公立高・特校長会議の道教委所管事項説明〈下〉 ICT授業モデル作成 コロナ 差別・偏見生まない指導を(道・道教委 2020-06-05付)
山本純史学校教育局指導担当局長
◆学校教育局指導担当
【公立学校全般にかかる事項】
▼新型コロナウイルス感染症への対応について
▽児童生徒等の心身の健康状態の把握
心身の健康状態の把握に当たっては、引き続き健康観察シートを活用するなど、十分に留意されるようお願いしたい。
なお、例年6月末までに実施している児童生徒等の定期健康診断に関し、本年度は7月以降の実施となることもあり得るが、このことで、心疾患等の発見が遅れるといったケースも考えられることから、日常的な健康観察などによって問題があると認められる場合は健康相談や保健指導を実施するなど、適切に対応するようお願いしたい。
現在、新型コロナウイルス感染症に関して、差別や偏見の実例が数多く報道されている。
各学校においては、新型コロナウイルス感染症に関し、差別や偏見が生じることのないよう必要に応じて指導するなど、すべての児童生徒が安心して学校生活を送れるよう、適切に対応していただくようお願いする。
▽部活動
新型コロナウイルス感染症の収束が見通せないことから、5月1日付で、道高体連、道高野連および道中体連に対して当面の間、中学校および高校が参加するスポーツ大会の自粛または延期について検討するよう依頼した。
なお、文化系の部活動については、今後、高文連と連携を図りながら、対応を決定することとしているので、各学校において、臨時休業中の部活動については見合わせるようお願いする。
▽学校保健に関する専門家との連携・協働体制の整備等
ことし4月に一旦学校が再開したあと、再び全校が臨時休業に入るまでの約2週間、複数の学校から、生徒の家族が濃厚接触者の疑いがあるとされたケースや、寄宿舎のある学校で寄宿舎生が風邪の症状を訴えたりした際に、直ちに該当生徒の出席停止や閉寮、学校の臨時休業措置を講じたなどの報告があったが、判断が適切であったかについては検証が必要である。
新型コロナウイルス感染症は、いまだ解明されていないことも多く、生徒の出席停止や学校休業措置を検討する際には、地域の危機対策本部や保健所、学校医・学校薬剤師等の専門家の意見を聞くことが重要であり、そのためには、日ごろから連携や協働体制を整備しておくことが必要となる。
不明な点や専門家の意見が得られないという場合には、教育局を通じ、健康・体育課あてに照会いただきたい。
▼GIGAスクール構想およびICTを活用した教育の推進
道教委においては、本年度から順次実施される新学習指導要領を踏まえ、学校のICT環境を整備するとともに、それらを効果的に活用した主体的・対話的で深い学びを実現することで、子どもたち一人ひとりの力を最大限に引き出しながら、新しい時代に求められる資質・能力を育むため、本年度、ICT教育推進局ICT教育推進課を2年間の時限で新設した。
今後、ICTを活用した教育の先進事例を調査、収集するなどして、まず、本年度は活用指針や授業モデル等を作成することや、クラウドを活用した指導案づくりや教材を教員間で共有できる環境を整備するとともに、準備ができ次第、普及を図るなど、ICTを活用した教育活動の充実を図ることとしている。
なお、道立学校のネットワーク環境整備については、本年度中に、すべての学校の校内LAN回線を更新し、普通教室などへの無線LANアクセスポイントの整備を行う。
工事は7月に契約し、各学校とスケジュール調整をした上で、年度内に終わるよう進めることになるが、すべての学校で工事を行う必要があることから、基本は平日の1週間程度、放課後を中心とした作業となり、場合によっては不便をかけることもあると思うが、理解いただきたい。
登別明日中等教育学校前期課程、特別支援学校の小・中学部の児童生徒を対象にした1人1台端末の整備については、新型コロナウイルス感染症にかかる緊急経済対策として、当初の計画を大幅に前倒しし、本年度内に進める予定であり、一度に大量の端末が学校に納入される場合もあるが、児童生徒が早期に活用できるよう、ネットワーク接続に関して技術的なサポートを行うGIGAスクールサポーターを派遣する予定であるので、併せて受け入れの対応をお願いする。
さらに、緊急時におけるオンライン学習環境の整備として、すべての道立学校に、カメラやマイクの整備を予定している。
▼遠隔授業の配信機能の集中化
