理セン 観察・実験の基礎研修 HPにテキストと動画 コロナ対策で紙上開催
(道・道教委 2020-06-26付)

理セン観察・実験の実践基礎研修
生物基礎で蛍光マーカーのインクをカイコに注入する様子

 道立教育研究所附属理科教育センターは、本年度の皮切りとなる研修講座「観察・実験の実践基礎研修(高校)」をホームページ上に掲載している。高校における物理基礎・化学基礎・生物基礎・地学基礎の研修用テキストと動画を提供。教員の課題解決に広く役立てられるよう、誰でも閲覧・視聴することが可能となっている。

 主に高校の理科教諭を対象とした講座は、理科の観察・実験の基礎的な指導力を高めることがねらい。新型コロナウイルス感染症対策のため、当初予定していた集合研修形式から紙上研修形式に変更した。

 資料では、高校の物理基礎・化学基礎・生物基礎・地学基礎からそれぞれ観察・実験を一つずつピックアップ。うち生物基礎では、前年度に行われた日本生物教育学会北海道大会における皇學館大學のワークショップを参考にするなど、新たな観察方法を盛り込んでいる。

 それぞれ資料のはじめに「自校において生徒に身に付けさせたい資質・能力について検討するための参考資料」として、各単元の評価規準に盛り込むべき事項を紹介。これらの観点を踏まえた上で、目的や準備、方法など、実験の具体を説明している。

 テキストの内容に即して新たに制作した動画は、それぞれ5~10分程度。実験の流れやテキストの内容をより詳しく説明している。

 図表を含めたテキストの内容や動画は、理科教育センターのホームページからみることができる。

 研修資料の内容はつぎのとおり。

《物理基礎》

【物体の運動とエネルギー】

 物体の運動について調べる方法や、探究的に扱う方法について検討する。

◆実験1 物体に働く力と加速度の関係

▼目的

 記録タイマーを用いた実験を通して、物体に働く力の大きさと加速度の大きさが比例することを理解させる。

▼準備

 力学台車、滑走板、木片、記録タイマー、記録テープ、セロハンテープ、C型クランプ、ニュートンはかり、グラフ用紙

▼方法

▽方法1=滑走板と木片でつくった斜面上に力学台車を載せ、力学台車に働く斜面方向の力の大きさをニュートンはかりで調べる

▽方法2=斜面の傾きを変えて方法1を繰り返し、斜面の傾きと力学台車に働く斜面方向の力の大きさの関係を調べる

▽方法3=記録タイマーをC型クランプで斜面に固定する

▽方法4=記録テープを記録タイマーに通して、セロハンテープで力学台車に貼り付ける

▽方法5=記録タイマーのスイッチを入れ、力学台車が斜面を下る様子を記録する

▽方法6=記録テープの打点から力学台車の運動を調べる

①0・1秒間に移動した距離を測定し、平均の速さを求める

②グラフ用紙に、横軸を時刻、縦軸を速さとして、時刻と平均の速さのグラフを描く

③②のグラフの傾きから、加速度の大きさを求める

▽方法7=力学台車に働く斜面方向の力の大きさと加速度の大きさの関係を調べる

▼生徒に指導するポイント

▽どのような誤差が生じているか考えさせる。また、それぞれの誤差が何%程度あると考えられるか見積もらせる

▽より測定の精度を上げるにはどのような工夫が必要か考えさせる

▼観察、実験を深める方法

▽力学台車におもりを載せて、力学台車の質量と力学台車に働く斜面方向の力の大きさの関係や、おもりを載せた力学台車の質量と加速度の大きさの関係を調べる

▽力学台車の運動について、実験値が運動方程式や力学的エネルギー保存の法則をどの程度満足しているか調べる

▽力学台車を撮影したストロボ動画を作成し、力学台車の位置や速度との関係から加速度について理解する

▼参考

▽力学台車のストロボ動画は、ビデオカメラで撮影した映像をAVIファイルにして、画像解析ソフト「どう見る君」を使って、力学台車の位置を時間の経過とともに横にずらして合成し、作成することができる

▽画像解析ソフト「どう見る君」は、大久保政俊氏(元所員)によって開発されたソフトウエア。使用目的が教育用であれば自由に使うことができ、理科教育センターホームページの「デジタルコンテンツの書棚」で入手できる。

《化学基礎》

【物質の変化】

 物質の粒子概念を観察、実験などを通して探究し、基本的な概念や法則を理解する指導方法について検討する。

◆実験 中和滴定~酸・塩基を同定する探究活動

▼目的

 酸・塩基の性質や中和反応における量的関係について、探究活動を行いながら理解する。

▼準備

 0・3mol/L塩酸、0・1mol/L塩酸、0・1mol/L硫酸、0・1mol/L水酸化ナトリウム水溶液、水、0・025%フェノールフタレイン溶液、点眼びん(5mL)、12―ウェルセルプレート(卵パックで代用可能)

