重点の達成に向け、取組の「焦点化」、手段や役割の「見える化」、責任と覚悟をもって「徹底・継続」して取り組むことをお願いする。

◆各重点について

▼重点1 学力・体力の向上

 学力については、小・中学校共に、全教科で全国を下回っており、特に、算数・数学で差が大きいという課題が継続している。一方で、同一集団における経年変化では、国語、算数・数学とも全国との差が縮まっている。

 また、前年度の重点で掲げていた「調査結果に基づく検証改善サイクル確立」について、質問紙調査の結果では、小・中学校共に「PDCAサイクルの確立」や「組織的な取組」をよく行っている学校が6割に満たないという状況がみられる。

 体力は、小学校では男女共に体力合計点が全国を上回っているが、男女共に全国との差が縮まる傾向にある。

 また、中学校では依然、男女共に全国に達しておらず、女子は全国との差が縮まったものの、男子は年々差が広がる傾向にある。

 さらに、同一集団における経年変化では、男女共に全国との差が広がる傾向にある。

 各種目の状況をみると、全国を上回っている種目は、小学校が男女共に50㍍走と20㍍シャトルランを除く6種目。中学校が男子の握力のみとなっている。

 こうした状況を踏まえ、「学力・体力の向上」を重点に設定し、全国調査などの客観的データに基づき、新学習指導要領への対応や学校種間連携の取組などを通して、各地域や学校における学力・体力にかかる課題を解決するため、各学校で作成する「改善プランに基づく取組の推進」を重点の柱とした。

 特別支援教育については、通常の学級に在籍する特別な教育的支援を必要とする児童生徒数とその割合が年々増加傾向にある。

 一方で、児童生徒数の増加に、個別の教育支援計画の作成が追いついていない状況である。

 乳幼児期から学校卒業後までを通じた一貫した丁寧な教育的支援が、これまで以上に求められていることから、担当教員の専門性の向上を図る取組等を通して、必要とするすべての児童生徒の個別の教育支援計画を作成し、ニーズに応じた指導・支援を行うため、「特別支援教育の充実」を柱とした。

▼重点2 豊かな心の育成

 いじめの状況をみると、平成30年度の管内の認知件数は、29年度よりも増えており、各学校での積極的な認知が進んでいることがうかがえる。一方で、認知した学校の割合は、高校以外では全国と大きな開きがあり、いじめが見過ごされている恐れがある。

 また、不登校の状況では、30年度の1000人当たりの不登校児童生徒数は、すべての校種において全国よりも少なくなっているが、実数では、29年度と比べ、小学校で53人増えており、憂慮すべき状況となっている。

 こうした状況を踏まえ、専門家や関係機関との連携等の取組を一層強化して、いじめ・不登校を防止・解消する必要があることから、「いじめ・不登校の防止・解消」を柱とした。

 ふるさと教育については、子どもたちが地域への誇りと愛着をもち、地域の将来を担う人材として成長していくために、地域資源を活用したふるさと教育が求められている。

 ふるさと教育の現状をみると、アイヌの人たちの歴史・文化等の学習において、施設や人材を活用している学校の割合は、半数に達しておらず、特に中学校の割合が低くなっている。

 こうした中、アイヌの歴史や文化の多様性にふれることができる「ウポポイ」がオープンする予定であり、管内の子どもたちにとって、アイヌ文化の理解を深める絶好の機会である。

 このことから、教育課程への位置付けなどの取組を通して、ウポポイをはじめ、各地域にある地域素材を積極的に活用し、ふるさとに対する興味・関心を高めるため、「ふるさと教育の推進」を柱の一つとした。

▼重点3 生活習慣の改善

 31年度全国学力・学習状況調査の児童質問紙における「普段、1日当たりどれくらいの時間、勉強をするか」との質問に対し、小学校で「全く勉強しない」と回答した管内の割合は、全国を下回っている。しかしながら、「1時間以上勉強している」と回答した割合は、小・中学校共に全国を下回っており、適切な学習時間の確保と家庭学習習慣の定着に課題がみられる。

 こうした状況を踏まえ、家庭での主体的な取組を促すなど、家庭学習の方法や内容等について家庭と共通理解を図り、家庭学習習慣の定着を促すことが必要であることから、「家庭学習の充実」を柱とした。

 元年度全国体力・運動能力、運動習慣等調査の児童生徒質問紙における「1日にどれくらいの時間、テレビやゲーム機などの画面を見ているか」との質問に対し、「2時間以上」と回答した管内の割合は、小・中学校の男女共に全国を上回っている。

 こうした現状を踏まえ、引き続き、1日のタイムマネジメントができるようにするなど、メディア利用を含めた望ましい時間の使い方を指導し、生活習慣の改善を進める必要があることから、「生活リズムの定着」を柱とした。

▼重点4 働き方改革

 学校における働き方改革については、市町で策定しているアクション・プランに基づき、取組を進めていただいているが、「変形労働時間制を活用している学校の割合」「定時退勤日を月2回以上実施している学校の割合」をみると、前年度と比較して、小・中学校共減少している。

 また、「勤務時間の把握・記録状況」では、実施している小学校の割合が半数に満たない状況である。

 このため、教育委員会と教育局とが連携した取組によるプランの目標指標の達成や、管内統一のノー部活DAYなど、部活動休養日等の取組の完全実施を目指すため、「アクション・プランの確実な推進」と「部活動の方針に基づく取組の推進」を柱とした。

 最後に3点、重点以外にお話しする。

▼GIGAスクール

 校内ネットワーク整備事業、児童生徒1人1台端末整備事業では、本年度分について、前年度と同じスケジュールで交付申請、決定を進める予定。まだ申請していない所においては、準備をお願いする。

 特に、校内ネットワーク整備事業は3年度以降の補助はないので留意を。

▼女性教員の活躍推進

 女性活躍推進法に基づき、道が策定した特定事業主行動計画において、管理職員に占める女性の割合の目標を、本年度までに15%としている。ことし4月1日における管内の割合は4・9%と、目標を大きく下回っており、全道的にみても低い状況にある。

 教育委員会においても、日ごろから優秀な人材には、継続して声をかけていただくなど、学校運営への意識の高い人材を幅広く登用できるように働きかけをお願いする。

▼服務規律の保持・徹底

 これまでも機会あるごとに、学校に注意喚起してきたが、依然として、不祥事が絶えない状況にある。

 特に、体罰事案については、全道と比較しても多い状況となっていることから、今一度、研修等による教職員一人ひとりへの指導の徹底をお願いする。

 本年度も、効果的な取組を“オール胆振”で進めていきたいと考えているので、よろしくお願いする。

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令和2年度・胆振管内教育推進の重点
令和2年度胆振管内教育推進の重点(クリックすると拡大表示されます)

(道・道教委 2020-05-20付)

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