令和3年度に、仮称・道高校遠隔授業配信センターを有朋高校内に設置する予定であり、本年度は、教育環境支援課に遠隔授業準備室を設置するとともに、担当する教職員を有朋高に配置している。
3年度の本格実施に向けて遠隔授業を試行実施することとしており、その際、受信校として1校に対応いただくこととしているので、当該学校には協力をお願いする。
3年度には本格実施する予定であり、地域連携特例校や離島の道立高校のうち希望する高校を対象に、1年生から学年進行しながら、配信する計画である。
一方、現在実施している地域連携協力校からの出張授業は、3年度の入学生から行われなくなることから、配信予定のない教科・科目については、道立学校間連携等によって実施するなどの工夫が求められる。
各学校においては、道立学校間連携等の依頼があった場合に、協力いただけるよう、特段の配慮をお願いしたい。
▼生徒指導および学校安全
▽児童虐待への対応
ことし4月1日、児童虐待防止対策の強化を図るための児童福祉法等の一部を改正する法律が施行された。
各学校においては、改正内容を教職員に周知し、昨年5月に配布した『学校・教育委員会等向け虐待対応の手引き』を活用して、すべての教職員が適切に対応できるよう、校内体制の整備をお願いする。
▽いじめ問題への対応
昨年2月に策定した道いじめの防止等に向けた取組プランを踏まえ、昨年、意識アンケート調査を実施した。
結果は、ことし3月に通知したが、いじめの定義や学校いじめ防止基本方針について、「理解している」と回答した教職員の割合が5~6割程度、保護者は1割程度にとどまっている。
元年6月に配布した教員用リーフレット『いじめの正確な認知に向けて』を活用して、自校の実情をもとに研修を実施するとともに、保護者向け学習会やPTA研修において、学校いじめ防止基本方針の内容等を説明するなど、学校の取組等について保護者の理解を深めるようお願いする。
なお、いじめの認知がゼロだった学校については、その事実を生徒や保護者に公表し、認知漏れがないか確認するようお願いする。
部活動がいじめの温床となっていた事案もあることから、元年9月に配布した研修用資料「いじめへの適切な対応に向けて」を活用した研修を実施していただくとともに、管理職が部活動の運営状況を確認するなどして、適切な運営のための体制整備をお願いする。
▽不登校児童生徒への支援の在り方
不登校児童生徒は、年々増加するなど依然、憂慮すべき状態であり、欠席が連続している児童生徒に対しては、早期から支援を行う必要があり、不登校となった要因を的確に把握し、家庭、学校、関係機関が組織的・計画的に支援することが重要である。
各学校においては、児童生徒理解・支援シートを作成・活用するなどして関係者間で情報共有を図り、計画的な支援につながるよう適切な対応をお願いする。
また、相談窓口を周知、紹介し、専門的機関等で相談・指導を受けていない生徒をなくすよう取組の徹底をお願いする。
▽自殺予防教育
前年度も、自殺が疑われる事案や自殺未遂が発生しており、憂慮すべき状態となっている。
自殺予防教育については、特に社会における様々な困難、ストレスへの対処法を身に付けるため、SOSの出し方に関する教育が求められている。
道教委が作成、配布した自殺予防教育プログラムでは、生徒が困難な出来事について、楽観的に考え直すことや、将来に目を向けることなど、ストレス対処能力の育成についての取組を示しているので、これを参考に取り組んでいただくようお願いする。
子ども理解支援ツール「ほっと」は、自殺予防教育の下地となるコミュニケーション能力や、望ましい人間関係を構築する能力について測定できることから、自殺予防教育プログラムの取組の前後で実施をすることで、児童生徒の変容を客観的に図る指標として、活用いただきたい。
児童生徒は、臨時休業によって長期間、学校から離れた生活を送っており、様々な不安を抱えていることがあると考えられることから、教職員は、これまで以上にきめ細かく児童生徒を見守り、小さなサインを見逃すことなく、必要に応じて、スクールカウンセラー、スクールソーシャルワーカーや関係機関と連携するなどして、教育相談体制の充実を図るようお願いする。
▽学校安全にかかる取組の充実
昨年10月に判決が出た東日本大震災の津波被害にかかる大川小学校事故訴訟の結果を受け、昨年11月に学校の危機管理マニュアルについて、地域の実情に応じた見直しをお願いした。
