建設的に話し合う力を 指導部 主体的発信力育む教育
(札幌市 2021-03-15付)

第3課題「新たな未来を紡ぎ、よりよい社会を創る力を育む生徒指導―社会的資質を高め、主体的発信力を育む指導の充実」

▼研究の視点

▽教育の動向をとらえる

▽市内中学校の生徒の実態をとらえる

▽問題解決に向けた具体的な方策を示す

▽校長としての関与の在り方を示す

▼研究内容(一部抜粋)

 本年度は3年継続研究の2年目として、1年目の研究実践を踏まえ、研究基本主題とそれを受けた副主題を追究するため、前年度と異なる調査対象に関する現状把握と課題の検証、そして前年度の調査結果との比較を通した考察を試みた。

 具体的には、指導部所属の校長21人の中学校に所属する2学年生徒を対象に、社会的資質と主体的発信力にかかわるアンケートを実施し、合計3224人から回答を得た。

▽社会的資質に対する生徒の現状認識と日常の指導に対する生徒の意識について

 前年度は、社会的資質向上のため、まずは教員に対し、自校生徒の社会的資質についての現状認識と、社会的資質を向上させる教育活動、さらに指導に対する教員自身の意識の度合いについて調査した。

 本年度は生徒を対象に、日常において生徒自身がどのような意識をもって生活しているか、また、教員による社会的資質を向上させる指導をどのように感じているかについて調査した。

 なお、本年度も社会的資質を、コミュニケーション能力、アサーション能力、共感性、将来展望性、自尊感情、集団参加能力、実践力、規範意識、基本的生活習慣という9要因でとらえ、質問の表現を生徒向けに修正して調査した。

▽生徒の主体的発信力を育成する指導について

 主体的発信力を育成する指導について、前年度と同様7項目の質問を用いて生徒のとらえ方について調査した。その結果、主体的発信力を意識した指導については、6項目について肯定的回答が70%以上、そのうち4番目から7番目までの4項目が80%を超えており、多くの生徒が、教員による主体的発信力の育成を意図した指導を受け止めていることが分かる結果となった。

▼まとめ

 前年度の調査では、コミュニケーション能力、アサーション能力、将来展望性の数値が低く、特にアサーション能力と将来展望性の充実には、多くの教員が指導の工夫と改善の必要性を感じているという結果が出された。

 これに対して、今回の調査では各要因において多くは肯定的な回答の割合が高く、生徒の自己評価と教員の評価との間に差を感じる結果となった。その中で自尊感情に関しては、生徒の肯定的な回答が低く、教員の評価とも差がみられた。

 この点については、さらなる分析と改善策の検討の必要を感じる。

 主体的発信力の育成については、話し合いの方向性を意識し、建設的に話し合う力の充実を図るため、相手の気持ちを理解した聞き方の指導の在り方が今後も大きな課題である。

 また、みんなのやる気を高める発信の仕方を意識させることも課題の一つといえる。

▼次年度への課題と展望

 「新たな末来を紡ぎ、よりよい社会を創る力を育む生徒指導―社会的資質を高め、主体的発信力を育む指導の充実」についての3ヵ年継続研究の2年次としての本年度は、指導部校長21人の学校の生徒(3224人)を対象にアンケート調査を実施した。

 前年度実施の教員アンケート(445人)と比較・検討し、社会的資質9要因(コミュニケーション能力、アサーション能力、共感性、将来展望性、自尊感情、集団参加能力、実践力、規範意識、基本的生活習慣)を高めるための指導の充実について研究を進めた。

 本研究では、学校が主体的発信力を育む指導に積極的に取り組むことで、生徒の社会的資質を高めることにつながるという研究仮説を立て、その関係を探ってきた。

 本年度は、前年度の研究で特に定着が不十分とみられたコミュニケーション能力、アサーション能力、将来展望性について、課題の究明を図ることとした。

 今回の調査から、教員はバランスを考えて主体的発信力の育成を意識しながら指導に当たっていることがうかがえるが、生徒にとっては、相手の気持ちや考えを理解しながら話し合うところまでは教師の指導を十分に意識できていないことが明らかになった。

 次年度(3年次)研究では、2年間で実施した教員と生徒アンケートの結果を踏まえ、校長がリーダーシップを発揮して主体的発信力を育む多様な教育活動を展開し、生徒の社会的資質が育成できるよう、校長としてどのような考えに基づき、どのように関与すべきかについて研究を深化させていきたい。

(札幌市 2021-03-15付)

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