文科省 学習活動重点化にかかる留意事項(小6) 授業で取り上げる個所確認 指導順序変更は十分な配慮必要(コロナウイルス関連 2020-06-10付)
文部科学省が5日に各都道府県・指定都市教委に通知した「学校の授業における学習活動の重点化にかかる留意事項等について」では、小学6年生、中学3年生において学習活動を重点化する際の留意事項を教科ごとに記載。学校の授業以外の場で取り扱うことでのできる学習活動や、学校の授業で取り扱うことが望ましい学習活動を例示している。
文科省は、時間割編成の工夫、土曜日の活用、学校行事の重点化や準備時間の縮減など各種の取組を行い、それでもなお、通常の学習活動で当初予定していた指導を終えることが困難な場合、特例的な対応として学習活動の重点化を認めている。
通知では、教員と児童生徒のかかわり合いの中で学習への動機付けを行い、学習に見通しをもたせる活動、児童生徒同士が協働して自己の考えを広げ深める活動、指導に当たっての安全性の確保や実施に要する教材・教具の整備等の観点から、学校で実施することが望ましい実技・実習等を取り扱うとし、感染症対策を講じてもなお感染の可能性が高い学習活動は、教科書発行者提供の参考資料も参考にするなどの留意事項を示している。
学習活動の重点化に関する各教科の考え方はつぎのとおり。
【各教科等に共通の考え方】
特に授業時数が限られている現下の状況にあっては、学習指導要領に規定されている内容をあらためてよく確認し、それを効果的に指導する観点から、主たる教材である教科書および教科書と併用できる教材について、授業において取り上げるべき個所を確認することが重要である。
なお、教科書における発展的な学習内容については、児童の理解や習熟の程度に応じて必要に応じ学習するものであり、必ずしもすべての児童が学習しなければならない内容ではない。
学校の授業以外の場で取り扱う学習活動については、事前指導を十分に行った上で取り組ませるとともに、児童一人ひとりの授業外での学習状況を適切な方法によって把握し、その後の指導の改善等に生かしていくことが大切である。
指導計画の作成に当たっては、教科等や学習活動の特性に応じて、学校の授業以外の場で取り扱う学習活動と学校における授業との関連や、指導順序の変更を行う際の単元や題材などの内容のまとまりについて十分配慮することが重要である。
【国語】
言語活動を通して、人とのかかわりの中で国語で伝え合う力を高めることは、学校の授業以外の場では困難と考えられるため、それぞれの立場を踏まえて話し合ったり、文章を読んでまとめた意見や感想を伝え合ったりするなどの学習活動は、学校の授業で取り扱うことが望ましい。
学習の目標を理解した上で、考えたことや伝えたいことを書いたり、必要な文章を読んだりするなどの学習活動のうち、個人でも実施することが可能と考えられるものについては、これまでの学習状況を踏まえた上で、学校の授業以外の場で取り扱うことが考えられる。
【社会】
児童が社会的事象から学習問題を見いだし、その解決への見通しをもつ活動や学習問題を追究・解決する活動、社会へのかかわり方を選択・判断する活動などは学校の授業で取り扱うことが望ましい。
児童が議論などを通して互いの考えを伝え合い、自らの考えや集団の考えを発展させることなどは、学校の授業で取り扱うことが望ましい。
上記の学習問題を追究する活動の中で、必要な情報を収集し、読み取る活動や、学習したことをもとに学習問題に対する自分の考えをまとめたり、社会生活に生かそうとしたりする活動については、事前に十分に指導した上で学校の授業以外の場で取り扱うことが考えられる。
その際、例えば児童がまとめたレポートやノートを集めるなどして、学習状況を確認することが大切である。
【算数】
知識および技能の習得や思考力、判断力、表現力等の育成、学びに向かう力、人間性等のかん養に当たり、具体物を操作して考えたり、日常の事象を観察したり、児童にとって身近な算数の問題を解決したりするなどの具体的な体験を伴う学習を通して、数量や図形について実感を伴った理解をしたり、算数を学ぶ意義を実感したりすることは、学校の授業で取り扱うことが望ましい。
学習を主体的に、また、深い学びとするためには、算数の問題発見・解決の過程において、よりよい解法に洗練させていくための意見の交流や議論などの対話的な学びを適宜取り入れていくことが必要であり、このような学習活動は学校の授業で取り扱うことが望ましい。
