札幌市中学校長会 各部の2年度研究成果 第5回 円滑な校種間連携推進 進路指導部 特別活動を要に
(札幌市 2021-03-17付)

第5課題「新たな未来を紡ぎ、よりよい社会を創る力を育むキャリア教育―未来の社会に主体的に参画する力を育むキャリア教育の充実」

▼研究の視点

①学校教育全体で推進するキャリア教育

②社会に開かれた教育課程の趣旨を生かしたキャリア教育

③校種間連携を踏まえた系統的なキャリア教育

▼研究内容

▽子どもの意識からみえるキャリア教育の現状

 キャリア教育にかかわり、将来の職業選びにおいて重視することや就職したときに必要な能力について、令和元年度市立中学校13校の3年生を対象に実施した生徒アンケートでは、「将来の職業選択において重視する事柄」について「自分の能力や特性を生かせること」「自分の興味や好みに合っていること」を6割以上の生徒が選択している。

 将来就職したとき、必要とされる能力についての質問では、「コミュニケーション能カ」を8割弱の生徒が選択しており、「仲間と協力して仕事に取り組む気力」「難しい仕事でも逃げずに取り組む気力」が4割程度と続き、それ以前の調査とほぼ同程度の回答となっている。

 アンケート結果から将来の就職に向け、自己の能力の適正で判断することや、コミュニケーション能力の必要性を生徒は感じていることが分かる。そこで必要となることが自己肯定感・自己有用感の醸成である。

 自己肯定感・自己有用感については、キャリア発達の課題の一つに挙げられている「肯定的自己理解と自己有用感との獲得」と深く関係している。生徒アンケートにおいても「自分にはよいところがある(自己有用感)」の回答は56%であった。これは過去の調査でもほぼ同様の結果を得ている。

 また、自己肯定感については小学校と比較し肯定的な回答が低い傾向にあることから、中学校における課題とされてきた。

 今後、生徒の自己有用感・自己肯定感の育みを図る上で、地域・社会とのつながりを意識した取組を推進しながら、生徒一人ひとりの主体的な意思決定に基づく実践活動につなげることが必要である。

▽キャリア教育における校種間連携の現状

 市では小学校段階から人や社会とかかわり、様々な場面で自分の役割を果たす過程で自らの役割の価値や自分と役割の関係について見いだし、学ぶことと自己の将来とのつながりを見通しながら自分らしい生き方と社会的・職業的な自立に向け、必要な基盤となる資質や能力を育んでいる。

 また、生徒アンケートにおいても、小学校から取り組んできたキャリア教育の内容が、概ね役に立っていると実感していることがうかがえた。

 高校段階では、主権者としての自覚を含む社会の形成者として、主体的に参画する意識を高め、社会や地域と連携した体験的な学習や社会参加の取組において、主体的、試行的な体験を通して生き方や将来について考えることを行っている。生徒アンケートにおいても進学先(就職先)で中学生が学びたいこととして、「様々な職業や内容について」「社会人としてのマナー」「将来の生き方や人生設計」などの回答が多く寄せられており、今後も高校等との連携の必要性が感じられる。

 一方、平成23年1月の中央教育審議会答申では、キャリア発達を「社会の中で自分の役割を果たしながら、自分らしい生き方を実現していく過程」と定義している。

 中学生にとって計画的・系統的なキャリア教育は極めて重要であり、中学生のキャリア発達課題に即した目標設定が求められる。そのために、中学生のキャリア発達段階をより深く理解し、系統性のある指導につなげ、長期的視点から生徒の発達を理解し、校種間連携を深めていくことが大切である。

▼次年度への課題と展望

 校長は学校経営方針の中にキャリア教育を位置付ける必要があり、さらに特別活動を要とし、各教科との関連や教科等横断的な学習活動を取り入れたキャリア教育全体計画、年間指導計画を作成することが求められる。

 校長はあらためて学習指導要領の理解を校内で徹底し、学校の教育活動について家庭や地域に発信していくことが今まで以上に求められる。

 系統性・継続性のあるキャリア教育の有用性について考えると、小・中・高における校種間連携は今後一層重要となる。校長は小中一貫した教育の推進を含め、校種間の円滑な連携が図れるよう体制づくりを進めるとともに、キャリア・パスポートの有効的な活用方法を検討し、学校間の体験入学などの機会などを利用してキャリア発達の実態をとらえ、異校種間においてのキャリア教育等をどのように進めていくか、校種間の教職員の理解を深める働きかけが必要となる。

 来年度研究の深化については、本年度の充実の観点をもとに、特別活動を要としたキャリア教育、自己肯定感・自己有用感を高める活動、望ましい校種間連携のような事柄についてさらに掘り下げながらキャリア教育の研究を深めていきたい。

(札幌市 2021-03-17付)

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