道研 へき地・小規模校教育充実研修 教育の地域格差なくす 遠隔合同授業で講義・協議
(関係団体 2021-09-24付)

 道立教育研究所は10日、これからのへき地・小規模校教育充実研修をオンライン開催した。へき地・小規模校間の遠隔合同授業に関する講義や協議を通して、自校での取組に向けて研鑚を積んだ。

 一人ひとりの子どもの確かな学力の定着を目指して、居住する地域による格差をなくし、学校(学級)規模に応じた教育活動の推進に向け、学校間連携を通じた自校の教育活動の充実と、教員の指導力向上を図ることが目的。道教育大学、道へき地・複式教育研究連盟との共催で実施した。

 へき地・小規模校および複式学級を有する小・中学校の勤務経験が複数校または概ね5年以上の教職員、遠隔合同授業に関心のあるへき地・小規模校の教職員ら約20人が参加した。

 遠隔合同授業に関して、積丹町立野塚小学校の横山政彦校長、幌延町立幌延中学校の佐々木亮教諭が自校の実践を発表した。

 また、道教育大へき地・小規模校教育研究センターの玉井康之センター長、道へき地複式教育研究連盟の温泉敏委員長がトークセッション。同じく道教育大学へき地・小規模校教育研究センターの前田賢次センター員が、遠隔合同授業によって児童間の学びと交流を広げる鹿児島県徳之島の事例を紹介した。

◆新しい授業形態構築を 2氏がトークセッション

 今回、初の試みとして、道教育大学へき地・小規模校教育研究センターの玉井康之センター長、道へき地複式教育研究連盟の温泉敏委員長がトークセッションを行った。へき地・小規模校に関して、①魅力②課題③遠隔合同授業―の3つの観点から意見を交わした。

 魅力に関して、玉井センター長は「探究型学習などの地域を生かした教育活動を行うことができ、子どもたち一人ひとりの発達に合わせて資質・能力の向上を図ることができる」と説いた。

 温泉委員長は「児童生徒の主体性の醸成が期待でき、少人数のため、個別最適な学習を進めることができる」と伝えた。

 課題に関しては、両者ともに「人間関係の固定化」を挙げた。保護者の上下関係が子どもの潜在的なヒエラルキー(階層構造)につながる恐れがあることも原因の一つになる可能性を示した。教員が子どもへの平等性を保ち、地域住民が子どもたちを把握することの大切さを伝えた。

 遠隔合同授業について、玉井センター長がICT機器の利活用をまとめたデータを示した。特に、へき地・小規模校では電子黒板の活用が多く、1人1台端末で児童生徒が作成したワークシートなどを1つの画面で示すことができる利点を挙げた。

 温泉委員長は写真などから道内の事例を説明。「新しい授業形態の構築を目指し、試してほしい」と呼びかけた。

◆遠隔で近隣校と合同授業 積丹町野塚小・幌延中 実践発表

 積丹町立野塚小学校と幌延町立幌延中学校(小野篤夫校長)は、遠隔システムを活用し、近隣のへき地・小規模校と合同で授業を行う機会を設けている。実践発表では、両校の取組を紹介した。

 野塚小は、比較的近隣の小規模校3校と年3回程度、合同で遠隔授業を展開している。児童数が少ないため、校内だけでは対話的な学習活動の広がりが生まれにくく、コミュニケーション能力の向上に向けても課題があった。

 平成30年に他校との遠隔合同授業を計画し、翌年から実践。学習進度に支障の少ない道徳授業から取組を開始した。やがて他教科の単元終末部から段階的に試行。国語や社会の発表場面、クラブ活動の計画場面などで、児童間の交流を図った。

 開始当初は、学習進度をそろえることが課題に挙がったが、単元のリーダーを決め、教職員間で活動案について話し合うことで解決に導いた。また、GIGAスクール構想によって遠隔合同授業に向けた環境がより整ったという。

 幌延中では、近隣校の免許外教科担任を支援する目的で遠隔合同授業を開始。平成30年度から社会科の全単位時間で行い、英語や道徳でも実施している。

 免許外教科担任の負担軽減に加え、町内すべての生徒に専門性の高い授業を行うことができ、生徒間の協働的な学習にもつながった。

 今後の課題としては、「機器の固定化や無線化によって準備の簡素化を図ること」「日課の違い等による時間割と進度の調整」が上がった。

 発表のあと、自校に取り入れ、質を高めるための要点をグループに分かれて協議した。

(関係団体 2021-09-24付)

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