道中 第62回函館大会研究紀要④ 使命感高める校内研修を 余市町東中・本田校長(関係団体 2020-12-11付)
《第4分科会》
▼研究主題
多様化した学校教育課題に対応できる教員の育成と働き方改革の推進
▼研究の視点
教職員としての使命感を高める校内研修の充実
①教育課題等に対応する専門性や実践的指導力を高める校内研修の充実
②キャリアステージに応じた学びや成長を支える校内研修の充実
■発表者=余市町立東中学校・本田明美校長
◆はじめに
社会が急速に変化する中、教育を取り巻く環境にも大きな変化の波が押し寄せている。学校教育は今、目的や目標を明確にし、未来をたくましく生き抜く子どもたちを育成することが強く求められている。
そのためには、教職員が資質・能力を高め、使命感あふれる指導力を発揮して、学校教育に対する期待に応える責務がある。校長は、教職員一人ひとりに的確な任務と具体的なビジョンをもたせるとともに、教職員の資質や能力を高める研修の実現にリーダーシップを発揮する必要がある。
提言では、第4分科会の研究主題および研究の視点を通して教職員の使命感や力量を高め、キャリアステージに応じた学びや成長を支える校内研修の在り方について、後志管内の推進状況をもとに考えたい。
◆後志小中学校長会研究の概要
後志小中学校長会は、平成29年度から第15次研究の研究主題を「成長の連続性を深め、つなげる学校経営の推進と校長の在り方」とし、地区を4ブロックに分け、それぞれにおいて研究交流会と管内研究大会を開催してきた。また、小・中学校それぞれの特性を生かした研究活動を推進するため、校種別に研究プロジェクトチームを組織している。
令和2年度からは、第16次研究を主題「組織力を高め、人を育てる学校経営」のもとスタートさせた。第15次研究における課題から研究体制の見直しを行い、新たな体制で3年次計画がスタートした。
◆研究の概要
【研究の方法】
中学校研究プロジェクトでは、道中の研究の視点と進め方を受け、管内24校の中学校において以下の2つの項目についてアンケート調査を行い、その結果から考察・検証することとした。本共同研究も管内中学校すべてにおいて課題を共有し、実践・検証を行うことで、研究課題の解決を図り,研究成果を迅速に取り込んで自校の改善に役立てることをねらいとした。
▼研究の内容
道中における研究の視点を受け、後志としては、管内24校の中学校において以下の2つの項目についてアンケート調査を行い、その結果から考察し、まとめることとした。
▽校内研修の実態把握
①研究領域や研究方法
②今後の校内研修における展望
③小中が連携した校内研修の実態
▽キャリアステージを意識した校内研修の推進
①各キャリアステージのおさえ
②学校におけるOJTの推進
③校内研修における課題と方向性
【研究の実際】
▼校内研修の実態把握
▽研究領域や研究方法等
管内全中学校が主体的・対話的で深い学びに留意した授業改善を中心に研究をしていた。
研究領域としては、「特別の教科 道徳」が先行実施であったために、取組校が多かったものと推察される。本年度からは授業改善を中心とした各教科の研修が増えている。
校内研修の取り組み方は、ほぼ従来どおりの仮説検証型であった。
年間の研究授業の回数は、4回以下が80%を占めている。
研究協議の形式は、ほぼワークショップ型で、研究紀要についてもほとんどの学校が作成している。
〈考察〉
新学習指導要領の全面実施を翌年に控え、主体的・対話的で深い学びに留意した授業改善が急務である中、それぞれの課題に対応するための専門性や実践的指導力を高めるには、やはり管内のどの中学校も校内研修の充実が軸となっていることが読み取れる。
管内においては、従来からある仮説検証型の研修方法が主流となっており、研究仮説や研究の構造図のほか、研究授業や公開研究会、研究紀要の作成等に相当な時間と労力を費やしながら校内研修が進められている実態が把握できた。
▽今後の校内研修の展望
管内中学校長のほとんどが自校における最重要課題を授業改善としており、そのうちの80%以上が校内研修を中心として課題解決に当たっている。
課題解決の具体的な実践方策では、一部教員や全教員による研究授業とその後の研究協議によるものが中心となっている。
授業改善に関する進ちょく状況は、80%以上の学校で順調もしくは着実な前進がみられる。
今後の校内研修における展望では、今後もこれまでと同様の仮説検証型の研修を継続する学校が4割弱あり、5割以上の学校では、今後、ミニ研修を取り入れながら校内研修を進めようとする傾向にある。
〈考察〉
これまでは「特別の教科 道徳」の研修を優先した学校が多かった。本年度から、教科で主体的・対話的で深い学びに留意した授業改善にシフトした学校が増えてきた。
授業改善に関しては、各学校統一した約束事や授業の型を作成して取組を進めている学校が多い。
授業改善を進める上で障壁となっていることは、ベテラン層の意識改革を挙げる校長が多かった。理由としては、これまでの経験に頼りすぎる傾向が強く、新たな取組に抵抗感を示すベテラン教員が多いということであった。
働き方改革の推進が求められる中、教員の資質向上に欠くことができない校内研修の在り方について、時間や労力を削減しながら質的向上を目指す校内研修への変革について、後志ではミニ研修を軸にしたものが模索され始めている。
▽小中が連携した校内研修
管内全中学校長が小中の連携した校内研修の必要性を感じている。
