根室管内3年度教育推進の重点 組織的人材育成など掲げ 松田局長 知恵出し合い全力で(道・道教委 2021-04-14付)
根室教育局・松田俊也局長
【釧路発】根室教育局の松田俊也局長は、令和3年度管内教育推進の重点を示した。新型コロナウイルス感染症拡大防止の観点から、プレゼンテーション動画を動画共有サイトYouTubeで9日から関係者向けに限定公開している。本年度のテーマは「根室の未来を託す子どもの育成~質の高い教育を届けるために」とし、3つの重点を設定。組織力の充実や人材の組織的な育成、学習環境の整備を掲げた。また、前年度に取りまとめた「“チーム根室”で取り組む“これだけは”~さらに一歩踏み込んで!」を提示。市町教委、学校などの教育関係者が実践すべき内容を示した上で、「子どもたちのために知恵を出し合って全力で取り組んでいこう」と呼びかけた。教育推進の重点はつぎのとおり。
◆テーマの設定
本年度のテーマについては、道総合教育大綱および道教育推進計画の基本理念を踏まえつつ、ふるさとへの誇りと愛着をもちながら、世界に視野を広げ、社会を支えていくたくましい人材を育成するために、これまでの管内教育の成果を生かしながら、その質を高めていくという視点で「根室の未来を託す子どもの育成~質の高い教育を届けるために」と設定した。
本テーマは、一人ひとりの子どもたちが自分のよさや可能性を認識するとともに、あらゆる他者を価値あるものとして尊重し、多様な人々と協働しながら様々な社会的変化を乗り越え、豊かな人生を切り拓き、持続可能な地域社会のつくり手となることができるよう、その資質・能力を育成することを重視したものとなっている。
子どもたちが生まれ育った地域や環境に左右されずに質の高い教育を受けさせることができるよう全力を尽くさねばならず、テーマの具現化に向けては、教育委員会、幼児教育施設、学校、家庭、地域が子どもたちに育みたい資質・能力を明確にして共有するとともに、すべての教育関係者が連携・協働してその実現を目指す取組を進めていくことが大切である。
管内教育推進の重点の全体的な構成・内容については、3つの重点と、重点それぞれに3つの視点を設定した。
【重点1 確かな学力を育む組織的な取組の充実】
技術革新やグローバル化など、急激に変化する社会を生き抜くためには、子どもたちに新しい社会や経済に対応する力を育成するだけではなく、変化の背景や本質を見抜き、主体的に社会に参画していく力を育成していくことが必要となる。
今後は全教職員の参画のもと、自校の本質的な課題を明確にして、解決に向けた実効性ある取組を行ったり、育成を目指す資質・能力に基づき学習活動や学習評価を改善したりするとともに、子どもたちが安心して学ぶことができる環境を整えることが重要。
こうしたことから、子どもたちに確かな学力を育むために、視点①「自校の現状と課題を踏まえた全教職員による検証改善サイクルの確立」、視点②「“主体的・対話的で深い学び”の実現に向けた絶え間ない授業改善の推進」、視点③「各教科等における“生徒指導の3機能”を踏まえた指導の工夫」で取組を進めるようお願いする。
教育局では、管内で独自に実施している学力向上支援事業「チーム根室で学力向上」において、組織力強化会議や学力向上担当教諭協議会などの研修事業を関連付けながら継続的に実施し、各学校の管理職やミドルリーダーが中心となった検証改善サイクルに向けた取組を支援するとともに、学校力向上に関する総合実践事業や授業改善推進チーム活用事業等の成果を普及・啓発するなど、各学校の組織的な取組を支援していきたいと考えている。
【重点2 根室教育の発展を担う人材の組織的な育成】
教職員には時代の背景や要請を踏まえつつ、自らが子どもたちの道しるべとなるべく、常に資質・能力の向上を図り続けることが求められている。キャリアステージに応じて学び、力量を高めることができる環境を整えることが必要。また、人と人との交流を促進し地域に新たな活力をもたらす仕掛けづくりを進める人材を育成することが必要である。
