期待される存在でありたい 会員一丸 意義ある取組着実に 温泉 敏 氏 北海道へき地・複式教育研究連盟委員長(関係団体 2021-10-06付)
北海道へき地・複式教育研究連盟・温泉敏委員長
―全国、本道におけるへき地・複式教育の現状や課題について
ここ数年、統廃合や義務教育学校への動きがあり、加盟校が急激に減少している。このため、組織、運営等に苦慮する地区が出てきていることが、一番の課題だ。
また、学校数の減少に伴い、へき地・複式校に勤務する教員も少なくなっている。これによって、複式授業の指導方法や技術等が継承されなくなる懸念がある。併せて、はじめて複式授業を経験する教員へのサポートも難しくなっている。
課題解決への一つの方策として、全国へき地教育研究連盟(=全へき連)から、複式経験の浅い教員を対象に複式指導の本やDVDを8月に発行した。全へき連図書編纂委員会が毎年発行している実践事例集とともに、活用していただきたい。
また、へき地教育振興法を知らない自治体職員、教職員が多いことも課題だ。かくいう私も、へき地・複式教育にかかわるまでまったく知らなかった。へき地教育振興法には、研修はもちろん、教育の内容を充実するために必要な措置を講じることなど、大切なことが書かれている。ぜひ、活用していただきたい。
このほか、都市部などで生活の利便性に慣れた学生が教員として採用されることがほとんどであるため、へき地での生活環境の違いに慣れるまで時間がかかるという課題がある。
―全道大会を振り返って
ことしの全道大会は第70回の記念大会であり、文部科学省の方に講師をお願いしていたが、新型コロナウイルス感染状況から実施を断念した。
全国大会(宮崎大会)も第70回の記念大会だった。開催について文科省、実行委員会、全へき連と検討を重ね、授業のライブ配信を行うこととした。
全道大会は、宮崎大会の開催方法と同様に実施することとし、全へき連の約4分の1を占める会員数を有する本道はそのリハーサルという位置付けを担った。
授業のライブ配信に踏み切ったのは、授業会場に参観者が入れないこと以外にも理由がある。
へき地教育振興法には、「へき地校に勤務する教員の研修に十分な機会を与えるように措置するとともに、研修旅費その他の研修に関し必要な経費の確保に努めなければならない」と書かれており、これによって、多くの市町村から援助を受けることができている。
しかし、近年は様々な理由から研修を受けることができない状況にある。そこで、研修の機会を保障するための一つの方策として、GIGAスクール構想を具体化として授業のライブ配信を行った。
授業のライブ配信に加え、諸事情でライブ配信を見逃した方へ期間限定の「見逃し配信」、ブレイクアウトルームを使ったリモートでの分散会を行うなど、研究大会としてはおそらく初めての試みだったと思う。失敗しても実施する価値はあったのではないか。大会実行委員が一丸となって取り組み、研究推進委員にしっかりと対応していただいたことで、大会は成功したと感じている。
大切なことは、各事業が会員にとって意義あるものとなるよう進めていくことだと考えている。
―へき地・複式教育における今後の期待や展望
今後、ICTを活用した授業実践の蓄積と広がり、同時により良い授業を目指して実践の交流や検討が進むことを期待している。少人数だからこそ実践可能なこと、メリットがたくさんある。
過日、士別市で行われた道教育大学旭川校教職大学院の水上丈実教授による特別授業において、全へき連と北海道教育大学との連携事業の一つとして、新たな授業モデルが示された。後日、理論と実践のツーウェイによる研究成果が発表されることを期待している。
ただ、授業の基本は対面であり、ICTは学習に効果的に活用するものであることを忘れずにいたい。子どもの動き、表情、つぶやき、雰囲気などは、画面からではとらえきれないと考える。
また、教師を目指す若者が少なくなっている中で、へき地・小規模校に実習に行った学生は受験率、採用率が高いと聞いている。「草の根教育実習システム」が教師志望を増やすための一つの手段であり、へき地・複式・小規模校が担う役割の大きさにあらためて気を引き締めるとともに、期待に応えられる存在でありたいと思う。
おんせん・さとし
昭和61年道教育大学旭川分校卒。平成29年美瑛町立美馬牛小学校長、31年現職の剣淵町立剣淵小学校長。道へき地・複式教育研究連盟総務部長、事務局長を経て本年度から委員長を務めるとともに、全国へき地教育連盟研究部長に。上川へき地・複式教育研究連盟委員長として3年目を迎えた。
昭和38年6月10日生まれ、富良野市出身。58歳。
(関係団体 2021-10-06付)
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