釧路管内3年度教育推進の重点 GIGAスクール実現 キーワードに 「学びの保障」(道・道教委 2021-05-06付)
釧路教育局・相川芳久局長
【釧路発】釧路教育局の相川芳久局長は4月中旬、釧路総合振興局で開かれた管内市町村教委教育長会議で令和3年度の管内教育推進の重点を示した。本年度の「釧路っ子の“学び”を支える管内教育推進マップ・3S(サポート)」について、大きな柱に新たに「GIGAスクール構想の実現」と「新型コロナウイルス感染症への対応」を位置付けた。相川局長は「子どもたちが豊かな人生を切り拓いていけるよう全力を挙げて支援していく」とし、理解と協力を求めた。
教育推進の重点の概要はつぎのとおり。
釧路っ子の「学び」を支える管内教育推進マップは、急激に変化する社会状況から、学校教育の現状や課題を踏まえ示している大きな3つの柱として前年度位置付けた「学校における働き方改革の推進」に加え、新たに「GIGAスクール構想の実現」および「新型コロナウイルス感染症への対応」を位置付けている。
3つの柱については、令和の日本型学校教育の実現に向け、これまでの学校教育が果たしてきた役割を継承しつつ、新型コロナウイルス感染症に対応しながら安全・安心な学校教育を推進するとともに、学校における働き方改革やGIGAスクール構想を強力に推進し、新学習指導要領を着実に実施することが重要であることから位置付けた。
本マップの内容については、管内の実態を踏まえ、管内8市町村、各学校と教育局が一体となって取り組んでいくことが大切である。マップに掲げる項目については、学校経営方針等に反映し、着実に取り組んでいただきたい。
◆管内教育の重点項目
大きな変更点としては、前年度、「つなげる」「確かめる」としていたキーワードを、本年度は、いかなる状況においても子ども一人ひとりに継続した学びを保障することが大切であることから、「学びの保障」とした。
【「子ども」へのS(サポート】
▼社会で活きる力
技術革新やグローバル化など変化の激しい社会を子どもが生き抜くために必要な資質・能力として、前年度と同様、①未来を拓くために必要な資質・能力②社会的自立に向けて必要な基盤となる資質・能力③ふるさとを支える人材―の3点を育む取組を推進する。
①未来を拓くために必要な資質・能力の育成に向け、小・中学校においては、前年度、全国学力・学習状況調査は中止となったが、本年度は5月に実施が予定されている。本調査や各学校において実施している客観的な学力検査等の結果から、自校の成果と課題を明確にし早期に改善を図ること。高校においては、卒業後の学習や社会生活に必要な資質・能力を一層育成する必要があること。また、小・中・高校共に、臨時休業の影響から、学力の定着状況が不十分と考えられる単元等については、確実に定着を図るよう、きめ細かに学びを保障することなどが大事である。学力向上に向けた検証改善サイクルの継続的な推進をお願いする。
また、①では取組の2つ目として、ICTの活用による個別最適な学びと協働的な学びを実現する授業改善を位置付けている。ICTを活用した個に応じた指導の充実を図るとともに、探究的な学習や体験活動等において子ども同士、あるいは多様な他者と協働しながら学び、必要な資質・能力を育成する協働的な学びの充実を図るなど、授業改善の推進に取り組むようお願いする。
取組の3つ目は、前年度に引き続き、新学習指導要領の趣旨を踏まえた主体的・対話的で深い学びの実現に向けた授業改善を学校全体で推進するようお願いする。
特に、高校においては、次年度からの新学習指導要領の全面実施を見据え、多様な関係機関との連携・協働による地域・社会の課題解決に向けた学びや、生徒一人ひとりに応じた多様な探究的な学び、STEAM教育など、実社会で課題解決に生かしていくための、教科等横断的な学びの充実を図るようお願いする。
つぎに、②社会的自立に向けて必要な基盤となる資質・能力の育成に向けては、障がいのある子どもたちの可能性を伸ばし、自立や社会参加に必要な力を育むために、一人ひとりの教育的ニーズに応じた指導や支援の充実を図ることができるよう、学校と家庭、地域、関係機関等が連携した特別支援教育の推進に取り組むようお願いする。
