リモート学習推進求める 公立高校長等会議で道教委・小玉教育長(道・道教委 2020-06-04付)
道教委・小玉俊宏教育長
道教委は5月21日と5月28日、道庁別館と各学校などを遠隔システムでつなぎ、令和2年度公立高校長・特別支援学校長会議を開いた。冒頭、小玉俊宏教育長があいさつに立ち、新型コロナウイルス感染症への対応など5点について要請。学校再開後の学びを保障する有効な手段として、リモート学習の推進を挙げ、児童生徒における感染被害の拡大防止に全力を尽くすよう求めた。
小玉教育長のあいさつ概要はつぎのとおり。
▼新型コロナウイルス感染症への対応
さらなる臨時休業および臨時休業期間中の対応について、5月4日付など、数次にわたり通知している。
今後も可能な限り、感染および拡大のリスクを低減させながら、週ごとに登校回数を増やすなど、段階的に学校の教育活動を再開するための準備を進めていただくようお願いする。
臨時休業期間が長期化してきたので、その中でも最大限学びの機会を保障するため、先週、ICTを活用した『リモート学習支援応急対応マニュアル』を発出した。
オンラインと呼ばずにリモートとしたのは、デジタルでは、どうしても手を尽くせない子どもたちへのアプローチも盛り込んでいるからである。
各学校においては、臨時休業期間中だけでなく、学校再開後の学びを保障する有効な手段ともなるので、この機会にリモート学習を推進し、既存のルールに縛られず、今できるロジスティクス、つまり金、モノ、人、情報であるが、これを結集し、チャレンジをスタートしていただくよう強く願っている。
従来の、道具をそろえるまで待つというのではなく、被害の拡大を防ぐためには、身の回りの資源で何とか危機を克服すること自体が最善の学びを提供する下地になると考え、皆さんの協力をお願いする。
一方、通信環境の整わない子どもたちを取り残して“仕方ない”では、不利・不平等になるという指摘もあると思うが、子どもたちを取り残して仕方ないと考える先生はどこにもいないと考えている。
しかし、現状、子どもとのコミュニケーションを取るのに、一軒一軒、電話をしたり、訪問したりと、一人ひとりにきめ細かな対応ができない状態にある。
むしろ通信環境が整っていない子どもたちの不利・不平等をなくすためにも、オンラインでつながるところとの機器の活用、そういったアクションを広げていただきたい。
▼児童生徒の資質・能力の育成
4年度から実施される高校学習指導要領への円滑な移行のため、総則や教科等において、「知能および技能」「思考力、判断力、表現力等」「学びに向かう力、人間性等」をバランスよく育成することが求められている。
これを踏まえ、各学校においては、カリキュラム・マネジメントを確立して、教科等横断的な視点からの教育課程の編成・実施や、主体的・対話的で深い学びの実現に向けた授業改善の充実を図り、本道の将来を担う生徒が身に付けるべき資質・能力を確実に育成するとともに、地域資源を活用して、生徒がふるさとへの誇りと愛着をもち、多様な人々と協働しながら、持続可能な地域の創り手となることができるよう、必要な力を育むことが重要。
どういう資質や能力を身に付けるべきなのか、どうやって地域社会のつくり手となるのか、その資質や能力、人材像についてイメージは様々かと思う。
新しい学習指導要領は、当然、2025年に向かって進んでいく。
2025年は2025年問題と言われるように、団塊世代が後期高齢者、つまり、75歳以上に一気にずれていき、医療・介護費が格段に増大する。
そこで、政府の戦略としては、スポーツや文化によって健康寿命を飛躍的に改善しようというねらいもある。
この年齢構造は地域ごとにインパクトが異なるが、どこのまちでも、健康寿命にかかわるビジネスの創出、人材の確保が地域活力の明暗を分けるというように考えている。
最近、インバウンド、海外旅行客が増加したと誰もが感じていると思うが、これは、中国やASEAN諸国が順番に、平均所得1万ドルを超え出してきたからである。
平均所得が1万ドルを超えると、歴史的にみて、どの国も大衆消費と海外旅行に火がつく。シンガポール、台湾、中国、マレーシア、タイはすでにそのゾーンに入っており、急増しているが、この後も、ベトナム、フィリピン、インドネシアなどが控えている。
恐らく、東京オリンピックを目指しているが、それまで伸びていくことと考えている。
そうした彼らのニーズを満たすのが、ひところ言われた爆買いのような消費ではなく、その地域の自然・文化・産業を背景としたサービスであり、それを担うグローバル人材が求められることになる。
2030年には、SDGs(持続可能な開発目標)の区切りがやってくる。
様々な社会的な課題解決のゴールが示されているので、そのゴールに示された産業と人材を排出しなければ、地球環境も飢餓も紛争もなくならないということになるので、そういった人材が求められると思う。
その先の2040年は、団塊ジュニアの大量リタイアという人口の地殻変動が待っている。Society5・0という言い方もしているが、ICTを活用した社会改革が進むと思う。
こういった変化をみると、SDGs、Society5・0、こういった時代をくくって申し上げるなら、今まで決められた解決手段を習うのではなく、自然科学、人文社会科学の中から、融合して考えてその中からソリューション、解決策をみつけるという開発人材が求められている。
時代の先行きは不透明だと言うが、少し長い物差しでみると、人材ニーズはみえていく。画一で、安ければよいという大量生産、集中管理型の組織と人材ではなく、多様性や個性、感性を発揮できるフラットでネットワーク型の組織、人材が重視されてきている。