今後は、若手教員が多く、また、管理職やミドルリーダーの育成が急務であるという管内の現状を踏まえ、OJTや校外研修などを組織的・計画的に行うとともに、地域が抱える課題やニーズに対応できる人材を育成することが重要である。
こうしたことから、人材の組織的な育成に向けて、各学校や教育関係機関において、視点①「学校の若手教員やミドルリーダーを組織的・継続的に育成するシステムの構築」、視点②「教員の実践的指導力や専門性の向上に資する研修の計画的な実施」、視点③「家庭教育や地域活動の支援および推進を担う人材の育成」で取組を進めるようお願いする。
教育局では、初任段階教員研修、中堅教諭等資質向上研修の講座内容の充実や、管内の力量のある教員を講師として活用するなどの研修事業の実施による人材育成に取り組むとともに、若手教員やミドルリーダーのニーズに応じた研修を実施する。また、学校経営指導訪問や学校教育指導訪問を通して、各学校の状況に応じた人材育成の取組について指導助言するとともに、研修担当者等に校内研修の進め方などに関する指導助言を行っていく。
【重点3 子どもたちの学びを支える環境の整備】
変化の激しい社会においては学校を取り巻く課題が複雑化・多様化し、学校だけでは十分に解決できない課題が増加している。そのため、子どもたちを取り巻く状況の変化や新たな教育課題に対応するため、学校はもとより家庭、地域との連携・協働し、学校改善を進めることが必要である。
また、人口減少、少子高齢化が急激に進む中、各地域ではそれぞれの特徴を生かした自律的で持続的な社会を創生することが求められており、その中で教育は地域社会を動かしていくエンジンの役割を担っている。
今後は、域内で育成を目指す資質・能力を共有し学校段階に応じた教育活動を展開したり、学校と地域との連携・協働をより進めたりすることなどによって、子どもたちが行きたい、保護者が行かせたいと思う魅力と活力ある学校づくりに取り組んだりすることが重要である。
こうしたことから、子どもたちの学びを支える環境整備に向けて、各学校や教育関係機関においては、視点①「発達や系統性・発展性を踏まえた幼小中高の連携や一貫教育の推進」、視点②「学校・家庭・地域が一体となった生活習慣・学習習慣の確立」、視点③「地域の教育資源を活用した教育活動の推進、地域に根差した魅力ある学校づくり」で、取組を進めるようお願いする。
教育局では、教職員が参加する研修会等に職員を派遣し、それぞれの課題に応じた取組が充実するよう、必要な情報提供や指導助言を行っていくとともに、魅力ある高校づくりに向けた取組を支援していく。
【共通事項】
それぞれの重点の具現化に向けて、特に考慮してほしい視点を共通事項として設定した。
▽ICTの活用による教育活動、日常業務の改善・充実
1人1台端末の環境を生かし、児童生徒が授業の中で文房具として日常的に活用できるようにする視点で、主体的・対話的で深い学びの実現に向けた授業改善に取り組むことなどが大切である。
▽全教職員による働き方改革を通じた業務改善、学校改善の推進
業務を効率化することは学校の目的を見つめ直すことであり、全教職員で学校として何が必要か、必要でないものは何かを十分に議論の上、業務改善、学校改善を推進することで質の高い教育を持続的に行っていくよう取り組むことが大切である。
▽新型コロナウイルス感染症対策を踏まえた教育活動の実施
手を緩めずに行っていくことは言うまでもないが、このことを契機に、例えば前年度、臨時休業後に学校再開後に教育活動や時間の配分等を再検討し学習活動を工夫したことを生かし、今後の教育課程編成・実施・評価・改善に取り組むことが大切である。
◆好事例収集し情報発信へ
【“チーム根室”で取り組む“これだけは”~さらに一歩踏み込んで!】
3つの重点の具現化に向け、各学校や教育関係機関等が活動を展開していくが、前年度同様、取組の一層の充実を図る観点から管内で共通して取り組んでいただきたい内容を示した。
▼市町教委
▽各種調査結果の分析による各学校の学習指導の成果と課題の把握=重点1