管内には、3校の特別支援学校がある。特別支援学校にはセンター的機能を発揮していただき、特別支援教育パートナー・ティーチャー派遣事業や教育局の巡回相談なども活用しながら、特別支援教育の充実を図っていきたい。
また、子ども一人ひとりの社会的・職業的自立に向けて必要な基盤となる資質・能力を育てるため、地域と連携し、学びの必要感、目的などを意識したキャリア教育の充実に取り組むようお願いする。
特に、高校においては、生徒が在学中に主権者の一人としての自覚を深める学びが求められていることを踏まえ、学びに向かう力の育成やキャリア教育の充実を図るようお願いする。
つぎに、③ふるさとを支える人材の育成については、地域への誇りと愛着をもち、地域の将来を担う人材を育むため、地域づくりに主体的に参加したり、地域の問題を考えたりする学習活動を計画的に行うなど、発達の段階に応じて、道内、管内、地域の歴史や文化等を学ぶ、ふるさと教育の充実を図るようお願いする。
▼豊かな人間性
前年度と同様、①豊かな情操や道徳心②コミュニケーション能力―の2点を育む取組を推進する。
①豊かな情操や道徳心の育成では、自校の道徳教育をあらためて見直し、子どもの豊かな心を育む「考え、議論する道徳」を要とし、学校全体で道徳教育の充実を図るようお願いする。
つぎに、②コミュニケーション能力の育成については、いじめの問題はどこの学校にも起こり得るという想定のもと、国の法令や指針、北海道いじめの防止等に関する条例等を踏まえ、いじめの未然防止、早期発見・早期対応に向け、教育相談体制の整備・充実を図るとともに、急増する児童虐待についても、いじめと同様、早期発見・早期対応に努め、児童相談所などの関係機関と連携し、子どもの安全を守るようお願いする。
管内においても、新型コロナウイルス感染症にかかる差別・偏見や誹謗中傷がみられた。各学校においては、感染症対策に関する正しい情報発信や子どもの心のケアを含め、感染症に対する差別・偏見や誹謗中傷の防止に向けた積極的な取組をお願いする。
▼健やかな体
昨年同様、体力向上に向けた取組や健康教育を推進する。①体力向上を通して健康の維持、精神面の充実を図ることについては、前年度、中止となった国の体力調査が本年度は実施される予定である。
各学校においては、本調査や新体力テスト等の結果をもとに、子どもの体力・運動能力等の状況を的確に把握し、継続的な検証改善サイクルの推進や、体育・保健体育授業の改善を図るようお願いする。
つぎに、②健康な生活を実践する資質・能力の育成に向けては、学校における新しい生活様式の実践やアレルギー疾患など多様化する健康課題への対応など、健康教育を充実するとともに、子どもが生涯にわたって健康な生活を送ることができるよう、望ましい生活習慣や食習慣の定着などに家庭と連携して取り組むようお願いする。
【「学校」へのS(サポート】
▼学校における働き方改革の推進
前年度は、在校等時間の客観的な把握を位置付けていたが、管内においては在校等時間をすべての学校が把握していることから、北海道アクション・プランに掲げる取組の推進を新たに位置付け、本年度も、校長のリーダーシップのもと、質の高い教育を実現する働き方改革の推進をお願いする。
▼GIGAスクール構想の実現
子どもの学びや教職員を支える環境づくりを推進することが重要となる。
本年度は、義務教育段階のすべての学校において、1人1台端末が導入される予定となっていることから、ICTの特性や利点を生かした授業改善を図るとともに、デジタル教科書などのデジタル教材を効果的に活用した学びを推進するようお願いする。
また、高校段階においては、BYODの活用も含め、今後の1人1台端末環境の整備状況を踏まえながら、ICTを活用した授業改善に取り組むようお願いする。
さらには、ICTを活用したオンライン学習や遠隔授業の実施、校務の効率化など、学校教育の質の向上を図るようお願いする。
▼マネジメント機能の強化
