全国学力・学習状況調査結果公表受け 競争主義的政策 転換を 道教組・道高教組が見解
(関係団体 2021-09-14付)

 道教組(中村哲也執行委員長)と道高教組(尾張聡中央執行委員長)は8日、全国学力・学習状況調査結果の公表に対する見解を発表した。全国学力・学習状況調査が子どもと学校を競争に追い込み、学校生活にゆがみが生じていると批判。新型コロナウイルス感染症の影響で多忙化する学校現場や知的好奇心を刺激する授業を期待する子どもたちのため、調査中止を求めた。また、学力テストのCBT化によって序列化が進行する可能性を懸念。子どもと教員、保護者に過度のストレスをかける競争主義的な教育政策を根本的に転換するよう求めた。

 概要はつぎのとおり。

【子どもと学校を競わせ、教育を歪める学力テストの中止を~子どもたちの豊かな成長・発達を保障する教育を大切に】

1 コロナ禍の状況でも全国一斉学力テストにこだわる文部科学省・道教委は、子どもたちを全国学テ競争へと追い込み、本来人間的成長の場である学校をゆがめている。

 文科省は8月31日、コロナ禍のため例年よりも遅い5月27日に実施した全国の小学校6年生と中学校3年生を対象に実施した全国学力・学習状況調査(全国学テ)の都道府県・政令指定都市ごとの結果を公表した。

 道教委も同日、全国学テの結果を受け、「すべての教科で全国平均に届いていない状況にあるものの、中学校においては、2教科ともに全国の平均正答率との差が縮まっているなど改善傾向がみられる。一方、小学校においては2教科ともに全国平均正答率との差が広ろがるなどの課題がみられる」との教育長コメントを発表した。

 コロナ感染防止の対応や教育課程の組み直しなどで苦労している学校現場の状況があるのに、お構いなしの全国学テ実施だった。

 そもそも、全国学テを実施する目的は、「全国的な児童生徒の学力や学習状況を把握・分析し、教育施策の成果と課題を検証し、その改善を図る。児童生徒への教育指導の充実や学習状況の改善に役立てる」と道教委も言っているように、互いに競わせることではない。

 道教委は以前から、全国学テの結果が全国平均以上になることに執着し、全道の子ども・教員を全国学テ競争に追い込んできた。この道教委の姿勢は一面的で、偏った学力観のみを根拠にし、子どもや教員ばかりでなく、家庭までも過度な点数競争に巻き込んでいる。

 学校は本来、子どもたちの人間的成長の場であり、豊かな学び合いの場である。全国学テ対策に追われ、生徒の知的好奇心を刺激する楽しい授業、人間的かかわりを紡ぐ、生き生きとした学校生活にゆがみが生じている。

2 コロナ感染防止の対応、長時間過密労働で授業準備の時間が取れない教員のためにも、楽しい授業を受けたい子どもたちのためにも、学力テストの中止を求める

 新型コロナウイルスのデルタ株が出現し、北海道の学校でも子どもたちのコロナ感染が広がりをみせている。多くの学校が学級閉鎖に追い込まれ、オンライン授業の準備・その他の業務が増え、学校現場は困難を抱えている。

 そのような状況があるにもかかわらず、文科省・道教委による全国学テがことしも実施された。この間、全国学テに向けて、全道でチャレンジテストによる反復練習や過去問対策が常態化し、全国学テのための対策が学校現場に負担となっていることも明らかである。

 全日本教職員組合(=全教)が2018年に実施した学力テストアンケートでも「4割を超える学校で、事前の特別な指導を行っている。そのうち、7割を超える学校で、過去問題の指導を行っている」「独自採点・集計・分析など教職員に大きな負担となっている」など、全国学テや自治体独自学テが教育に大きなゆがみをもたらしていることが明らかになった。

 コロナ感染防止やオンライン授業の準備、延期になった学校行事中止・見直しを含め、長時間過密労働で働く教員のためにも、知的好奇心を刺激する楽しい授業を期待する子どもたちのためにも、全国学テの中止を求める。

3 序列化や過度な競争、学力テストの弊害を改め、子どもたちの豊かな成長・発達を保障する教育を大切にする憲法や子どもの権利条約の基本に立ち返ること

 文部科学大臣は、本年度の全国学テ調査結果のコメントの最後に「調査で測定できるのは学力の特定の一部分であること、また、学校における教育活動の一側面であることを踏まえ、序列化や過度な競争が生じないようにするなど教育上の効果や影響に十分配慮を行っていただくようお願いする」と語っている。

 文科大臣が心配するように、全国学テの結果が新聞、その他マスコミで報道され、都道府県・政令市の平均正答率が発表されれば、都道府県の序列化に拍車をかけることになる。県別の学テ競争が始まれば、文科省が「競争が生じないように」と言っても競争は止まるものではない。あとで序列化を批判しても、文科省のポーズにしかみえないのである。

 政府・文科省は、GIGAスクール構想を掲げ、ICT・デジタル技術を通じて、未来を担う創造的な人材育成による生産性向上、地方創生、その先に経済成長を目指すなど、総務省、経済産業省と文科省が一体となった政策を掲げている。

 その関連で、コンピューター使用型学力テスト(CBT)に変更する検討・準備が文科省のワーキンググループで進められている。CBT化が進めば、対策問題の作成、普段のテストにおいてもCBT化が加速し、教育の一側面のみを切り取り、序列化が進むばかりでなく、学ぶ楽しさや課題解決意識の醸成など、日本が世界から大きく取り残されている教育課題がますます遠のくだろう。

 2019年、国連子どもの権利委員会が子どもの権利条約の実施状況についての日本政府の定期報告を審査し、総括所見を発表した。問題点として「あまりにも競争的な制度を含むストレスフルな学校環境から子どもを解放することを目的とする措置を強化すること」など、以前よりも強く社会全体の競争化が指摘され、具体的な改善措置を求める勧告が出されている。

 文科省・道教委は、「子どもたちの豊かな成長・発達を保障する教育」という憲法や子どもの権利条約の基本に立ち返り、子どもと教員、保護者に過度のストレスをかける競争主義的な教育政策を根本的に転換することを求める。

(関係団体 2021-09-14付)

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