各学校においては、すべての教職員が内容等を十分理解し、事件、事故災害が発生した際には迅速かつ適切に対応することができる体制を整備するとともに、避難訓練や防災教育など、学校安全に関する取組を推進するようお願いする。
▼2年度道教職員研修計画
元年度の研修の効果にかかわる評価・検証を通じて課題等を明らかにし、ことし3月、2年度道教職員研修計画として改定した。
本計画では、2年度の重点的な取組を記載しているほか、学校における働き方改革「北海道アクション・プラン」を踏まえた研修の精選や、管理職版育成指標に基づく管理職のマネジメント能力の向上にかかる研修の充実を図るとともに、各キャリアステージにおける研修内容の系統性・発展性が分かるように整理した。
各学校においては、教職員が主体的、積極的に各種研修に参加するよう指導していただくほか、道教委の研修との関連を図りながら校内研修を実施するとともに、特に若手教員が多い学校においては、先輩教員から若手教員へ知識・技能を伝承するメンター方式による研修を推進するなど、研修の充実を図っていただくようお願いする。
▼食育の推進と事故防止
栄養摂取の偏りや朝食欠食といった食習慣の乱れ等に起因する健康課題への適切な対応といった観点から、児童生徒が食に関する知識と望ましい食習慣を身に付けるため、学校給食の食事内容の充実や、食育を推進することが必要であり、各学校において適切に対応するようお願いする。
前年度は異物混入、食物アレルギー等の学校給食を起因とする事故が数多く発生した。
各学校においては、あらためて、国の学校給食衛生管理基準に基づき、道教委が作成した『学校給食衛生管理マニュアル』『食物アレルギー対応の進め方』『特別支援学校のための再調理ガイドライン』などを活用し、事故発生時の連絡体制を全教職員で確認するなど、安全で安心な学校給食の提供に万全を期すとともに、新型コロナウイルス感染症にかかる衛生管理等についても適切に対応していただくようお願いする。
▼5年度全国高校総合体育大会夏季大会
本年度、学校教育局健康・体育課内に高校総体企画係、競技係を設置し、人員を増員してインターハイ道大会に向けた準備を進めている。
3月末現在、道内で開催を予定している競技の会場地について、22競技、12の自治体から承諾書の提出があった。
その他の競技についても、各自治体と最終の協議に入っており、7月に設立予定の準備委員会において、会場地を正式決定する予定である。
今後は、道高体連や会場地自治体をはじめ、高校関係者と連携を図りながら準備を進めていきたいと考えており、5年度全国高校総合体育大会(夏季大会)の開催に向けて、引き続き理解・協力を願う。
【特別支援学校にかかる事項】
▼特別支援学校学習指導要領等の改訂
幼稚部では、平成30年度から、小学部では本年度から全面実施されているおり、各学校においては、来年度からの中学部、その翌年度からの高等部における全面実施に向け、様々な取組が進められている。
各校長には、新しい学習指導要領の趣旨や内容についてあらためて教職員に周知し、それぞれの学校において、カリキュラム・マネジメントを計画的・組織的に行うことや、主体的・対話的で深い学びの実現に向けた授業改善の取組を推進するなど、教育の質の向上が図られるよう、リーダーシップを発揮していただきたい。
▼個別の教育支援計画
個別の教育支援計画は、学校と関係機関等との連携のもとに行う児童生徒等に対する長期的な支援に関する計画であり、これまでも、作成・活用の充実についてお願いしてきた。
特別支援学校の学習指導要領では、教育内容等の主な改善事項等として「自立と社会参加に向けた教育の充実」が掲げられており、その中で、進路先である企業や福祉施設等に在学中の支援の目的や教育的支援の内容を伝えるなど、切れ目のない支援を行う上で、個別の教育支援計画を活用することが重要であると述べられていることを踏まえて、各学校においては作成・活用の一層の推進に努めていただくようお願いする。
【高校教育にかかる事項】
▼新高校学習指導要領に伴う移行措置
新高校学習指導要領が告示され、前年度から総則等で移行措置が行われている。
各学校においては、移行措置にかかる前年度の実施状況を踏まえ、学習の効果の最大化を図るカリキュラム・マネジメント等に努め、本年度の取組に反映させていただくようお願いする。
総合的な探究の時間については、教科・科目等の枠を超えた横断的・総合的な学習や生徒の興味・関心等に基づく学習を行うなど、創意工夫を生かした教育活動の充実を図るとともに、全教師が一体となって組織的に指導に当たる連携協力体制を整えていただくようお願いする。