実際に小中が連携した校内研修に着手している中学校長は40%で、順調に進んでいる状況とはいえない。 小中が連携した研修を進める上で、教職員の認識不足や意識の低さ、担当者の力量不足等が障壁となっている。また、小中校長間や教育委員会との間で認識の差がある点も改善していかなくてはならない。
学校経営方針の立案に際して、小中連携にかかる方針を事前に打ち合わせた中学校長は80%であった。
〈考察〉
コミュニティ・スクール(CS)や小中一貫の流れが後志管内にも広がりをみせる中、小中が連携した取組や研修の必要性が中学校長の中でも高まっている。しかしながら、町村によって進ちょく度合いに差があるため、町村教委との密接な連携が重要になってくる。
すでに方向性を示した町村においては、義務教育9年間を見通した小中の連携した取組や研修は必然的に加速されている。一方、そうでない町村においては、まだまだ手探りの中で小中連携を何とか進めている状況であり、取組の差が開きつつある。
▼キャリアステージを意識した校内研修の推進
▽各キャリアステージのおさえ
①道教委が策定した教員育成指標をもとに、キャリアステージの段階を設定
教員の養成を担う大学等との共通理解を図るため、最初の段階としての「養成段階」、初任者段階研修の受講対象となる時期を中心とする「初任段階」、中堅教諭等資質向上研修の受講対象となる時期を中心としての「中堅段階」、学校運営の中核を担いつつ、教員への指導などを行う時期を中心としての「ベテラン段階」。
②管内の中学校長は、初任段階を育成する上で教員の心構えや基本的な指導技術および生徒理解を重視している傾向にあった
③中堅段階の育成に関しては、教頭や主幹教論、主任、部長を集めた学校運営や校務調整に関する会議の中で、集団指導による直接的な育成を図る手法や校務分掌、学年団等において責任ある職務や立場を任せてマネジメントによる育成の手法をとっている校長が多い傾向にある
④ベテラン段階の実態として、後志管内は小規模校が多く、中にはベテラン段階の教員が存在しない中学校も多々ある。また、本来、ベテラン段階の経験値を初任段階や中堅段階へ継承・還元させたいところであるが、実態は、自身の経験だけに頼る傾向が強い。そのため、ICT機器の活用や授業改善といった新しい教育の流れに向き合わないベテラン段階が課題となっている学校が多いことが読み取れた。
〈考察〉
管内における教員のキャリアステージを考えたとき、19町村から構成され小規模校が多いという特性がある。そのため、各校教員の年齢構成が不均衡であったり、経験年数に応じた指導力が身に付いていない教員がいたりするなどの悩みを抱えながら、各中学校長は人材育成に当たっている。
▽学校におけるOJT推進
多くの学校でOJTによる人材育成の重要性を認識しながら実践している。そして、その成果を実感しながら着実に前進している学校が多い。
OJTを推進する上で重視している点は、「まずやってみること」「無理せず継続すること」「意図的な仕掛けをすること」と考えている校長が多い。
実践例としては、初任段階教員に対する育成を、学校体制の中で先輩教員をメンターとして配置しながら個別指導している実践が多い。また、校務分掌や学年団等の既存の組織を活用したり、課題別の集団によって育成したりしている事例もみられた。
OJTを進める上において、キャリアステージに見合った資質・能力が身に付いていない教職員、新しい教育の流れに向き合おうとしない教員の存在が障壁となっている。
〈考察〉
どのキャリアステージにおいても、人材を育成していく手段として、OJTのように同僚性を生かしながら、互いに支え、成長し高め合っていく関係を意図的に踏まえた校内組織や取組は、とても重要で有効であると考えられる。しかしながら、管内の小規模校が多いという特性から、教員の年齢構成が不均衡であったり、キャリアに応じた指導力が身に付いておらず、メンターとしての役目が果たせない教員がいるなどの悩みを抱えながら校長は学校経営に奮闘している。
▽校内研修における課題と方向性
①課題
キャリアに応じた資質の育成。
教職員の偏った年齢構成の是正。
世代間交流や学校文化の伝承。
②方向性
教職員の能力差を縮める校内研修。
生徒の学びに直結する研修。
研修内容がすぐに生かせる研修。
〈考察〉
校長自身も含め、教職員への意識改革が非常に重要なカギを握っている。
受身になりがちな校内研修を主体的で協働的なものへと変容させる。
理想の実現に向けて、日々奮闘している校長がほとんどである。
◆まとめと展望
校内研修の充実では、働き方改革の流れが急速に広まりつつある中で、これまでどおりの労力や時間を費やすことは不可能である。今後は、時代の流れに沿ったミニ研修等の短時間で効率よく教職員の資質や能力を向上させる手段を模索していかなければならない。
CSや小中連携、小中一貫の流れも広がり始めている中、小中が連携した校内研修の取組も重要となる。
町村によってその進ちょくに差があることも事実で、今後は校長会と教育長部会とが連携を密にして進めていく必要がある。
キャリアステージに応じた学びや成長を支える校内研修の充実では、教員の年齢構成不均衡や経験年数に応じた指導力が身に付いていないなどの課題を抱えながら人材育成に当たっている状況にある。人材育成の手段として、OJTの活用は非常に有効な手段であることが分かった。管内の校長は、教職員の主体的で協働的な思考に基づいた意識改革を進めることが非常に重要なカギであると押さえている。
今後、さらに教職員としての使命感を高める校内研修が充実していくことに期待を寄せたい。
(関係団体 2020-12-11付)
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