ICT活用し学び充実 旭川市教委 学校教育情報化推進計画
(市町村 2021-06-09付)

 【旭川発】旭川市教委は、令和3~9年度を計画期間とする市学校教育情報化推進計画を策定した。児童生徒の情報活用能力の育成、ICTの効果的な活用による学びの充実など、4つの目標と14の取組を設定。各目標に指標を設定し、PDCAサイクルによる進ちょく管理を行うとともに、児童生徒・教員を対象としたアンケートなどで成果を明らかにする。

 学校と教育委員会が方向性や目標等の共通理解を図りながら、ICTの円滑な運用と効果的な活用に向けた取組を計画的に行うことで、各校における情報通信技術の活用・情報教育の充実などを一層推進することが目的。

 「市における教育の情報化の目指す方向性」「目標および具体的な取組」「ICTを活用した学習場面および授業例」「計画の推進と評価」の4章立てとなっている。

 概要はつぎのとおり。

◆教育の情報化の目指す方向性

 情報関連企業や高等教育機関等の地域の教育力を生かすとともに、家庭と連携・協力しながら、つぎの4つを目指して取り組む。

▽ICTを活用して目指す児童生徒の姿=情報活用能力を身に付け、主体的に学び、多様な人々と協働して課題を解決しようとする児童生徒

▽ICTを活用して目指す授業=児童生徒一人ひとりの状況に応じた学びや協働的な学びの充実

▽ICTを活用するための目指す環境整備=児童生徒の学びを支える、学校のICT環境の整備に向けた物的・人的支援の充実

▽ICTを活用して目指す教育の質の向上=教員が子どもと向き合う時間の創出や、学校と家庭・地域との連携の強化

◆目標と具体的取組

 4つの目標と14の取組を設定。各目標には9年度までに目指す指標を設定し、成果を明らかにする。

【目標1 児童生徒の情報活用能力の育成】

 「基本的な操作が得意だと思う」「分からないことがあれば、目的に応じた方法を考えて調べるようにしている」「健康面に気を付けて、コンピューター等を使おうとしている」児童生徒の割合を、小・中学校で100%にする。

▼情報機器の基本操作の習得

 小学校低学年はタブレット端末に慣れ親しませることをねらいとした指導を中心に授業を進め、学年が上がるにつれてキーボードなどによる文字の入力、電子ファイルの保存・整理、インターネット上の情報の閲覧や共有の仕方など、児童生徒が各教科等の学習に必要となる基本操作を習得できるよう、市立小・中学校における情報活用能力の体系表を踏まえ、計画的・系統的に指導する。

▼情報を主体的に収集・選択し、工夫し活用する力の育成

 課題や目的に応じた情報収集の方法についての理解を深めることや、コンピューターやインターネットなどの情報手段を適切に用いて、必要な情報を収集、整理、分析、表現する力、新たな意味や価値を創造する力などを児童生徒の発達段階に応じ育成できるよう、各教科等における学習活動の充実を図る。

▼プログラミング的思考の育成

 プログラミング教育が充実するよう、児童生徒の実態に応じた教材・教具の整備に努めるとともに、ICTパークを活用し、児童生徒のプログラミング体験やプログラミング学習にかかる教員研修等を実施する。

▼情報社会に主体的に参画する態度と情報モラルの育成

 教科等横断的に児童生徒の情報モラルを育成する指導を継続して行う。各学校において、各通信事業者等が提供している情報に関する安全教室等も活用する。

▼健康に留意し情報機器を活用する態度の育成

 学校では、児童生徒が情報機器を活用する際の健康への影響や予防・対処法についての理解を深めるよう指導するとともに、健康に留意して情報機器を活用する態度を育成する。

 家庭における情報機器の活用に関するルールづくりを促進するとともに、児童生徒が心身の健康への影響を考え自ら判断し情報機器を活用できるよう、引き続き、保護者と連携した取組を進める。