▼方法

▽方法1=0・3mol/L塩酸、0・1mol/L塩酸、0・1mol/L硫酸、0・1mol/L水酸化ナトリウム水溶液、水を、未知試料A~Eとしてそれぞれ点眼びんに入れる

▽方法2=0・025%フェノールフタレイン溶液を、指示薬として点眼びんに入れる

▽方法3=方法1の未知試料A~Eを、それぞれ2滴ずつセルプレートに滴下し、指示薬を加えて色の変化を観察する

▽方法4=未知試料A~Eを同定するため、未知試料と指示薬を用いて実験する手順について考えさせる

▽方法5=方法4で考えた実験の手順に従い、セルプレートの空いているセルを用いて未知試料を同定する

▼生徒に指導するポイント

▽実験する手順を検討する際には、定性的な観点と定量的な観点を踏まえ科学的に考察させる

▽個人で考える場面とグループで考える場面を設定し、酸・塩基の概念や科学的に探究する方法について理解を深めることができるようにする

▽結果や考察をまとめる際には、記入例を実験プリントに明示するなどして、実験結果から考察を導く観点を生徒に身に付けさせる

▽生徒に身に付けさせたい資質・能力に応じて、種類や数を工夫する

《生物基礎》

【生物の体内環境の維持】

 白血球の食作用の観察を取り上げ、探究的な学びを通して、生物の共通性と多様性や遺伝子とその働きの概要を理解させるための指導法について検討する。

◆観察1 白血球の食作用の観察

▼目的

 白血球の食作用の観察を通して、生物の生体防御の仕組みについて理解させる。

▼準備

 カイコガの5齢幼虫、顕微鏡、スライドガラス、カバーガラス、ハサミ、小型の注射器、墨汁、蛍光マーカーのインク、UVライト

▼方法

▽方法1=注射器を用いて、幼虫の腹脚の付け根から墨汁のインクを注入する

▽方法2=方法1とは別の幼虫の腹足の付け根から蛍光マーカーのインクを注入する

▽方法3=約24時間後、尾角の先端をハサミで切断し、体外にもれ出した体液をスライドガラスに取る

▽方法4=カバーガラスをかけて顕微鏡で観察し、食作用によって墨汁の炭素粒子を取り込んだ白血球を観察する。蛍光マーカーのインクを取り込んだ白血球は、プレパラートの上からUVライトを照射すると光って見える

▼参考

▽カイコガは、開放血管系で赤血球は存在せず、体液中に多くの白血球が浮遊していることから、観察に適している

▽カイコは1年を通して入手(購入)することができ、異物の注入に強いなどの利点がある

▽蛍光マーカーを用いたUV照射による観察については、令和元年度日本生物教育学会北海道大会における皇學館大学のワークショップを参考にした

《地学基礎》

【宇宙の構成惑星としての地球移り変わる地球】

◆実習1 探究活動とその評価

▼目的

 エラトステネスの方法による地球の大きさの測定に関する探究活動を例に、その実験レポートの評価方法について検討する。

▼準備

 スケール、方位磁石、電卓、GPS受信機(携帯電話など、緯度と経度の測定が可能なもの)

▼方法

▽方法1=敷地内の南北方向の基線がとれる場所(100㍍以上が望ましい)を確保する

▽方法2=敷地内の任意のP地点を決定し、GPS受信機(携帯電話等の位置情報)を用いて緯度と経度を測定する

▽方法3=方位磁針を用いて、P地点からの真の南北方向(子午線の方向)を決める

▽方法4=スケールを用いて自分の歩幅(1歩の長さ)を決定する

▽方法5=P地点から真北方向に歩き、指定する距離(この例では100㍍)を、歩幅をもとに測定して、Q地点を決定する。また、GPS受信機でQ地点の緯度と経度を測定する

▽方法6=地球を完全な球と仮定したときの、地球の大きさ(子午線1周の長さなど)を比例計算して求め、測定誤差を計算する

▽方法7=再度、方法1~6までを行い、2地点の場所を変えて複数回行うことが望ましい

▽方法8=実験レポートにおける測定値を記載し、比例関係を用いて地球の大きさ(子午線1周の長さ)および測定誤差を正しく計算できているか、また、測定誤差が生じた理由の記述内容のルーブリック評価に関して、評価規準を定める(例・測定値や計算値、測定誤差の値、測定誤差が生じた理由があることなど)

▽方法9=上記の評価規準をAの段階とし、上位のS、下位のB、C段階について、A段階とどのような差をつけるのかについて、記載内容を検討する

(道・道教委 2020-06-26付)

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