文科省等 ネット安全全国フォーラム 受発信者双方へ教育を 誹謗中傷の実例から対策学ぶ(国 2022-03-07付)
文部科学省と(株)メディア開発綜研は2月22日、オンラインで3年度ネット安全安心全国推進フォーラム「誹謗中傷の実例から学ぶ子供たちの情報発信の実態と対策」を開いた。国際大学グローバル・コミュニケーション・センター(GLOCOM)の山口真一准教授が基調講演し、ネット炎上の仕組みを解説。発信者・受信者双方への教育が必要と指摘し「ネットの意見は世論そのものではなく、過度に委縮しないことが大切」「正義感で書き込んでいるつもりでも、訴えられるリスクがあることを含め啓発を」などと述べた。
「ネット炎上」という言葉が一般的になり、人命が失われるなど、状況は悪化の一途をたどっている。
フォーラムは、こうした状況の中、大人が子どもたちのために何ができるかを実例を踏まえ考えていこうというもの。
はじめに文科省総合教育政策局男女共同参画共生社会学習・安全課の石塚哲朗課長があいさつ。青少年のネット利用の低年齢化・長時間化が進み、適切にネットを利用するための啓発が必要なことを述べ「児童生徒に情報モラルを身に付けさせることが重要であり、そのことは学習指導要領でもうたっている」と、学校現場における取組を期待した。
続いて、山口准教授が基調講演。「現代はネット、SNSが欠かせなくなった人類総メディア時代と言える」とし、特徴として「誰もが世界に発信することが可能」なことを挙げた。
また、頻発するデジタル暴力、ネット炎上、誹謗中傷について、2020年には炎上案件は1415件だったものが、21年には1700件を超え、「コロナ禍で炎上が増え、他人を許さない不寛容な社会が進んでいる」と述べた。
また、炎上案件には、1件に対し何十回も一人の人間が書き込んだり、アカウントを変えて同じ人間が書き込んだりしているケースが多いことを説明。
「なぜ書き込むのか」と投げかけ、ネットリンチについて「誰かを攻撃したいという自分の気持ちに正義感の皮を被せて自分を正当化している」と説明。そのことから「ネットで攻撃されても過度に委縮すべきではない」「ネットの意見は世論そのものではない」と訴えた。
また、炎上のメカニズムとメディアの関係について説明。単なるネット上の書き込みには炎上する力はないが、それをまとめサイトが拡散することで急激に広がり、それをマスメディアが取り上げることで大規模な炎上になると伝えた。
そして「ごく普通の一般人の行動をテレビが取り上げ、ネット炎上を広げてしまう。それをSNSが取り上げ、さらに炎上が雪だるま式に広がっていく」仕組みを解説し「はじめはたった数人程度のごく少数の批判をメディアが取り上げ、炎上だとあおる。今の炎上の9割はメディアが取り上げたことで大規模化している」と述べた。
また、ネットいじめについて「リアルないじめは学校を離れれば逃れられるが、ネットいじめは日時や場所を問わず、いつどこにいてもいじめられ続ける」と、その深刻さを強調。被害者に寄り添う法律の必要性を訴えるとともに「受信者・発信者双方に教育が必要」と指摘した。
発信側には「誹謗中傷してはいけないこと、正義感で書き込んでいるつもりになっていても、人を非難すれば訴えられるリスクがあることを含め啓発が大切」と。受信側には「ネット上ではフェイクニュースも多く、うのみにしないこと、炎上は世論そのものではないということを啓発するのがとても重要」と述べた。
最後に、ネット社会の今後について「これからも様々な問題が起こると思うが、未来が暗いかというとそうではない」と指摘。
「産業革命が生み出した産業社会では黎明期に様々な問題が起こり、それを乗り越えてきた。現在のネット社会はまだ始まったばかり。炎上問題も乗り越えていく課題の一つだが、他者を尊重するという当たり前のことを忘れないことが最も重要である」と述べた。
このあと、TBSテレビ情報制作局情報2部「ひるおび!」プロデューサーの山脇伸介氏が、炎上事件について事例発表。
最後に、兵庫県立大学の竹内和雄准教授がコーディネーターとなり、5人のパネリストによるパネルディスカッションを行った。
(国 2022-03-07付)
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