【目標2 ICTの効果的な活用による学びの充実】

 「児童生徒のICT活用を指導できる教員」「ICTの活用に関する校内研修を実施し、かつ、教員が外部の研修に参加した学校」の割合を100%にする。

▼学びの質を高めるための活用

 ICTを活用すること自体を目的化するのではなく、指導の目標やねらいを明確にした上で、目標等を実現するための学習ツールとして効果的な活用に取り組む。また、学級全体への教材の拡大提示や、個別の課題ごとの調べ学習、クラウドを活用してのグループでの意見交流などの様々な場面において、ICTの活用を工夫する。

▼児童生徒の状態や特性・ニーズに応じた活用

 特別な支援を必要とする児童生徒のニーズ等に応じたアプリや学習ツールの活用方法等について、市ICT運用・活用推進プロジェクトチームで調査・研究を行うほか、実践の好事例を各学校に情報提供する。

▼デジタル教材等の活用

 各教科等の授業におけるオンライン学習システムの効果的な活用について、市ICT運用・活用推進プロジェクトチームで調査・研究を進めるほか、モデル校や実践推進校による指導事例等を各学校に提供する。

▼ICT活用指導力向上を図る教員研修の充実

 各学校のリーダー教員を対象にICTの活用にかかる研修会を開催するとともに、初任段階教員研修などの各種教員研修でタブレット端末を活用した指導方法等について教員が学ぶ機会を充実する。

 また、教委の指導主事や専門性の高い教員などが、各学校のニーズに応じ訪問し助言するとともに、実践推進校による指導事例や資料等を提供し、各学校の校内研修を支援する。

【目標3 ICT環境の維持と円滑な運用】

 「ICT支援員等の専門的な知識を有する人材が訪問支援を実施した学校の割合」を100%にするとともに、「情報セキュリティ実施基準を整備し、情報の適正な管理と運用に向けた校内研修を実施している学校の割合」100%を維持する。

▼ICT環境の維持・管理・更新

 整備済みとなった校内ネットワーク環境やタブレット端末などの維持・管理を適宜行い、円滑な運用に努める。今後、更新が必要となるタブレット端末や端末管理ツールについては、国や道の動向を踏まえながら、財政負担の平準化を図りつつ、学習に支障がないよう手法等を検討し、計画的な更新に努める。

▼外部人材による学校支援体制の整備

 GIGAスクールサポーターやICT支援員等の専門的な知識を有する人材を配置し、学校のニーズに応じた学校訪問等によって、タブレット端末に関する障害対応や効果的なICT活用の提案、教材等の作成を支援するほか、学生ボランティアの協力を得て、授業中の機器操作などを支援する。また、教委の指導主事がICT支援員等と連携しながらICTを活用した授業づくりを指導するとともに、市ICT運用・活用推進プロジェクトチームが研修資料を作成・提供する。

▼情報セキュリティ対策の徹底

 市では、個人情報の保護やデータ管理、教育現場におけるクラウドサービスの利用が可能となるよう、教育情報セキュリティ対策基準を定めている。各学校でも情報セキュリティ基準の整備・見直しを図り、クラウド上に児童生徒の学習成績や連絡先などの個人情報を保存しないことについて明記するなど、情報管理を徹底する。

 また、情報資産の管理と適正な取り扱いに向け、毎年度、各学校のリーダー教員を対象とした研修会を開催するとともに、各学校において、情報セキュリティポリシー等に関する校内研修を実施する。

【目標4 ICTの活用による教育の質の向上】

 「教育効果を上げるために、コンピューターやインターネットなどを計画的に活用している」「授業で使う教材や校務分掌に必要な資料などを集めたり、保護者・地域との連携に必要な情報を発信したりするためにインターネットなどを活用している」教員の割合を100%にする。