なお、4年度入学者教育課程表の作成について、各教育局を通じて依頼しているが、教育課程の編成に当たっては、生きる力の育成という教育の目標が教育課程の編成によって具体化されるとともに、教科等横断的な視点に立った資質・能力の育成を教育課程の中で適切に位置付けていくことなどが重要であることを踏まえ、教育課程の編成をお願いする。
▼道高校未来を切り拓く資質・能力を育む高校教育推進事業
新学習指導要領の実施に向け、生徒が未来社会を切り拓く資質・能力を育成するため、生徒に求められる資質・能力とは何かを社会と共有し連携する社会に開かれた教育課程の実現を図ることをねらいとして、元年度から3年間で実施することとしている。
学校支援事業として総合的な探究の時間推進プロジェクトおよびカリキュラム・マネジメント推進プロジェクト、教員支援事業として授業改善セミナーおよびスペシャリスト育成講座、生徒支援事業として、探究活動キャンプおよびアドバンスト学習キャンプなど、取組を実施している。
各学校においては、本事業を積極的かつ効果的に活用し、4年度からの新学習指導要領の実施を踏まえ、新しい時代に必要な資質・能力の育成を図るための社会に開かれた教育課程および主体的・対話的で深い学びの実現に向け、学校全体で組織的に取り組んでいただくようお願いする。
▼高校における特別支援教育、通級による指導
高校における通級による指導は平成30年4月に制度化され、本年度は4校で実施する。
通級による指導は、障がいによる学習上や生活上の困難がある生徒に対し、その改善・克服を目的に障がいに応じた特別の教育課程を編成し個別の指導を行うものであり、通常の学級における授業の理解促進や、自立や社会参加を図るために必要な能力の育成、改善・克服のプロセスが生徒の学習意欲や自己肯定感の向上につながることなどが期待されている。
高校において通級による指導を受けている生徒には、個別の教育支援計画の作成が義務付けられていること、また、通常の学級に在籍する障がいのある生徒などについても、個別の教育支援計画を作成し、活用に「努めること」とされていることを踏まえ、各学校においては、適切に作成・活用していただくようお願いする。
なお、道教委では、各学校が、通級による指導の導入を検討する際に参考となるよう、昨年3月に『通級による指導の手引』を作成したほか、通級による指導を実施している道立学校の通級指導担当教員を、他校の校内研修会の講師として活用する高校通級指導担当教員活用事業を本年度も実施することとしているので、活用を検討いただきたい。
▼キャリア教育の充実
本道において、生産年齢人口が減少する中、若者の道内定着を促進し、地域産業を支える人材を育成するため、道教委と知事部局が連携・協力し、農林水産業、建設産業の体験機会の創出や、生徒が地域課題の解決に主体的に取り組む実践、産業教育・職業教育やキャリア教育の充実を図っており、その取組の一つとして、30年度から本道の基幹産業への理解を深めることを目的に道ふるさと・みらい創生推進事業を実施している。
本事業では、高校生が地域の課題を解決するための取組を企画・立案し、地域社会の一員としての意識をもちながら、課題解決に取り組むプロジェクトに取り組んでおり、前年度は全道フォーラムを開催し、事業の報告やまちおこしをテーマとしたワークショップなど、生徒が主体的に地域課題を解決しようとする意欲の向上を図った。
また、道内の中学2年生と高校2年生を対象として農業や建設業などの魅力、職業に就いた場合の生活等を紹介するガイドブックを配布した。
本事業は本年度が最終年度であることから、ことし10月に全道フォーラムを開催し、各プロジェクトの成果を発表するほか、地域の自治体に向けたプレゼンテーションを行うなどして、各学校に対し本事業の成果の一層の普及を図ることとしている。
地域の課題を探究するこうした活動は、自己のキャリア形成の方向性との関連も見つけやすく、生徒の関心も高いことから、各学校においては、本事業の成果を参考にするなど、生徒が主体的に地域と連携・協働し地域の特性や教育資源を活用するキャリア教育に取り組んでいただきたい。
(道・道教委 2020-06-05付)
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