高校の在り方を再認識 代表高校長研・小玉教育長あいさつ
(道・道教委 2021-01-28付)

道教委教育長小玉俊宏
道教委・小玉俊宏教育長

 第4回全道代表高校長研究協議会における道教委・小玉俊宏教育長のあいさつ概要はつぎのとおり。

▼本年度の道内高校教育

▽新型コロナウイルス感染症対応

 高校においては、昨年3月以降、感染拡大防止のために学校の臨時休業措置が取られ、4月に1週間程度の登校期間があったものの、実質、約3ヵ月もの長期にわたって生徒が学校に通えない状況を余儀なくされた。

 高校が学習機会と学力を保障するという役割のみならず、生徒にとって安全・安心な居場所を提供するという福祉的機能や、教室内外の活動においてほかの生徒と学び合い、多様な考え方にふれ、切磋琢磨することで社会性・人間性を育むといった社会的機能をも有しているといった、これまで当たり前のように存在していた高校のもつ役割・在り方を再認識できた。

▽新型コロナウイルス感染症にかかる学びの保障

 道教委は、ホームページに学習教材を掲載したり、授業動画を配信したりするとともに、『リモート学習応急対応マニュアル』を発出するなどして、ICTを活用した家庭での学習を支援してきた。

 各学校においても、学校の工夫によってICT等を活用したリモート学習やオンラインを活用した学習指導などの取組を積極的に行っていただくとともに、学校再開後も、時間割編成の工夫や長期休業期間の短縮、土曜日授業の活用、学校行事の精選のほか、個人でも実施可能な学習活動の一部をICTなどを活用した家庭学習等で行うことなどによって、学校の授業において行う学習活動を、学校でしか実施できない内容等に重点化するなど、生徒の学びを止めないために様々な工夫をいただいていることに感謝申し上げる。

▽もうひとつのクライマクス事業

 この1年、新型コロナウイルス感染症の流行によって、先行きがみえず不安な気持ちになったり、高校生活最後の思い出となるはずだった行事や部活動の大会、コンクールなどが中止となったりするなど、思い描いていた高校生活最後の1年を送ることができず、様々な場面でつらい思いをしてきた生徒に対し、もうひとつのクライマクスプロジェクトを実施してきた。

 プロジェクトの一つである1校1クライマクスにおいては、多くの賛同をいただき、道立高校47校から応募があり、在校生が、卒業する3年生に感謝の気持ちを伝える場面を設けてきた。

 また、一生の思い出となる機会を設けるため、オリンピアンや著名アーティストとの交流会等を実施するクライマクス・キャラバンを全道4会場で開催した。

 それぞれの会場では、元バスケットボール選手の折茂武彦さんや元スピードスケート選手の岡崎朋美さんなどを講師に招いて、講演などを行うことができた。

 会場によっては、3密対策や収容人数の関係から、希望した生徒全員に参加してもらうことができなかったが、参加した生徒からは「憧れの人と実際に会うことができてうれしかった。特に、挫折を乗り越えた話などは人生の指標となった」「将来に向けて諦めず進んでいこうという気持ちがもてた」といった感想がみられるなど、参加した総勢168人の生徒に夢や希望を与え、夢の実現に前向きに取り組んでいこうとする気持ちを高めることができた。

 3月には、事業の締めくくりとしてクライマクス・ギャラリーを計画している。札幌市内の札幌駅前通地下歩行空間において、部活動等の様子や大会映像の放映、パネルの展示のほか、生徒から寄せられた写真や映像、北海道に縁のある著名人からのメッセージなどを組み合わせて制作したミュージックビデオの放映などを予定している。

 これらの取組によって、高校3年生が少しでも笑顔を取り戻し、卒業後のそれぞれの進路に向かって前向きに進んでほしいと期待している。

▼「“令和の日本型学校教育”の構築を目指して」(答申案)を踏まえた今後の高校教育・新時代に対応した高校教育の在り方

 1月14日の中央教育審議会初等中等教育分科会において、答申案「“令和の日本型学校教育”の構築を目指して~全ての子供たちの可能性を引き出す、個別最適な学びと、協働的な学びの実現」が取りまとめられ、今後の高校の在り方等が示された。

