端末活用 子の発達応じ 20人以下学級求め運動 ICT化 問題点明らかに(関係団体 2021-09-24付)
中村執行委員長
道教組(中村哲也執行委員長)は11日、第34回中央委員会をオンライン開催した。当面闘争の推進における重点課題に、「20人以下学級実現をはじめとした、ゆきとどいた教育を保障するための条件整備」などを掲げた。また、運動の具体的進め方として、教育のICT化についての問題点を明らかにした上での取組強化、1年単位の変形労働時間制導入に反対する職場世論の形成などを盛り込んだ。
第1号議案「当面闘争の推進」では、端末の導入が急速に進んだことで校内対応や利活用、情報モラル教育などの混乱が学校現場で生じたとし、道教組学習会における意見交換の成果を報告。オンライン学習会などコロナ禍において多くの学びの場を設定したことを確認した。
本年度後半期の重点課題として、①20人以下学級実現をはじめとした、ゆきとどいた教育を保障するための条件整備②子どもたちが安心して学べる学校③組織維持・強化・拡大④子どもが主人公で協力・協働(共同)の学校づくりの前進―など7事項を掲げた。
いじめ・自殺・不登校・児童虐待など子どもと教育の危機の打開、子どもたちが安心して学べる学校と社会を目指すなどの方針を示した。
運動の具体的進め方では、新型コロナウイルス感染症から子どもの命と健康を守り、成長と発達を保障するための教育条件整備の推進、英語専科教員の早期全校配置、国による小・中学校、高校の20人以下学級実現に向けた教育全国署名運動の取組の推進、1年単位の変形労働時間制導入に反対する職場世論の形成などを盛り込んだ。11月6・13・14日にオンライン開催する2021合同教育研究全道集会の成功を目指すとした。
道教組の第34回中央委員会では、中村哲也執行委員長があいさつに立ち、1人1台端末の活用に関して子どもの発達段階に応じた使用・指導が必要とし、心身に及ぼす影響や通信環境に関する経済格差などの課題も踏まえ、議論して運動を進めるよう呼びかけた。
中村執行委員長のあいさつ概要はつぎのとおり。
新型コロナウイルス対応で、かつてないあわただしい日常を強いられているところではないかと思う。その中で、厳しさと対峙しつつ奮闘されている全道の道教組組合員の皆さんに敬意を表する。
さて、新型コロナウイルスパンデミックによる「新しい生活様式」といわれる生活のもとで、子どもたちは2回目の夏を終えた。仲間とふれあうという重要な活動が制限される生活の中で、子どもたちの成長・発達をどう保障するかが私たちに問われている。コロナ禍は、それまで見えづらかった社会のぜい弱性を悲惨な姿で浮き彫りにした。
国連・子ども権利委員会は「新型コロナ感染症(COVID―19)に関する声明」(2020年4月8日)で、コロナ・パンデミックが子どもに及ぼす重大な身体的・情緒的・心理的影響について警告し、子どもたちの権利を保護するよう各国に求めた。
子どもの最善の利益を守るという原則を反映させ、子どもが休息・余暇・レクリエーションなどの権利を享受できることを重視するとともに、条件整備が不十分なもとでオンライン学習を多用すれば、すでに存在している不平等をさらに悪化させる危険性があることを指摘し、子どもたちや教職員の相互交流を大事にするよう求めている。
国立成育医療センターの「コロナ×子どもアンケート」(2021年2月10日)は、中等度以上のうつ症状を示す高校生が3%、「死んだ方がいい、または自分を傷つけようと思ったことがある」が26%にも及ぶとしている。その保護者アンケート(2021年6月3日)では、「子育てについて相談できる公的の場や機会が減った」が72%にものぼり、保護者も孤立している姿が示されている。
コロナ禍で見えた子どもたちの生活と学校のリアルな実態はどうか。長引くコロナ禍で子どもたちの生活は非常に息苦しいものとなっている。常にマスクをして行動することを余儀なくされ、学校でも友だちとじゃれ合ったり、顔を寄せ合って話し合ったり共同で進める学びも遠ざけられ、楽しみな給食も黙々と食べることを強いられ、学校に通う楽しみも学ぶ喜びも新しい生活様式の中で抑えられている。
子どもたちは、我慢に我慢を重ねている。これを目の当たりにした私たち教職員は、子どもたちを伸び伸びと過ごさせることができないことに心を痛めている。休校や学級閉鎖の体験を経て明らかにされた学校の存在意味は、単に授業をするだけではなく、友だちとの遊び、学び合い、ふれあいが心の安定を生み、生き生きと生活することのよりどころであり、子どもの発達にとって大事な居場所であるということ。そうした教育の値打ちが断ち切られ、学校から気持ちが離れていく子どももいた。保護者の中にも感染不安から、やむなく自主休校を選択するケースもみられた。
学校再開後は、授業数確保や学習内容詰め込み、学校行事の変更や縮小・削減などが行われ、学校は授業のみが残ってしまった。ますます、子どもたちを楽しい学校生活とはかけ離れた状況に追い込んでいる。
そんな状況の中、私たちは、いったん立ち止まって本当に子どもたちにとって大切な教育をするための教育課程づくり・学校づくりとは何かを探り、一律休校明けの先生方の言葉から、「こんなに子どもたちのことを考えることはなかった」「子どもたちにとって学校とは」と、本質的な「問い」に向き合った話を聞いた。
「(授業の)遅れをとりもどす」と言われるが、私たち道教組は、「“とりもどす”のではなく、子どもたちの今の姿から」を訴えていきたい。コロナ禍だからこそ、子どもの実態を踏まえた柔軟で自主的な教育課程づくりが求められるだろう。また、それを実現する取組を保護者や地域とともに共同の力を得て進めていくことも求められている。
2つ目に、4月から全国の小・中学校でGIGAスクール構想による1人1台端末配布と利活用が行われている。多くの学校では、機器の設定や教材作成などで大きな混乱を生じている。長引くコロナ禍のもとでオンライン学習やICT教材が必要になる場面が出ることも想定されるが、「“1人1台端末”を与えた以上、何が何でも使え」という押し付けがあることは大問題である。ICT機器については、子どもたちの発達段階に応じた使い方やその指導が必要となる。そうした中で、子どもたちの主体性を大事にした使い方が重要だ。
道教組では、GIGAスクールの学習会をこれまで重ねて行ってきた。その中で、教育ICT化は、現場でのいろいろな混乱が出された。機器の操作の不慣れ、子どもの心身に及ぼす影響、使用するルールの不十分さ、教育内容・指導方法の画一化・通信環境等にかかわる経済的格差など、山積する課題がまだ、十分に議論されないままに推進されている。子どもたちを大切にした在り方を是非、今度も論議し運動を進めよう。
私たちの運動や教育実践も、その根底にある大きな流れは揺らぐものではない。中央委員会での多様な論議から「道教組の本質」が見いだされることを期待して、あいさつとさせていただく。
(関係団体 2021-09-24付)
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