第７３回全国造形教育研究大会北海道大会第７０回全道造形教育研究大会札幌大会　分科会概要⑦中学校

（札幌市 2021-10-19付）

【研究概要】

▼研究テーマ＝抽象表現によるイメージの広がりから「もっと！」を引き出す～「未来に向かう自分～抽象的に表現しよう」

▼発表者＝伊藤彩乃教諭（札幌市立真駒内中学校）

　抽象表現に親しみ、形や色彩そのものがもつイメージを豊かに膨らませながら自己の心情を主体的に表現する（１年生）。

視点①「もっと！」を生み出す教材化

▼扱いやすい素材

　水彩絵の具や紙粘土といった既習を生かせる素材を用いる。

▼新たな知識

　抽象表現に出会いその面白さを味わうことで、形や色彩に主体的にかかわろうとする態度を引き出す。

▼生活とのかかわり

　自己の内面から主題を生み出したり他者の作品のよさを味わったりする中で、日常生活と美術のかかわりを構築し３年間の学習につなげられるようにする。

【評価規準】

▼知識および技能

〈知〉

▽抽象表現を理解し、形や色彩がもつイメージによる表現の面白さを理解している

〈技〉

▽主題に合わせて、粘土の特徴を生かしたり、道具の使い方を工夫したりして、彫刻に表している

▼思考力・判断力・表現力等

〈発〉

▽自己の内面をみつめて主題を生み出し、形や色彩のイメージを膨らませながら、表し方を考えている

〈鑑〉

▽造形的なよさや美しさ、表現の意図と工夫について想像力豊かに感じ取り、見方や感じ方を広げている

▼主体的に学習に取り組む態度

〈態表〉

▽美術と自分の生活との関係を考え、形や色彩のイメージを膨らませることに表現活動の喜びを感じて、楽しく学習活動に取り組もうとしている

〈態鑑〉

▽造形的なよさや美しさ、表現の意図と工夫について感じ取る活動に、楽しく取り組もうとしている

【活動構成】

「この子」

▽抽象表現を理解し面白さを見つけて取り組む様子

　「もっとやってみたい！」。

▽自己の内面に向き合い彫刻表現に向けて気持ちを高める様子

　「この気持ちを表現してみたい」「こんな形はどうだろう」。

▽粘土での造形を楽しみながら、主題の表現に迫ろうとする様子

　「面白い表現を思いついた！」「イメージした形、色彩に近づけたい」。

▽自分と他者の作品のよさを味わい、造形活動の喜びを感じる様子

　「イメージがこんなふうに形になった」「この表現面白い！」。

視点②「もっと！」が連続する活動構成

▼１・２時間目〈知・技〉「抽象表現を理解しよう・抽象的に表現しよう」

▽水彩絵の具の抽象絵画に挑戦し、想像したことを形や色彩のイメージにつなげられるようにする

▼３時間目〈発・鑑〉「表したいことをイメージしてみよう」

▽「未来に向かう自分」を共通のテーマとして、自分が頑張っていることやそのときの気持ちを思い起こしながら主題を生み出し、造形的なイメージにつなげて構想を練る

▼４・５時間目〈技・鑑〉「イメージに合わせて形や色彩を工夫しよう」

▽粘土の感触に親しみながら素材の特徴をつかみ工夫して表現する

▽新たに湧き上がってくるイメージを大切にしながら主題の表現に生かす

▼６・７時間目〈鑑・態鑑〉「制作のまとめ～作品のよさを見つけ味わおう」

▽自分の制作過程や作品のよさをまとめる

▽他者の作品のよさを味わったり、意図を想像したりして鑑賞する

視点③「もっと！」をつなげるための自他の変容をとらえる振り返り

▼鑑賞の交流

▽鑑賞の発表場面では“作者はどう考えたか”と“他者からどう見えたか”を互いに交流できるようにする。発言を引用しながら教師が「表したいことと作品の表現の工夫の関連」に評価を加え、新たな視点を獲得できるように働きかける

視点④「もっと！」を高めるための学習評価の工夫

【実践を振り返って】

▼抽象表現の面白さを味わい、形や色彩そのもののイメージに意味をもたせながら、主題の表現に主体的に取り組む姿があった

▼主題の表現にとどまらず、作品の美しさやよさを考えながら活動できる生徒が増えるような働きかけを考えたい

(札幌市 2021-10-19付)