 高校は、義務教育機関ではないものの、中学校を卒業したほぼすべての生徒が進学する教育機関となっており、高校には多様な入学動機や進路希望、学習経験、言語環境など、様々な背景をもつ生徒が在籍していることから、生徒の多様な能力・適性、興味・関心などに応じた学びを実現することが必要である。

 また、高校生の現状の一つとして、学校生活への満足度や学習意欲が中学校段階に比べて低下しており、高校における教育活動を、高校生を中心に据えることをあらためて確認し、その学習意欲を喚起し、能力を最大限に伸長するためのものへと転換することが急務である。

 これらを踏まえ、高校生の学習意欲を喚起し、能力を最大限に伸長するための各高校の特色化・魅力化に取り組む必要がある。

 その一つとして求められているのがスクール・ミッションの再定義、すなわち、各高校の存在意義・社会的役割の明確化である。

 また、各高校においては、スクール・ミッションを踏まえ、高校の入口から出口までの教育活動の指針であるスクール・ポリシーを策定することが求められる。

 また、本答申においては、高校生の学習意欲を喚起し、能力を最大限に伸長するための普通科改革も求められている。

 約7割の高校生が通う学科を「普通科」として一くくりに議論するのではなく、「普通教育を主とする学科」それぞれの特色化・魅力化に取り組むことを推進し、各設置者の判断によって、当該学科の特色・魅力ある教育内容を表現する名称を学科名とすることを可能とするための制度的な措置が求められている。

 さらに、高校には、初等中等教育段階最後の教育機関として、高等教育機関や実社会との接続機能を果たし、社会の形成に主体的に参画するために必要な資質・能力を身に付けさせるための学びの実現が求められている。

 各高校の校長には、令和の日本型学校教育、スクールミッションやスクール・ポリシーの策定、普通科の特色化・魅力化などについて、これらの連続性を踏まえて有機的に機能するよう、20年後・30年後の北海道や各地域、社会像を見据えた学校のデザインを描くという、非常に重要な役割を担っていただくことになる。

▼令和3年度の本道教育の展望

▽GIGAスクール構想

 新学習指導要領では、情報活用能力が学習の基盤となる資質・能力に位置付けられるとともに、子どもたち一人ひとりの教育的ニーズや理解度に応じたきめ細かな指導に向けた授業改善を推進する観点から、ICTを適切に活用した学習活動の充実を図ることが求められている。

 各学校においては、コンピューターや情報通信ネットワークなどの情報手段を積極的に活用することが重要である。

 道教委はICT活用授業指針を策定し、ICTを活用した授業の目指す姿と実現に向けた具体的方策を示すとともに、その普及に努め、各学校におけるこれまでの教育実践の蓄積を生かしつつ、これからの時代のスタンダードとして、授業におけるICTの適切な活用が確実に実践されるよう取り組んでいくこととしている。

 ICTを活用した授業では、その利点を生かした学習活動の充実による主体的・対話的で深い学びの視点からの授業改善が求められており、具体的な活用例として、1人1台の端末で一人ひとりの反応や考えを即時に把握しながら双方向的に授業を進める一斉学習や、デジタル教材を活用するなどして一人ひとりの学習状況に応じた個別学習、クラウドを活用した共同編集などによってリアルタイムで考えを共有しながら学び合う協働学習などが可能となる。

 道教委では、すべての教員が整備された端末等を活用した授業を円滑に実施できるよう、教員等のための研修の開催や、ポータルサイトに授業で活用できるコンテンツ集を掲載するなどしている。

 今後は、引き続き研修等の充実を図るとともに、学年や教科の特性に応じた授業モデルを作成・普及するなどして、教員一人ひとりのスキルを高め、本道すべての学校において、子どもたちの学びの質を高めていくことができるよう取り組んでいく。

