道小 3年度広域人事調査と考察 参加教諭 多くが成長 適切な異動へ人材育成等必要(関係団体 2021-10-07付)
道小学校長会(吉田信興会長)のまとめた令和3年度広域人事に関する調査の集計と考察によると、2年経過者の全員が授業力向上や教育課程改善への関与などに「よい変化があった」と回答していることが分かった。道小は、制度に参加した多くの教諭が成長し、元の管内で成果を発揮していると分析。一方、適切な人事異動が実現しなかった管内もあるとし、制度の趣旨や目的を理解した使命感の高い教職員の人選と人材育成の必要性を示した。概要はつぎのとおり。
【集計】
▼3年目終了者本人
「学力向上への関与」「豊かな人間性育成への関与」「授業力の向上」「職場の仲間とのかかわり」を中心に、広域人事制度に参加してよかったという回答が多い。対象者が、異動した地域で多くのことを学び、教師としての成長を感じていると思われる。
一方、「保護者・地域とのかかわり」「経済的負担」が大変だったとの回答が例年どおり多い。また、「自身の授業力向上」「豊かな人間性や教育課程への関与」など、異動先での教育環境に困りを感じ、思うように力を発揮できなかったと振り返っている回答もあることから、対象者に対するサポート体制が必要である。
サポート体制(実務担当者の訪問面談や電話によるサポート)については、回答をみると、ここ数年でさらに充実してきていることが分かる。こうしたサポートが対象者の精神的な支えとなっていると推察される。
▼3年目終了時の勤務校校長、元いた管内への異動先校長
異動元校長の多く(84%)が「大いに貢献した・貢献した・貢献した部分がある」と回答しており、学校への貢献を感じていることが分かる。「学力の向上」「授業力の向上」「職場の仲間とのかかわり」など、他管内との人事交流によって教育活動に対する見識を深め、授業や校務改善の活性化に影響を与えたと考えられる。
実務担当者による意向調査の有無については、異動元校長の多く(83%)が「あった」と回答しているのに対して、異動先校長では約4割となっている。対象者が元の管内に戻る際、3年間で得た知識や経験を異動先の学校や管内でどのように還元していくかを明らかにしておく必要があると考えられる。
▼1年目対象者本人
対象者全員が自らの意思でこの制度に参加している。制度の説明については、校長からであり、制度について「理解している」「概ね理解している」と回答している。
対象者の異動先の規模・場所などの希望はかなえられている。困りについては、準備段階では「異動までの期間」と「引越しに伴う費用や住居探し」に関することが多い。また、着任してからも、休日を挟んだため、始業式までの準備期間が短かったという意見も散見された。
▼1年目赴任校校長、元の管内の勤務校校長
人事制度の趣旨についての周知は、異動先・異動元の各校長会への説明会、意見交換会などが各管内で行われており、この制度が確実に浸透してきていることが分かる。
異動希望者受け入れに当たっては、困難に感じることが「なかった」とすべての学校が回答している。しかし、一部の管内で、戻り人事対象者の役割が明確でなかったり、人材を送り出した際の人的な補完が十分でなかったりなど、制度の運用面について指摘があった。
▼終了後2年経過者本人
本年度も、対象者全員が広域人事制度を経験して「よい変化があった」と回答している。
「自身の授業力の向上」「授業力向上へ関与」「教育課程改善への関与」「学力向上への関与」など、教師としての意識の変化を感じるとともに、学校の教育活動をリードする中心的な役割を担っていると思われる。
また、他の地域の教育環境(学校規模や業務の取組み方)の違いを知り、教育に対する考え方が広がったり、深まったりしたという実感をもつことができたようだ。
▼終了後2年経過者本人・その勤務校校長
対象者が、「授業力向上への関与」「教育課程改善への関与」「体力向上への関与」などを中心に、異動先の学校で現在も活躍している様子がうかがえる。リーダー的存在として周囲によい影響を与えているようだ。
一方、管内によっては、広域人事制度の趣旨に沿った適切な人事異動が実現しなかったとの報告が挙がっている。本人・学校にとってプラスとなるような人選・人事の在り方について、各管内の課題を解決していく必要がある。
◆学校運営活性化に役割
【考察】
広域人事制度に参加した多くの教諭は、教育者としての意識の変化や成長を実感し、元の管内に戻ってその成果を発揮している。授業力向上や教育課程改善への関与など、職場によい刺激を与え、学校運営を活性化する上で大きな役割を担っている。
校長は、対象者の3年間の実績を勘案し、元の管内に戻る際に力を発揮しやすい環境や役割を用意するなど配慮していきたい。
広域人事制度については、教育局や教育委員会によって適時管理職への説明が行われ、広く理解されるようになった。
今後は、さらに一般の教諭にも、制度のよさや魅力について広めていきたい。
広域人事を終え3年目を迎える教諭全員が、アンケートの中で「よい変化があった」と回答している。
一方で、管内によっては、広域人事で得た貴重な経験や知識をどのように元の管内や学校に還元していくとよいか、十分に検討されていないとの報告がある。
広域人事制度を経験した教諭を講師にした研修会など、還元できる機会があるとよいのではないか。
対象者が、「授業力向上への関与」「教育課程改善への関与」「体力向上への関与」などを中心に、異動先の学校で現在も活躍している様子がうかがえる。リーダー的存在として周囲によい影響を与えているようだ。
一方、管内によっては、広域人事制度の趣旨に沿った適切な人事異動が実現しなかったとの報告が挙がっている。本人・学校にとってプラスとなるような人選・人事の在り方について、各管内の課題を解決していく必要がある。
異動対象者の困りについて、経済的負担と着任までの準備期間の慌ただしさを訴える声が上がっている。
精神的な不安については、近年、教育局や教育委員会の担当者による電話や面談などの継続的な支援や話し合いが丁寧に行われており、異動に際しての不安はほとんどなくなっている。
▼課題・改善策
▽対象者の選考
広域人事制度の趣旨や目的を理解した使命感の高い教職員の人選と人材の育成を図ることが重要である。
異動(行く・戻る)に当たっての処遇、役割などについて、事前の丁寧な説明が必要である。教育局、教育委員会による3年間を通した定期的なサポート体制の充実が求められる。
▽情報の共有に関して(対象者や対象学校)
異動先と異動元の両方の学校に対して、先行した内示をすることによって、対象者の情報をいち早く共有することができる。また、赴任先の地域の様子や住宅のあっせんなど多くの情報があると、対象者の生活面での不安が解消される。
▽制度の運用に関して
異動対象者は、異動元の学校の貴重な人材であり、学校経営上、中核的な存在である場合が多い。異動させた場合の人的な補償を確実に行う必要がある。
広域人事制度の対象地域の見直しや優遇措置などを明確にすることで、より多くの希望者を募ることができると期待される。
異動者に対する精神的・経済的な負担への配慮(軽減)を行う必要がある。
広域人事経験者による一般教諭向けの研修会などを開催することで、この制度のよさがより具体性をもって広がっていくと考える。
(関係団体 2021-10-07付)
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