【PICK UP2020】No.5 “分かった、楽しい”指導実現 旭川市立中学校 授業改善の取組(学校 2020-12-18付)
「いつだって授業は不安です」「私もです」―。こう話すのは、経験豊富な中学校教員たち。自らの授業に不安を抱えるのは若手教員ばかりではなく、誰もが「これでいいのか」と自問自答しながら日々の授業に向き合っている。
次年度から中学校でも新学習指導要領が全面実施となる。主体的・対話的で深い学び等の実現に向けた授業改善は初任・中堅問わず共通の課題だが、中学校には教科担任制ならではの難しさがあるとされている。
旭川市内をみると、神居東中学校の岡﨑良昭校長は、校内の研修だけでは「各教科の特性を生かした授業改善にまで踏み込むことは難しい」と指摘。
日ごろから直接、教科のベテラン教員に指導を受け、効率的に専門性向上を図りたいところだが、校内に教科担当が複数いる春光台中学校を例にとっても、千葉雅樹校長は「校内で授業を見せ合い、共に振り返る時間は日常的につくりにくい」と話す。
◆能力向上を実感
道教委による授業改善推進チーム活用事業が、本年度から新たに中学校数学科で始まった。推進教員2人が1チームとなって配置校や連携校に勤務し、地域全体の数学の授業改善を目指すものだ。
旭川・函館・釧路の3市で実施。うち、旭川市では中央中学校の沼澤和範教諭と神居東中の早川裕章教諭が推進教員としてチームを組み、配置校の中央中・神居東中に1週間ごと3日間勤務する。春光台中、東明中学校など8校の連携校には週2日(各校月に1回程度)勤務。授業の事前検討やチーム・ティーチング指導、事後検討などを通して、初任層の指導力の底上げや中堅層の育成を図っている。
コロナ禍で巡回回数が減少したにもかかわらず、2人の推進教員と共に授業改善に取り組んだ教員は「授業力の向上を感じる」と口をそろえる。東明中の鷲見隆教諭(5年目)は「少しずつ理想としていた授業の形に近づいてきた」と実感。中央中の加藤翔大教諭(1年目)は、自身で板書の変化を実感するとともに「生徒の反応がよくなった」と客観的な評価も受けた。
中堅層も例外ではない。春光台中の山口正博教諭は、複数校で何百もの授業をみてきたチームならではの視点が参考となり、実践の幅が広がったという。
◆ポイントは即時性
初任・中堅問わず授業力の向上を実感できたポイントの一つに即時性が挙げられる。春光台中では月に1度の巡回でも効果を上げられるよう、時間割を工夫。極力1時間置きに同内容の授業を配置することで、直後にチームと事後検討し、つぎの授業で助言を生かせるようにしている。
初任の國井健太郎教諭は、具体的な場面を取り上げた助言をすぐに実践したことで「明らかに生徒の反応が良くなった」と実感。
東明中の中堅・大沼亜紀子教諭も、たった一日で生徒が「分かった・楽しい」と意欲的になったことに驚くとともに、「授業をしていて楽しい」と感じたという。
◆地域全体に普及を
各教員に大きな効果があった同事業だが、地域の学校全体の授業改善につなげるためには、取組を広く普及させる必要がある。
神居東中では、学校だより等による地域や保護者、生徒への周知や、1学年付きとして座席を用意し学年打ち合わせ等に参加してもらうなど、他教員にも接する環境整備を工夫。本年度はコロナでなかなかできなかった校内研修において、授業改善の視点を他教科に生かしていくことも検討している。
推進地域として取組を進めている旭川市教委では、今後、研修会等で成果を発信し、地域全体の授業改善を円滑に進めるとともに、校内研修等へのチームのかかわりを支援。さらに、授業動画などを市内全教員にオンデマンド配信し、他教科の授業改善を促進していくという。
事業を「子どもたちのための心強いバックアップ」と話す春光台中の千葉校長。東明中の佐藤孝俊教頭は「ことしはいい形をつくっていくための第一歩。制度が長く続いてほしい」と期待する。子どもたちの学力向上のため、成果を次年度以降につなげ、より効果的な取組にしていくことが求められている。
(学校 2020-12-18付)
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