そういう国内外のトレンドに伴って、資質・能力を伸ばす教育関係者と児童生徒との関係性、学習支援スタイルも変容するものと考える。
ぜひ、社会に開かれた教育課程および主体的・対話的で深い学びの実現を図るための授業改善を学校全体、地域とも一体となって推進していただきたい。
▼特別支援教育の充実
特別支援教育に対する理解の深まりを背景に、特別支援学校や小・中学校の特別支援学級に在籍する児童生徒が大幅に増加している。通常の学級においても、発達障がいなど、特別な教育的支援を必要とする児童生徒の在籍割合が上昇している。
また、重い障がいがあり、小・中学校や特別支援学校で医療的ケアを受けながら学ぶ児童生徒も増加傾向にあるなど、障がいの重度・重複化、多様化が進む状況もみられており、障がいの状態などに応じた専門性の高い教育に対するニーズがますます高まっている。
本年度は、平成30年度からの5年間を期間とする特別支援教育に関する基本方針が中間の3年目を迎える。
今後、今一度、基本方針に目を通していただき、各項目に沿って自らの学校の取組状況を確認し、その趣旨を踏まえた教育活動を展開するとともに、個別の教育支援計画を活用するなどして、家庭や福祉・医療などとの連携を強め、幼児児童生徒の障がい等の状態や、本人・保護者の教育的ニーズを踏まえた切れ目のない指導・支援の充実に努めていただきたい。
10年以上前になるが、高等養護学校の卒業式を拝見したことがある。照れくさそうに行進する卒業生のバックには、SMAPの曲「世界で一つだけの花」が流れていた。「ナンバーワンにならなくていい。それぞれが特別なオンリーワン」という歌詞だが、私の経済環境、地域振興といったすべての政策の軸を大きく変えた。
障がい者は、チャレンジドと呼ばれ、神様から挑戦するギフトをいただいた「チャレンジド」と表現されることがあると思う。
彼ら一人ひとりの特別な存在理由に合わせて、学習や仕事のスタイル、地域の産業構造さえも最適化する、むしろそれが地域にとっても成熟社会における一つの競争力になるとさえ思っている。
家族の願いは、親亡きあとも、彼らが労働者、納税者、消費者として輝き続けることである。ぜひ、学校現場の皆さんが彼らのよき伴走者になって、共に走っていただけることを心から期待している。
▼学校における働き方改革
昨年12月に給特法が改正され、道においても、条例の改正や、新たな規則の制定によって、所定の勤務時間以外の在校等時間を、1ヵ月45時間以内とすることなどを定め、併せて、アクション・プランも改定した。
各学校においては、アクション・プランに掲げる各項目に取り組まれ、働き方改革を積極的に進めていただくようお願いする。
今般の臨時休業等に伴い、児童生徒の学習の定着が不十分である場合には、補充のための授業の実施など、必要な措置を講じることと思う。その際、各学校の指導体制に見合った授業日数、授業時数となっているかなど、職員の負担が過重とならないような配慮をお願いする。
残業時間は数値で表せられるが、心の負担の質も思いを巡らせることがある。この作業・仕事は、家庭や一般企業では恐らくやらないとか、あまりにも形骸化していて、かえって大局的な大切さが分からなく、エラーが起きるなど、その仕事が課された当時には最適だったやり方も、時代と共に目的もコストも的外れになっている仕事があるのではないか。
そういう作業が、本来、割くべき学習支援の先生の時間と気力・体力を奪っているのではないかと憂慮している。
私は、日ごろからキャッシュレス、ペーパレス化を試しているが、他の業務での応用が可能でノーコストなカイゼン方法があふれていることに気が付く。
ぜひ、全庁的な指示を待つことなく、リスクとコストを減らし、利便性を上げる創意工夫にどんどん取り組んでいただき、働きがいに満ちた職場、ディーセントワークに満ちた職場づくりを進めていただきたい。
▼信頼される学校づくり
不祥事の防止については、これまでも、教職員への指導を徹底するようお願いしてきたが、依然として、わいせつ行為など不祥事の発生があとを絶たず、学校教育に対する道民の信頼を損なう極めて憂慮すべき事態となっている。
各学校においては、これまでの不祥事防止に向けた取組が教職員一人ひとりの意識改革に確実に結び付いているかを確かめ、教職員への指導方策について、必要な見直しを早急に行うなど、危機感をもって実効性のある取組を進めていただきたいと思う。
大事件・大事故の陰には、29の小さなエラーや事故、その背後には300のヒヤリハットの事象があるというハインリッヒの法則が有名だが、事件・事故のサイン、予兆を見逃さないためには、学校現場での情報共有が欠かせない。
以上、5点述べたとおり、教育を取り巻く課題は数多くあるが、解決には、教育行政と学校が一体となって取り組む必要がある。
加えて、地域創生に期待される学校の役割を考えるならば、知事部局、振興局、市町村長の部局との連携にも留意をいただきたいと思う。
校長には、国や道における教育改革の動向を踏まえつつも「今できることは何でも、今始める」の精神で、校長としての責任と権限のもと、力強いリーダーシップ、学校の使命・目標に向けて教育資源の最適配分を行うマネジメント力を存分に発揮して、本道の持続的発展に寄与する人材の育成に一層尽力いただきたい。
(道・道教委 2020-06-04付)
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