①学校経営・運営の改善・充実について、小・中学校においては新学習指導要領の全面実施を踏まえ、また、高校においては次年度の全面実施を見据え、組織マネジメントやカリキュラム・マネジメントの推進について、学校評価を効果的に活用するなどして、一層、改善・充実を図るようお願いする。
つぎに、②教職員の力が発揮できる環境づくりについては、前年度策定した管内小中学校管理職員等候補者育成方針に基づき、ミドルリーダーや管理職員候補の育成をお願いする。
特に、管理職においては、人材育成の観点から、自校の教職員を対象に、積極的に、ミドルリーダーにふさわしい業務へ登用するとともに、定期的な面談の際に新たに作成した「これからのキャリアプラン」に基づいて面談を行い、個々の教職員へのキャリアアップへの意識の醸成を図るなどして人材育成に努めるようお願いする。
▼教職員の資質・能力の向上
①学びの質を深める指導力の向上について、新型コロナウイルス感染症の拡大防止や、ICTの積極的な活用の観点から、教育局としてはオンライン研修などを活用し、教職員の資質・能力の向上に向け、重点的で効果的な教職員の学ぶ機会の確保に努める。各学校での対応をお願いする。
また、子どもの学びを充実させるためには、教職員のICT活用能力の向上が不可欠であることから、取組の中に教職員のICT活用能力の向上を図る研修の充実を位置付けているので、積極的な受講をお願いする。
つぎに、②「チームとしての学校」の実現については、事務職員等も含めた教職員の役割分担を明確にしながら、それぞれの専門性を発揮するなど、スタッフマネジメントの考え方を踏まえた組織力の向上が大切である。
このため、校長を中心に副校長、教頭、主幹教諭、事務長、事務職員など、全教職員を巻き込んで学校全体で組織力を高める取組をお願いする。
▼危機管理体制の強化
子どもの安全・安心の側面と教職員の側面から2点示す。
①子どもの安全・安心の確保については、学校管理下や登下校中の事件・事故や災害の発生があとを絶たないことから、防犯訓練や交通安全等の取組の一層の充実を図るとともに、危機管理マニュアルを見直すなどして、学校防災体制の強化に努めるようお願いする。
特に、1日防災学校や地域と連携した避難訓練の実施など、地域の実態を踏まえた災害への対応について、幼稚園から高校まですべての子どもが主体的に考え、適切に行動する力を育む機会の充実を図るようお願いする。
さらに、新型コロナウイルス感染症への対応や若年層の死亡原因の1位を占める自殺を予防するためには、子どものメンタルヘルスに関する教育の充実を図るとともに、すべての子どもにとって安全・安心で、信頼できる居場所や絆づくりを進める必要があることから、引き続き、子どもの安全・安心を守る取組を組織的に進めるようお願いする。
つぎに、②服務規律の保持・徹底については、研修の徹底を新たに加えている。管内においては、初任段階教員や期限付き教諭における事故が発生するなど、教職員の不祥事が依然としてあとを絶たず、大変、憂慮すべき状況が続いている。
このため、あらためて、一人ひとりの教職員にその責務の重さを自覚するような働きかけを継続的に行うとともに、法令順守や服務規律の徹底についてすでに校長会を通じてお願いしている。警察等の関係機関とも連携し、従来からの研修を工夫改善するなど、実効性の伴う取組を行うようお願いする。
▼学校段階間の連携・接続の推進
前年度からの変更はない。
◆おわりに
先を見通すことが困難な時代ではあるが、教育局としては、管内教育の進むべき目標やねらい、具体的な取組などについて、市町村教委や校長の皆さんと共有しながら、管内すべての子どもたちが無限に可能性を広げ、夢や目標をかなえ、豊かな人生を切り拓いていくことができるよう、全力を挙げて支援していく。よろしくお願いする。
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(道・道教委 2021-05-06付)
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