未来切り拓く数学 探究 北数教釧路大会 中学校部会
(関係団体 2021-12-06付)

北数教全道大会概要
教職員のほか、大学生など約170人が参加

 【釧路発】道算数数学教育会(=北数教、相馬一彦会長)は11月19・20日、第76回北海道算数数学教育研究大会・釧路大会の中学校部会を開いた。10月下旬に開いた小学校部会・高校部会と同様、大会初のオンライン開催。道内外の教職員・大学生など約170人が参加し、未来社会を切り拓く力を育む数学教育の在り方を探究した。

 前年度の札幌大会は、新型コロナウイルス感染症の拡大に伴い中止。本年度はオンラインでの開催となった。釧路での大会開催は、平成13年以来20年ぶり6回目。

 研究主題は「未来社会を切り拓く力を育む算数・数学教育の探究~主体的・対話的で深い学びの実践を通して」。特設授業動画は11月12~18日に限定配信され、参加者は大会前日までに視聴した。

 大会は2日間日程で、19日には開会式に引き続き、特設授業分科会を行った。

 開会式では、相馬会長が札幌からリモートであいさつ。大会が教職員それぞれの授業力向上や研究の交流になることを期待した。

 水上俊司釧路大会運営委員長(釧路市立北中学校長)は、開催に向けて準備・運営等に携わった多くの関係者に謝意を示した上で、「研究大会の成果が生徒の学ぶ力を高め、楽しく学びが深められる授業構築につながれば」と今後の授業改善に期待を寄せた。

 20日は、部会交流会・総会のあと講習会。国立教育政策研究所の水谷尚人教育課程調査官が「学びをつなげる力を育む数学教育の探究~数学的活動のさらなる充実を目指した授業デザインの実践研究」と題して講話した。

 特設授業動画における授業者はつぎのとおり。

▽大内拓哉教諭(釧路市春採中)=1年「比例と反比例」

▽及川知洋教諭(釧路市景雲中)=1年「平面図形」

▽下山智之教諭(釧路市大楽毛中)=2年「データの分析」

▽松永悠佑教諭(釧路市桜が丘中)=2年「データの分析」

▽藤村弥的教諭(釧路市大楽毛中)=3年「相似な図形」

◆箱ひげ図で分布傾向考察 特設授業分科会 2年 データの分析

 19日の特設授業分科会はⅠ部とⅡ部に分けて開催した。Ⅰ部は1年「比例と反比例」と1年「平面図形」、Ⅱ部は2年「データの分析」と3年「相似な図形」に分かれて協議。参加者は、事前に視聴した授業動画をもとに、授業者・助言者などを交えてオンラインで研究協議を行った。

 このうち、Ⅱ部の下山智之教諭(釧路市立大楽毛中)が指導した2年「データの分析」では、学習指導要領に新しく設定された学習内容「箱ひげ図」を中心に、自ら考え判断する力を、どのように身に付けるかなどについて意見が交わされた。

 公開した授業は、6時間扱いの1時間目。本時の目標を「データの分布の傾向を箱ひげ図やヒストグラムを用いて、考察することを通して、それぞれのよさを見いだすことができる」と設定した。

 スキージャンプの映像を視聴したあと「選手8人(A~H)の飛距離のデータから、団体戦メンバー4人には誰を選ぶか」という本時の問題を確認し、ヒストグラムと箱ひげ図を用いて分布傾向を考察。上位3人までは選出できるが、4人目の選出で意見が割れたため「E選手とF選手のどちらを選ぶかを、データの分布からどう判断すればよいか」という本時の課題を示した。

 2選手のデータの分析から、箱ひげ図はデータ分布を簡潔に比べられること、ヒストグラムはより詳しく分布を確認できることに気づき、2つを組み合わせることで、データの分布をより詳しくみることができることを確認した。

 研究協議では「今回のデータは実際のデータか」という質問に対し、下山教諭が生徒の考えを生かし、話し合いの必要性を高めるため、意図的にデータを調整したと説明。参加者からは「箱ひげ図やヒストグラム、データをそれぞれ戦略的に提示する工夫が見事だった。生徒自らが考える場面が多く、生徒主役の授業だった」という声が挙がった。

 助言した道教育大学旭川校の樺沢公一講師は「経験の交換・交流」「専門的研究」の両面から意義深い実践とした上で、「意図的な発問の連続が授業の中にスムーズに練り込まれていた。必然性や必要感が感じられる発問だった」と評価した。

 また、教師の働きかけや問い返しなどの実践から、今後も考えることが楽しい数学の授業が展開されることに期待を寄せた。

◆学習内容実感し自律を 国研・水谷教育課程調査官講話

 20日の講習会では、国立教育政策研究所の水谷尚人教育課程調査官が講話した。「〝学びをつなげる力〟を育む数学教育の探究~数学的活動のさらなる充実を目指した授業デザインの実践研究」と題して、これからの教育や将来必要とする力を見据えた授業構築などを説いた。

 水谷教育課程調査官は、はじめに中学校部会の研究主題「学びをつなげる力を育む数学教育の探究」に言及。学びをつなげる目的は、子どもの将来の学びにつなげることであるとし、問題発見・解決の過程において見方・考え方を働かせることができる授業構築が重要とした。

 日本の数学教育の現状について、「平均点は高いが楽しいと感じる生徒は少ない」と指摘。これからの教育には、まだ利用されていない機会を見つけることや異なる考え方をもった人々と協働することなどが不可欠な能力となることを示唆した。

 また、OECD「能力の定義と解釈」(DeSeCo)プロジェクトにふれ、キーとなるコンピテンシーの核心として「思慮深さ(反省心)」が挙げられていることを紹介。「日本の子どもは、計算で出した答えをそのまま答えとして解いて、答えを吟味する経験が少ないのでは」と指摘し、日常の子どもたちの様子を振り返る機会を促した。

 令和の日本型学校教育の構築については、将来、様々な問題に直面した際、解決方法の一つとして数学的な見方・考え方を働かせるという経験が大切になってくることを強調。生徒が「考えることが楽しい」「もっと学びたい・調べたい・追究したい」という意識をもてるようにすることが、数学教師に求められていると訴えた。

 児童生徒が将来必要とする力を身に付けるための授業構築が重要であることをあらためて強調し、習ったことを活用する機会や学習内容の価値を実感し、最終的には「自律」できるようにすることを求めた。

 最後に、すべての教職員がカリキュラム・マネジメントの必要性を理解し、日々の授業でも教育課程全体の中での位置づけを意識して取り組むよう呼びかけた。

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北数教全道大会授業分科会
2年生の授業を公開した下山教諭

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