 さらに、道教委としては、ICT機器を効果的に活用し、道内どの地域においても生徒の進路実現のための学びを保障するため、3年度、遠隔授業配信センターを有朋高校内に設置し、地域の小規模校に幅広い教科・科目を配信するなど、選択科目の充実に向けた支援を行うこととしている。

 本取組は、道教委の重点的な施策の一つであり、全道の高校と一体となって進める必要があることから、校長協会とも連携しながら推進したいと考えているので、よろしくお願いする。

▽地学協働活動推進実証事業

 平成30年度にスタートし、本年度が最終年度となる道ふるさと・みらい創生事業の後継事業として、令和3年度から地学協働活動推進実証事業の設計を進めている。

 地域において新しい価値を創造する人材や、グローバルな視点をもってコミュニティを支える地域のリーダーとなる人材、専門的な知識・技能を身に付けて地域や産業界等に求められる未来を創る人材を育成するため、高校に配置するコーディネーターを中心に、高校と地域の自治体や産業界等が協力・融合したコンソーシアムを構築し、課題の解決を図るための探究的な学びを通して、本道各地域の活性化を図りながら生徒のキャリア教育を推進するものである。

 この事業によって、生徒が地域社会とのつながりを実感し、主体性をもって社会とかかわりながら学習するとともに、コーディネーターの効果的な活用によって学校業務を縮減するなど、これまでの事業の成果や解決方策を生かした実践となることを期待している。

▼代表校長へのメッセージ

 持続可能な本道教育を実現する上で、避けて通ることのできない課題がある。それは、教頭不足という問題である。

 教頭のなり手不足は深刻で、高校は小・中学校と比較しても特に厳しく、教頭受験者は、平成24年の98人から令和3年の29人へと10年で7割減少し、今や必要数はギリギリの状況で、学校運営を担う管理職の質の低下が大変心配である。

 この問題には様々な要因が考えられるが、ほかの職種に比べ教頭が特に長時間勤務となっていることは調査結果から明らかであり、調査等の事務処理やPTA対応、保護者対応等に忙しさを感じるという声が多い。

 現在、元気はつらつとして学校運営に取り組んでいる教頭がいる一方、「こうした過酷な状況から救われたい」「道教委の支援がほしい」「サポートされている実感がほしい」という思いの教頭が当然いるだろうと思う。

 私としては、こうした問題の解決に真正面から取り組まなければならないという認識のもと、庁内に対策チームを立ち上げるとともに、働き方改革アクション・プランに「教頭への支援」という項目を新たに盛り込んで対策を講じていくことが必要であると考えており、過日、関係職員に検討を指示した。

 いずれしても、私としては、この課題の解決に、危機感をもって取り組んでいきたいと考えている。

 校長の皆さんにおいては、学校運営の要である教頭職の魅力というものを、教頭はもとより、多くの教職員に伝えていただくとともに、自校の教頭に対しては、寄り添いながら支援する、いわば伴走型のサポートをお願いしたい。

 そして、道教委と校長によるサポートで、教頭が本来の力を存分に発揮できる環境の整備を進めていきたいので、協力をお願いしたい。

 新型コロナウイルス感染症の状況は刻一刻と変わり、感染拡大を防ぎながら学校教育活動を確実に進めていくために学校はどうあるべきか、という問いに答えられる唯一解が存在しない今は、まさに予測困難な時代である。

 そのような時代においても、「子どもたちの学びをとめない、心が近付く」環境を確保するとともに、生徒一人ひとりが自分の価値を認識し、豊かな人生を切り開き、持続可能な社会の創り手となることを後押しするため、“生徒を主語にした”高校教育を実現する必要がある。

 道教委としては、今後とも、高校長協会と緊密な連携を図りながら、本道の高校教育における課題の解決に全力で取り組んでいくので、理解と協力をお願い申し上げる。

(道・道教委 2021-01-28付)

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