目的共有化などの成果 道研 働き方改革研究集録
(道・道教委 2020-05-29付)

 道立教育研究所は、働き方改革にかかる研究集録『持続可能な働き方を実現するための職場議論に関する一考察』を作成し、研究所ホームページで公開している。北海道大学大学院教育学研究院との共同研究。アンケートや職場議論などを通し、自らの組織を対象として進めてきた研究の成果として、「働き方改革の目的の共有化」「職場の課題の可視化」などを挙げている。

 道研は前年度、所内に研究チームを編成し、北大大学院教育学研究院の浅川和幸教授と協働で研究。職場アンケートから課題を可視化し、職場議論などから行動目標の合意、働き方を変える職場実践、検証と改善の継続研究に至るプロジェクトとなっている。

 プロジェクトは、道研の若手・中堅所員が実践した。内容は、①道研の働き方研究「持続可能な職場づくりを目指して」②方法③考察④行動目標の実践・検証の見通し⑤大学側から見た取組の評価⑥おわりに(研究のまとめに替えて)⑦資料―の7章構成。

 ②では研究のねらいと研究方法、③ではアンケート調査とデータに基づく職場議論を経た行動目標の設定について、④では管理職議論の内容と職場における共通実践・検証について、⑤では浅川教授による評価を交えた解説などを盛り込んでいる。

 学校の働き方改革をけん引する行政組織として、自らの組織で率先して実証実験を行い、働き方を変えるための理論化を進めてきた研究の概要と成果を紹介する。

研究の概要

【研究テーマ】

▼道研における実践を通した働き方改革を推進するための理論化

【研究の目的】

▼所員が学ぶ時間の確保

 激しく変化する社会やテクノロジーに対応し、未来教育づくりに取り組むことを可能とする所員の資質・能力の向上。

▼所員になる人の確保

 意欲的に指導主事を希望するための環境づくりと、すべての所員が生活と仕事を両立できる働きやすい職場環境づくり。

▼所員の幸せづくり

 仕事の本質に正対し、組織の目的・目標を達成できたという真に実感できるやりがいの追求。

【研究方法】

▼働き方研究チームの編成

 所長をチーフとして、所内に働き方研究チームを編成。前例などにとらわれない視点の重要性から、管理職ではなく、道研勤務年数が浅い若手・中堅の一般職員で編成した。

 また、道教委と北大教育学部が包括連携協定を結んでいることから、専門的な知見を有する外部有識者として、北大大学院教育学研究院の浅川教授の監修を受けた。

▼研究スケジュール

▽令和元年9月=アンケート実施

▽10月=アンケート分析

▽2年2月=分析データに基づく職層別の職場議論、職層を混ぜた職場議論を経ての行動目標の設定、追加アンケートの実施・分析、追加アンケートの結果を踏まえた管理職議論

▽3月=管理職としての行動目標の設定および職場実践、研究集録の作成

研究の成果

 北村善春所長(当時)は、研究で明らかになったこととして、以下の4点を挙げている。

▼働き方改革の真なる目的を共有できたこと

 時間外勤務の縮減と働く人の健康管理は、職場として実現すべき問題であるが、「それが実現できれば、働き方改革が実現できたと言えるのか」という問いに対して職場全体で取り組んだ結果、「働きやすい職場環境づくり」「相談・協働しやすい人間関係づくり」「やりがいや自己肯定感・自己有用感を実感できる働き方」などが欠くことのできない要素であり、その実現に向けて、「指示する側と受ける側とでの共通理解」「職層ごとの業務マネジメント」「職場の円滑な人間関係づくり」が必要であることが明らかになった。

 働き方改革の目的は、ほかから提示されるものばかりではなく、自らの職場の問題を自ら把握・分析し、一人ひとりの所員が自分事として考え、改善に当たる意義を実感することができた。

▼働き方に関する職場の課題の可視化できたこと

 これまで漠然としていた職場の働き方の課題をデータとして可視化したことで、全所員の共通理解につなげることができた。また、アンケートに自由記述を取り入れたことで、定量的に数値化できる内容だけではなく、所員の考えや悩み等を把握できた。

▼データに基づいた職場議論を通して、業務の進め方や人間関係の築き方に関して一定程度の共通認識がもてたこと

 データを題材として、職層別のグループごとに、データが示す職場の問題点を明らかにして解決策を検討、その後、全職層が集合して、グループごとの議論の結果を紹介し、全体で共有できる観点を見つけ出すという手法を取り入れたことで、一定程度の合意点と行動目標を設定することができた。

 多様な意見の中から共通する部分を見つけ、合意形成を図るという形態によって、自分の意見を発信できたばかりではなく、所全体の働き方については、どの職層の所員であっても当事者としてかかわったという実感を得ることにつながった。

▼職場の衛生委員会との連携など継続的な研究体制の構築

 職場の健康管理体制の全体を把握する衛生委員会では、その役割の一つとして、ストレスチェックに基づいた職場の働く環境を継続的に把握し、必要な手立てを講じることが求められる。

 本研究は、この役割と共通する部分が多かったことから、今回設定した行動目標の進ちょく状況の把握や、働き方に関するアンケート調査の継続実施と分析結果を、職場の健康管理と関連付けてしていくことが確認できた。働き方研究チームと衛生委員会との連携体制が整備できた。

 最後に、北村前所長は「客観的・主観的な要素を織り交ぜた調査を通して問題点を可視化し、職場議論を通して、主たる問題点や合意可能な解決策を見つけ、全員で実施し検証するという一連の流れが生まれたことにこそ、大きな意義がある」と、今後の道研としての働き方改革の理論化につながることを期待。

 本研究について「学校や行政機関などの他組織においても共通して実践できる部分があるので、積極的に試行してほしい」としている。

(道・道教委 2020-05-29付)

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