学校の授業以外の場で取り扱う学習活動としては、教科書の問題演習や、学習した内容について自分の考えをまとめる活動などが考えられる。
算数の学習で身に付けた資質・能力を生活や学習の様々な場面で活用することによって、児童にとって学習が意味あるものになり、数学のよさを実感を伴って味わうことができるようにするための活動なども、事前指導などをしっかりと行った上で、学校の授業以外の場で取り扱うことが考えられる。
【理科】
観察、実験などに関する基本的な技能の習得、また、観察、実験などを通じて自然の事物・現象について理解を図ることは、学校の授業以外の場では困難と考えられること、さらに、安全性の観点から学校の授業以外の場での実施が困難な活動が多いことから、問題を見いだし見通しをもって観察、実験などを行い、その結果をもとに考察し、結論を導きだすといった問題解決の活動は、学校の授業で取り扱うことが望ましい。
学校の授業以外の場で取り扱う学習活動としては、例えば、児童が見いだした問題を解決するために必要な情報を図書資料やウェブサイト、身の回りにある自然の事物・現象から集める活動などが考えられる。
学習内容を深く理解したり、理科を学ぶことの意義や有用性を実感したりするために、児童が学んだことを自然の事物・現象や日常生活に当てはめて考える活動なども学校の授業以外の場で取り扱う学習活動とすることが考えられる。
【音楽】
表現の学習においては、試行錯誤しながら曲にふさわしい音楽表現を工夫したり、他者と協働しながら音楽表現を生み出したりする活動を通して学びが深まることから、これらの学習活動については学校の授業で取り扱うことが望ましい。
学校の授業以外の場で取り扱うことが可能な学習活動としては、歌詞を音読したり、曲の特徴に着目して音源を聴き、気付いたことや感じたことを書き留めたり、音源に合わせて歌ったり楽器を演奏したりすることなどが考えられる。
鑑賞の学習においては、音楽のよさを味わって聴いたり、感じたことなどについて話し合ったりする活動を通して学びが深まることから、これらの学習活動については学校の授業で取り扱うことが望ましい。
学校の授業以外の場で取り扱うことが可能な学習活動としては、教科書等を見ながら演奏の特徴に着目して音源を聴いたり、動画を視聴したりして、気付いたことや感じたことを書き留めることなどが考えられる。
指導順序の変更に際しては、音楽づくりや鑑賞の学習を、歌唱や器楽の学習のうち、全員で歌ったり演奏したりする学習より先行して行ったり、知識や技能に関する学習の一部などを学校の授業以外の場で先に学習を進めておいたりするなどの工夫が考えられる。
学校の授業以外の場での学習活動の実施に当たっては、教科書記載のQRコードや公衆送信等で音源や動画が視聴できない児童への配慮についても留意する必要がある。
【図画工作】
表現の学習においては、発想や構想に関する学習活動では、可能な範囲で、表したいことを見付けてみたり、どのように主題を表すかについて、簡単な絵や言葉で書き留めるなど方法を工夫して大まかに考えてみたりすることなどを学校の授業以外の場で取り扱うことが考えられる。実際につくったり表したりする学習活動は、個人の教材や教具を使用する、児童同士で用具の貸し借りをしないようにするなどの点に配慮し、学校の授業で取り扱うことが望ましい。
また、近距離での活動となるような共同してつくりだす活動を計画している場合は、地域の感染状況等を見極めて題材の実施時期を見直すことが考えられる。
鑑賞の学習においては、これまでの学習状況を踏まえた上で、ワークシートなどを工夫することなどによって、可能な範囲で学校の授業以外の場で事前に教科書等の作品を鑑賞する活動を取り扱うことが考えられる。互いの表現を見合ったり、作品などについて話し合ったりすることは、授業以外の場では困難と考えられることから、近距離での活動にならないよう、留意しながら学校の授業で取り扱うことが望ましい。
【家庭】
製作、調理等の実習の指導において、実習室の用具や機器、設備などを使用しなければ学習内容の理解や技能の習得を図ることが困難な学習活動については、学校の授業で取り扱うことが望ましい。
その際、調理実習については、感染状況に応じて、年間指導計画の中で指導順序を変更した上で、学校の授業で取り扱うことが望ましい。
児童が教科書の記述や家庭生活の様子を確認し自分の考えをまとめたり、実習等の計画を立案したり、自分なりに気付いたことをまとめたりする活動については、学校の授業での指導と適切に関連付けた上で、学校の授業以外の場で取り扱うことが考えられる。
