公立高・特配置計画決定受け 少人数学級の実現要請 道高教組・道教組が声明(関係団体 2020-09-15付)
道高教組(尾張聡中央執行委員長)と道教組(川村安浩執行委員長)は10日、公立高校配置計画および公立特別支援学校配置計画に対し声明を発表した。「一度決定した計画が次々と変更されており、計画は破綻している」などと批判。これからの高校づくりに関する指針をただちに撤回し、20人学級を展望した少人数学級実現に向け方針転換するよう求めている。
声明の概要はつぎのとおり。
▼20人学級を展望した少人数学級実現に道教委も舵を切るとき
新型コロナウイルス感染症対策として、少人数学級の緊急性はますます高まっている。全国で、保護者や市民による運動が立ち上がり、オンライン上には学校統廃合反対や少人数学級を求める署名が上がっている。
6月23日、ゆきとどいた教育をすすめる北海道連絡会を母体とした20人以下学級北海道アクションは、オンライン署名で賛同を集め、27人の呼びかけ人と全国から1236人の賛同とともに、20人以下で授業ができるよう道・道教委に要請した。
全教は9月4日、「めざせ20人学級!」を掲げた9万5000筆以上の署名を文部科学省に提出し、少人数学級化を求める教育研究者有志が始めたオンライン署名も全国に広がっている。
7月3日、全国知事会など首長3団体が少人数学級を求める提言を文科省に提出し、7月30日、小・中・高の全国校長会も萩生田文部科学大臣との懇談の中で少人数学級の検討を求めた。
7月17日には、骨太の方針2020において少人数によるきめ細かな指導体制の計画的な整備を閣議決定し、9月8日、教育再生実行会議初等中等ワーキンググループは、少人数によるきめ細かな指導体制の計画的な整備や関連する施設設備等の環境整備を進める方向で議論することをまとめた。
国が少人数学級に舵を切ろうとしている今、40人学級を基本に1学年4~8学級を望ましい学校規模としてきた道教委も、方針を変更せざるを得ないはず。ただちにこれからの高校づくりに関する指針を撤回し、少人数学級で一人ひとりを大切にする教育へと、抜本的な転換を図るべきである。
▼相次ぐ計画変更と決定延期 迷走する道教委の高校配置
2019年度の伊達高校と伊達緑丘高校の統合を皮切りに、2020年度は実に12校もの計画変更案が示されている(2021年度の学級増は除く)。次年度から、江別高校普通科1学級減を事務情報科へ変更、滝川高校ほか4校は単位制を導入する。
6月の高校配置計画案に追加して、名寄高校と名寄産業高校の統合が、設置する学科や学級数、使用校舎が未決定のまま示された。また、市立札幌旭丘高校の普通科2学級を理数と情報に関するその他専門学科(名称検討中)に転換することも、今回の高校配置計画に追加された。
さらに、美幌高校の学級減と留辺蘂高校の募集停止については、2021年度に決定を延期した。学級減や募集停止の決定が延期されることは、これまで先例がない。
特に、留辺蘂高については、PTAから学校存続を求める署名1万2265筆が道教委に提出され、北見市議会も7月31日、「留辺蘂高校の募集停止計画案の見直しを求める意見書」を採択する中での決定延期である。
道教委はこれまで、地域が学校存続の声を上げようとも耳を貸さず、指針に従って機械的な統廃合を繰り返してきた。留辺蘂高募集停止決定先送りは、こうした道教委の姿勢が、もはや通用しないことを如実に表している。
6月の高校配置計画案からの変更や決定時期の延期、さらに一度決定した計画が次々と変更されており、高校配置計画は3年間を見越した計画として破綻している。
国が少人数学級の検討を本格的に始めるなど、コロナ禍を機に教育の抜本的な転換が迫られる中で、道教委の指針に基づく高校配置が立ちゆかなくなっているのにもかかわらず、経済的効率性を重視した計画を相変わらず続けたことが迷走の原因である。
道教委は40人学級を基本とし1学年4~8学級を望ましい学校規模とする指針をただちに撤回し、新たな高校配置の展望を示すべきである。