▽各学校の授業改善(保育の改善)の進ちょく状況の定期的な把握および授業改善の具体の方策にかかる指導助言=重点1
▽授業改善や働き方改革に資するICT等の環境の整備=重点1・2
▽管理職や教職員の人材育成に向けた校長会・教頭会の組織的な役割や運営にかかる指導助言=重点2
▽各種研修会・会議等の実施を通した教職員や地域人材を育成する環境の整備および研修・会議等の成果を還元する機会の確実な設定=重点2
▽学校(園)段階間の円滑な接続を図る教育課程の編成・実施・評価・改善にかかる指導助言=重点3
▽市町図書館を活用した読書環境の整備=重点3
▽地域を支える人材の育成に向けた地元高校との連携=重点3
▼学校
▽全教職員による各種調査結果等を活用した子どもの実態の速やかな分析および検証改善につなげる組織体制の整備=重点1
▽校長による子どもに育みたい資質・能力の具体の提示および授業改善の目標やプロセスの設定など、検証改善につなげる組織体制の構築=重点1
▽1人1台端末環境を生かした学習活動の充実=重点1
▽新学習指導要領に則した学習評価の改善・充実=重点1
▽校長、教頭、主幹教諭、教務主任等による日常の授業参観等を通した授業改善の状況の点検および明確になった課題に対する具体の改善策の提示=重点2
▽日常の授業改善につながる校内研修および教職員のキャリア・ステージやニーズに応じた研修の充実=重点2
▽異校種との連携を図る教育活動の構想・実践および効果的な引き継ぎの実施=重点3
▽放課後や長期休業期間を活用した学習支援(子ども一人ひとりの状況に応じた課題等の提示)の実施=重点3
▽学習および生活に困り感をもつ子どもを日常的に支援する体制の構築=重点1・3
▽高校におけるスクール・ポリシーの全教職員の参画による策定、保護者・地域等への公表およびカリキュラム・マネジメントの充実=重点1・3
▼幼児教育施設
▽全職員によるカリキュラム・マネジメントや管理職による組織マネジメントの推進=重点1
▽「幼児期の終わりまでに育ってほしい姿」に基づいた教育活動の実施=重点1
▽日常の保育の改善につながる園内研修および職員のキャリアステージやニーズに応じた研修の充実=重点2
▽小学校等との定期的な合同研修や交流=重点3
▽子育てに関する学習機会の設定および基本的な生活習慣の確立=重点3
▼家庭・地域
▽家庭教育支援チーム等の家庭教育を支援する組織体制の構築=重点2
▽ゲームやインターネット等にふれる時間などのルールづくり=重点3
▽コミュニティ・スクールや地域学校協働活動などの場や機会を活用した子どもの成長を支える体制の整備=重点3
▽地域行事や体験的な活動への積極的な参加・協力を促す仕組みの構築=重点2・3
▽家読(うちどく)の時間の設定=重点3
◆おわりに
管内教育推進の重点については、網羅的に示していた前年度までの重点とは異なり、特に重要であると考えられる事項に焦点化を図ることで、管理職が常に重点を意識し、自らの学校において自信をもって実践内容を固めるようになってほしいと考えている。
また、3つの重点の達成に向けた取組やチーム根室で示した取組の充実に向けて、各教育関係機関等が組織内はもとより、組織を越えて情報や実践を共有し、主体的に取組を進めてほしいと考えており、教育局としても各教育関係機関がさらに質の高い教育を展開できるよう、好事例を収集し情報発信していく。
管内は地理的な面から、必ずしも教育環境が整備された地域であるとは言えない。
また、新型コロナウイルス感染症予防対策によって教育活動にも一定の制限を受けることになるが、このようなときだからこそ我々教育関係者は時代を担う子どもたちのために様々な知恵やアイデアを出し合って全力で乗り越えていかなければならない。
本年度も管内教育委員会連合会教育長部会をはじめ、管内のすべての教育関係者とこれまで以上に連携を密にしながら、管内教育の充実・発展に全力で努めていく。一層の協力をお願いする。
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