【体育】
児童が密集する運動や近距離で組み合ったり接触したりする運動については、地域の感染状況等を踏まえ、運動の時間を段階的に長くしたり、年間指導計画の中で指導順序を入れ替えたりするなどの工夫が考えられる。
運動領域については、一般的には毎週2~3コマ程度の授業を実施することとなるが、夏季休業期間を短縮する場合で、熱中症事故の防止の観点から授業の実施が困難なときは、学校の授業以外の場で学習活動を行うこととすることが考えられる。
その場合の学習活動の内容としては、個人や少人数で距離をとって実施する運動でけがのリスクが低い運動や、病気の予防について理解し、自分の考えをまとめる活動などが考えられる。
【外国語】
音声を聞いたり、話したりすることを繰り返して、十分に慣れ親しんだ語や表現について段階的に読むこと・書くことを学習していくという、外国語科の学習の特質を踏まえ、聞くこと、読むこと、話すこと、やり取り、発表、書くことの各領域の言語活動については学校の授業で取り扱うことが基本となる。
その上で、例えばQRコード等で動画や音声の視聴ができない児童への配慮を行った上で、教科書記載のQRコード等を活用して、学校の授業以外の場で、動画や音声を視聴して、概要をとらえたり、分かったことを書いたりして、つぎの授業の活動につなげることが考えられる。
学習した表現等を繰り返し使うという外国語の学習の特徴を踏まえ、ある単元で学習する予定となっている学習内容の一部を、別の単元の授業で指導するといった工夫が考えられる。
【特別の教科 道徳】
小学校学習指導要領(平成29年告示)第3章第3の「指導計画の作成と内容の取扱い」の1において、道徳科の年間指導計画を作成するに当たって「第2に示す各学年段階の内容項目について、相当する各学年においてすべて取り上げることとする」とされていることを踏まえ、学校の授業ですべての内容項目を取り上げることが求められる。その上で、どの内容項目を授業でより重点的に指導するのかについては、各学校で十分に検討し、判断することが重要である。
【総合的な学習の時間】
総合的な学習の時間については、地域の教育資源の活用による多様な学習活動の充実を図ることが重要である。その際、「休業日等における総合的な学習の時間の学校外の学習活動の取扱いについて」において、公民館や図書館、博物館、美術館および青少年教育施設等の社会教育施設、社会教育関係団体、NPO・企業等の各種団体を含む地域や家庭等の協力を得て行う学習活動を念頭に、休業日等における総合的な学習の時間の学校外学習活動を各学年における年間授業時数のうちの4分の1程度まで実施することができるとされていることを踏まえ、例えば、学校の授業においては課題の設定やまとめ・表現にかかる学習活動を重点的に実施することが考えられる。
【特別活動】
特別活動は、学級、学年、学校を単位とした集団生活におけるよりよい人間関係の形成を通して、学級や学校の生活の充実・向上を図る特質を有することから学校という場において行うことが基本となる。特に、学級活動は、教師と児童との信頼関係および児童相互のよりよい人間関係の形成を通して学習や生活の基盤の形成に資する活動であることに鑑み、原則として毎週1コマ、学校の授業として行うこととして年間指導計画等の諸計画を見直すことが重要である。
学校再開に当たっては、特に学級生活における人間関係の形成、生活や学習の基盤の形成を重視することとし、例えば、
▽学級や学校における生活づくりへの参画では、「学級や学校における生活上の諸問題の解決」「学級内の組織づくりや役割の自覚」
▽日常の生活や学習への適応と自己の成長および健康安全では、「よりよい人間関係の形成」、「心身共に健康で安全な生活態度の形成」
▽一人ひとりのキャリア形成と自己実現では、「希望や目標をもって生きる意欲や態度の形成」「主体的な学習態度の形成と学校図書館等の活用」
―のうち、関連する内容に重点をおいて学級活動を展開することが考えられる。
児童会活動、クラブ活動、学校行事についても、それぞれの目標や必要性を確認して年間指導計画等の諸計画を見直すとともに、感染症対策を講じながら、児童や学校の実態に応じて創意工夫して実施することが求められる。
(コロナウイルス関連 2020-06-10付)
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