▼破綻した「特色づくり」の押し付けをやめ、地域・子どもの実態から出発した学校づくりへ
相次ぐフィールド制からの転換など、道教委が進めてきた特色づくりの破綻は明らかである。しかし、野幌高校、千歳北陽高校を新たな特色ある高校と位置づけるなど、すでに破綻している特色づくりにいまだ固執している。
道教委が示した新たな特色ある高校の特色とは、「基礎的・基本的な知識・技能の確実な定着や社会的・職業的自立に向け必要な能力や態度を育成する学校」としているが、これらは多くの高校で学校づくりの目標としているもので、特色にすらなっていない。
それを新たな特色として位置付けることは、高校配置計画の趣旨を逸脱したものである。そもそも、高校配置計画の趣旨は学校・学科の配置や規模の適正化を図るための見通しを示すことであり、どのような学校にするのかを道教委が位置付けるものではないはずである。学校づくりは、教育課程の編成主体である各学校の判断を尊重すべきである。
道教委はすでに破綻が明らかになった特色づくりの押し付けをやめ、各地域の状況や子どもの実態から出発した学校づくりを支援する教育条件整備に専念すべきである。
▼障がいの有無にかかわらず、すべての子どもに発達を保障する教育条件整備を
特別支援学校配置計画では、札幌養護学校高等部を札幌白陵高校へ移転する計画が正式に決定となった。
しかしながら、移転のための工事はすでに札幌白陵高で始まっており、一部関係者だけで準備を進め、決定する前に既成事実化した。特別支援学校の狭あい化解消は喫緊の課題だが、既存施設の活用による対応で狭あい化を解消しようとする道教委の姿勢は即刻改めるべきである。
そもそも、小・中学校や高校に定められている学校設置基準が特別支援学校だけに策定されていないため、特別支援学校に通学する子どもたちだけが校舎のキャパシティを超える状態で教育を受けてきた。狭あい化の問題は、札幌養護だけではなく、多くの特別支援学校で“ぎゅうぎゅう詰め”の教育が続いている。
先日、文科省の調査研究協力者会議の新しい時代の特別支援教育の在り方に関する有識者会議における「これまでの議論の整理」でも、「特別支援学校の教育環境を改善するため、国は特別支援学校に備えるべき施設等を定めた設置基準を策定することが求められる」と明記している。道教委は、子どもや保護者の願いを踏まえ、本当の意味ですべての子どもたちの発達を保障できる教育条件を整備すべきである。
▼今こそ、競争的な教育から一人ひとりを大切にした教育へ
子どもの権利委員会は「あまりに競争的な制度を含むストレスフルな学校環境から子どもたちを解放することを目的とする措置を強化すること」と勧告している。
道教委がしばしば望ましい学校規模の論拠としてきた「切磋琢磨」論は、学問的根拠がないばかりか、子どもたちを競争に追い込むことを追認している。
また、道教委が長年行ってきた高校配置は、経済的な効率性を重視し、地方の小規模校を閉校に追い込んできた。
感染対策として行われた分散登校によって、一時的に少人数学校が実現したが、この間、「落ち着かない生徒が落ち着いた」「不登校の生徒が登校できるようになった」「教職員がゆったりと働けるようになった」など、少人数学級を切望する声が学校現場から上がった。すべてを経済の論理に還元する新自由主義的な社会の矛盾がコロナ禍で明らかになる中、教育の分野でも一人ひとりを大切にする少人数学級を望む声はますます大きくなっている。
今こそ、競争的な教育を見直し、道内に残された小規模校を大切にし、少人数学級の実現を目指し、一人ひとりを大切にする教育に取りかかるチャンスである。私たちは、20人学級を展望した少人数学級の実現を目指して、教育全国署名など地域とともにあらゆる運動に取り組む決意である。
(関係団体 2020-09-15付)
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