配置計画 学校と地域が混乱 道独自に少人数学級を 道高教組・道教組が声明(関係団体 2021-09-21付)
道高教組(尾張聡中央執行委員長)と道教組(中村哲也執行委員長)は10日、公立高校配置計画および公立特別支援学校配置計画に対し声明を発表した。短期的な生徒数の増減に対する学級数の増減が学校と地域に混乱をもたらし、教職員の過重労働を深刻化させると批判。高校における道独自の少人数学級の導入、特別支援学校における学校の狭あい化・過密化解消のための計画の策定を求めた。
声明の概要はつぎのとおり。
道教委は9月6日、公立高校配置計画(2022~24年度、以下=高校配置計画)と2022年度の公立特別支援学校配置計画(以下=特別支援学校配置計画)を発表した。
▼留辺蘂高校募集停止に象徴される数の論理に基づく配置計画の撤回を!
これからの高校づくりに関する指針に基づく高校配置計画の基本となっているのは、40人学級と1学年4~8学級という望ましい学校規模、そして、活力と魅力のある高校づくりである。
しかし、コロナ禍でデルタ株が広がる今、学校での感染が拡大し、望ましい学校規模とする学校ほど学級閉鎖や学年閉鎖があとを絶たず、感染者や出席停止になる生徒への対応が複雑化している。感染症対策においては、きめ細かで臨機応変な対応が可能な小規模校や少人数学級の優位性は明らかである。
道教委は「魅力ある学校=選ばれる学校」と定義し、40人以上の欠員が生じたことなどを理由に学級減や統廃合を進めてきた。それならば、なぜ、魅力ある高校として指針に掲げられている総合学科の森高校や留辺蘂高校を学級減や募集停止にしなければならないのか。その根拠はあくまで生徒の数であり、魅力うんぬんの問題ではないことは明白である。
2回の地域別検討協議会では、指針の見直しを求める悲鳴にも似た声が、多くの自治体や保護者から寄せられた。特に学級定員の引き下げを求める声は強かったが、道教委は「現段階では難しい」と国への責任転嫁に終始している。
2023年度の留辺蘂高校募集停止に関しては、留辺蘂高校PTA会長から募集停止による通学費などの負担増が大きいことや、そもそも生徒数減少が見込まれる状況ではないことが、北見市長からは、まさに道教委が目指す魅力化・特色づくりに学校を挙げて努力していることが指摘されていた。
選ばれなかった学校を魅力がない学校とし、学級減や統廃合を進めることは、釧路市長が指摘していたように、教育に財政問題を持ち込むものであり、教育と北海道の未来にとって暗いものでしかない。
道教委は、これからの高校づくりに関する指針に基づく高校配置計画を直ちに撤回するとともに、すべての子どもにゆきとどいた教育を保障する配置計画を策定すべきである。
▼現場を混乱させる機械的な学級増減、年度当初の学級減はやめよ
道教委は「中学生の進路選択に十分な検討時間を確保するため3年間の計画を策定する」としていながら、年度当初に学級減とした24校(札幌北定時制含む)のうち11校12学級を削減することとした。
また、生徒数が多く競争が激しい石狩学区で機械的な学級増減の矛盾は際立っている。4校で学級増とする一方、年度当初に学級減とした5校の学級数を戻すことなく、同一学区内で最大8学級から最小は3学級と、学級数の極端な格差が生じている。道教委の望ましい規模よりも少ない3学級にまで減らすことは、学校統廃合を模索しているのではという疑念が拭えない。
3年間を見通したはずの計画が変更となった学校では、当初予定していた教育課程の変更を余儀なくされ、受験生・保護者への説明や進路選択にも大きな影響を及ぼすことが考えられる。ただでさえ長時間過密労働がまん延している上に、コロナ対応が加わっている学校現場の状況において、短期的な生徒数の増減に対し、毎年、機械的に学級数を増減させることは、学校と地域に混乱をもたらし、教職員の過重労働を深刻にするだけである。
少なくとも道教委は、次年度に学級増が必要だと予想できるのであれば、せめて1年間は学級数を維持して様子をみるなど、単なる数合わせではない対応を行うべきである。
▼破綻した“特色づくり”の反省・総括なくして、まともな配置計画はつくれない
道教委はこれまで、総合学科・単位制・フィールド制などの特色づくりを学校に押し付け、学校存続をかけて競わせてきた。とりわけ、総合学科を特色づくりの目玉とし、「小規模校となった場合でも、民間講師を活用するなどして教育活動の充実を図る」としてきたが、留辺蘂高校の募集停止や森高校の11学級への学級減は、その特色づくり路線の破綻を如実に示すものである。