▼校務の効率化による児童生徒と向き合う時間の創出

 市で使用する教科書に対応したドリル、プリントなどの教材が豊富で、個々の児童生徒が自分の学習状況等に応じて学習を進めることが可能なオンライン学習教材を全小・中学校に配信・提供し、教員の教材作成にかかる負担軽減を図るとともに、教員間で各教科等の学習指導案や教材の電子データを共有するなど、授業づくりにおいても、効率化に向けICTを積極的に活用する。

 また、教員の事務負担軽減に向けて、引き続き校務支援ソフトウェアの導入やICT環境整備に努める。

▼家庭や地域との連携・協力に向けた情報発信

 市の取組について保護者向け説明資料を作成・配布するとともに、各学校において、参観日などでの保護者への説明やICTを活用した授業の公開などに取り組む。学校ホームページやメールなどを活用し、家庭・地域への迅速かつ積極的な情報発信に努める。

◆ICTを活用した学習場面・授業例

 一斉学習・個別学習・協働学習の3つの学習場面を中心に、ICTを活用した指導を進める。

▼教員による教材提示を工夫する授業

 大型提示装置や実物投影機を活用し、教科書やプリント、画像・動画などの拡大提示や、タブレット端末に提示。学習内容を視覚的に分かりやすく伝えたり、繰り返し再生したりするなどの工夫を行う。

▽活用例=技術・家庭科

 大型提示装置を活用して、教員が実際に裁縫している手元を映し、縫い方のポイントを説明。実習中は、手本となる動画教材を繰り返し再生するなど、児童生徒が確実に技能を習得できるようにする。

▼個に応じた学習活動を行う授業

 タブレット端末を活用し、デジタル学習教材や学習アプリ等を利用した一人ひとりの習熟の程度や発達の段階などに応じた個別学習を行う。自分のペースで問題に取り組んだり、苦手な分野を重点的に復習したりできるようにする。

▽活用例=算数・数学

 計算ドリルソフトを用いて、児童生徒が計算の技能を身に付けることができるようにする。児童生徒の学習状況を随時把握し、新たな課題を提示するなど適宜助言する。

▼調査活動によって思考を深める授業

 児童生徒がタブレット端末を活用して、教室の内外で情報を収集する場面や、シミュレーションなどのデジタル教材を用いて実験を視聴する場面を設定。

▽活用例=理科

 タブレット端末のカメラ機能を活用して、児童生徒が教室外の観察物の写真や動画を撮影する。通常では難しい実験や観察について、動画コンテンツを活用する。

▼自らの考えを表現したり、制作したりする授業

 児童生徒がタブレット端末を活用し、写真や動画等を用いて資料や作品を制作することや、デジタルデータに自分の考えを記録する。

▽活用例=英語

 インターネットで日本文化について調べ、プレゼンテーションソフトを用いてレポートを制作。大型提示装置やタブレット端末にレポートを投影し、児童生徒がグループ内やクラス全体に分かりやすく発表する。

▼他者との意見交流を通して自らの考えを深める授業

 グループなどでの意見交流の際、タブレット端末を活用し、互いの考えを視覚的に共有させたり、全体での話し合いの場面で、大型提示装置に各グループの考えを提示したりする。他者の考えにふれさせることで話し合いを活発化させることや、自分の考えを広げたり、深めたりする。

▽活用例=社会

 児童生徒がグループ内で個人の考えや調査結果等をタブレット端末で比較し、整理する。各グループの意見や調査結果等を大型提示装置に提示することや、タブレット端末に送信することによってクラス全体で共有する。

▼一人ひとりの教育的ニーズに応じた授業

 特別な支援を必要とする児童生徒がICTを活用することで、学習上または生活上の困難の改善や克服を目指す。

▽活用例=生活単元学習

 児童生徒が季節の行事についてインターネットで調べ、プレゼンテーションソフトを用いてレポートを制作する。学校行事の様子を撮影した画像を用いて、児童生徒が感じたことを発表する。

(市町村 2021-06-09付)

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