また、23年度の名寄市内高校の再編に当たり、道教委が06年の高校教育に関する指針(旧指針)で特色づくりの目玉の一つとして掲げた産業キャンパスは、あっさり消去された。地元の要望がなかったことが理由であるが、そもそも離れた2つの校地をバス等で行き来するという産業キャンパス構想に無理がなかったのかなど、検証すべき課題は多く、このことからも特色づくりの破綻は明らかである。
特色づくりについてのきちんとした反省・総括もないまま、新たな特色を性懲りもなく導入するならば、同じ失敗を繰り返すことになりかねず、そのしわ寄せは生徒や教職員が受けることになる。
それにもかかわらず、道教委は、22年度から「基礎的・基本的な知識・技能の確実な定着や社会的・職業的自立に向け必要な能力や態度の育成に重点を置く学校」を新たな特色と位置付け、「アンビシャススクール」と総称するとした。しかし、その新たな特色は、すでに多くの高校で学校づくりの目標としているものであり、これを特色と呼ぶこと自体が、道教委の特色づくりの限界を示していると言わなければならない。
あえて指定したアンビシャススクールであるからには、現場からの定員増などの要求にしっかりと向き合うことを強く求めるものである。
道教委は、特色づくりの押し付けをやめ、地域住民や学校関係者の意見を聞きながら、少人数学級実現などを盛り込んだ新たな指針の策定に向かうべきである。
◆特別支援 過密解消求め
▼特別支援学校設置基準の策定を踏まえ、小中学部を含めた配置計画の策定を
21年度学校基本調査の速報値によると、全国的な特別支援学校の在籍者数は、04年以降増加の一途をたどり、17年連続で過去最多を更新している。
北海道においても増加傾向は変わらず、とりわけ、道内の知的障がい特別支援学校の在籍者数は、08年に3233人であったのが、20年には5010人となり、約1・5倍に増加している。
その間、知的障がい特別支援学校数も36校から51校へと増えているものの、その多くが高等部単置校の新設であり、小中学部が併設されている知的障がい特別支援学校の新設は全く追いついておらず、子どもたちが既存施設に詰め込まれている状況である。
札幌のみならず、全道的に大規模かつ慢性的な教室不足となった学校が存在しており、「音楽室を普通教室に転用」「作業室をパーテションで区切り2教室に」など、なんとかやりくりしている実態がある。
このような状況を改善するためには、高等部のみに限定された現在の配置計画ではなく、小中学部も含めた特別支援学校の過大・過密を解消するための配置計画を示すことが必要である。
私たちはこれまで、特別支援学校の設置基準の策定を求める署名や提言などの運動に、全国の保護者や教職員と共同で取り組んできた。多くの関係団体等のあと押しもあり、ようやく国・文部科学省が特別支援学校の劣悪な教育条件を認め、不十分ながらも学校設置基準を策定しようとしている。
しかし、道教委の計画案では24年度までの定員の確保は「既設校で対応」、「道央圏については、さらに数年後、出願者の増加が見込まれるため、既存施設等の活用による対応を検討する必要がある」とするなど、従来の方針の枠内にとどまっている。
さらなる増加の見通しがあるならば、道教委は「既存施設へいかに子どもを詰め込むか」というこれまでの発想を大転換し、本来あるべき単独校舎による新増設の計画を示すべきである。
北海道の未来のため、道独自に少人数学級を導入し、教育の機会均等を実現する施策へ我々は少人数学級に基づく高校配置計画の策定を求め、旧指針(素案)の段階から一貫して道教委の指針の誤りを指摘し続けてきたとおり、すでに指針の破綻は明らかである
広域分散型の北海道こそ、積極的に少人数学級を導入すべきであることは疑いない。少人数学級化を求める教育研究者有志の会の呼びかけ人の一人として、少人数学級を求める署名活動を展開した東京大学の本田由紀氏は、少人数学級は教育格差を解消し、学力を高める効果があることや、自己効力感が増し人間関係が良くなること、教職員の過重労働の解消にもつながること、感染症予防の観点からも学級の少人数化は重要であることを、様々なデータから明らかにしている。
私たちは、教育予算の増額、国による少人数学級の実現、教育費無償化、特別支援学校の狭あい化・過大過密化の解消などを求める教育全国署名に全力で取り組むとともに、ゆきとどいた教育を求める共同を一層広げ、大きく運動を進めていく決意である。
(関係団体 2021-09-21付)
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