胆振管内4年度教育推進の重点 子供が「まん中」の学校 針ケ谷局長 地域連携など追加
(道・道教委 2022-04-22付)

胆振教育局長針ヶ谷一義
胆振教育局・針ヶ谷一義局長

 【室蘭発】胆振教育局の針ケ谷一義局長は13日、オンライン開催の管内小・中・義務教育学校長会議で、4年度の管内教育推進の重点を説明した。推進テーマは「子供が“まん中”の学校づくり」。重点では前年度から新たに「地域との連携・協働」「教員の人材育成」の2点を設定し、計6点とした。学校を取り巻く環境が目まぐるしく変化している状況下において、基本の「子どもをまん中」に据えた学校経営が肝要と押さえ、取組を推進する。

 教育推進の重点はつぎのとおり。

【はじめに】

 本年度の推進テーマについては「子どもが“まん中”の学校づくり」とした。本年度は平成30年度からスタートした「北海道教育推進計画」の最終年度で、この5年間の取組の成果をまとめ、検証していく年となる。この5年の間には、新学習指導要領の全面実施、新型コロナウイルス感染症への対応やGIGAスクール構想による1人1台端末の配備等、学校を取り巻く環境は目まぐるしく変化している。

 こうした状況下においては、どうしても目の前の課題の解決、対応に力を注ぐことになるが、こうしたときだからこそ、基本中の基本である「子どもをまん中」に据えた、今だけでなく、これから先も学びをつなげることを目指した学校経営に立ち返ることが肝要と押さえて、テーマを設定した。

 また、前年度は、市町において「○○スタンダード」を作成するなど、市町単位の組織的な取組が増えてきたことから、本年度は取組がさらに広まる、深まることを願い、サブテーマとして「組織的で活力ある学校経営」を位置づけた。

 前年度に引き続き、下段には「学校における重点達成への鍵」を示した。各市町および学校においては、学校や子どもの実態、地域の実情等を踏まえながら、重点の達成に向けて必要な取組の「焦点化」を図り、実効性のある取組を進めるための手段や役割を「見える化」し、結果について責任と覚悟を持って「徹底・継続」して取り組むことをお願いする。

【重点1 学力・体力の向上】

 管内の学力の状況は、3年度全国学力・学習状況調査の結果においては、全国平均以上に達しなかったものの、差が縮まるなど各学校における授業改善等の取組の成果が表れてきており、改善の傾向が見られている。

 一方、学校質問紙調査における「調査や各種データ等に基づき、教育課程を編成、実施し、評価して改善を図る一連のPDCAサイクルを確立している」の質問項目では、肯定的に回答した学校の割合が小学校で48・5%、中学校で45・2%と全国平均を下回るといった課題が見られるなど、管理職のリーダーシップのもと、自校の教育活動の検証、改善に向けた組織的な取組やICT端末等を活用した「個別最適な学び」と「協働的な学び」の一体的な充実を図る取組等の推進が一層求められる。

 体力の状況については、3年度全国体力・運動能力、運動習慣等調査の結果から、小・中学校ともに、調査結果を踏まえた授業等の工夫・改善をはじめ、目標の提示や振り返る活動を実施している学校の割合が全国平均を上回るなど、改善が見られた。

 ただ、小学生の授業以外の運動時間や中学生の体力合計点が全国平均を下回っており、生徒質問紙における「体育・保健体育の授業で、自分の動きの質の向上を実感している」の質問項目で肯定的に回答した中学生の割合が全国平均を下回ったことから、体力の向上に向け、運動機会の提供等による運動習慣の定着や、運動やスポーツをすることが好きな子どもの育成を目指した体育および保健体育の授業の改善・充実も求められる。

 こうした現状を踏まえ、重点1については「学力、体力・運動能力向上に向けた市町および中学校区による組織的な取組の推進」と「主体的・対話的で深い学びの実現に向けた組織的な授業改善の推進」を柱とし、下段の枠内に示した具体の取組を進めていく。

【重点2 豊かな心の育成】

 2年度の問題行動等調査における管内の「いじめの認知件数」は、元年度と比較すると減少した。いじめを認知した学校の割合は、全国平均と比べ、小・中学校、特別支援学校で下回る状況が続いているが、一方でいじめが見過ごされていないか、子どものSOSが見逃されていないかも懸念されるところ。前年度の「いじめの問題への対応状況の調査」における11月末のいじめの解消率は、道99・6%に対し管内は98%だが、一部のいじめの事案については深刻化・長期化し、重大事態に発展する事案もあった。いじめの問題への対応は、早期発見・早期対応が教職員の責務である。早期発見が難しいSNS上でのいじめについても、深刻化・長期化しないよう情報モラル教育についても計画的に実施するなど、未然防止に努めることが重要と考える。

 2年度における管内の「不登校児童生徒数」は元年度から増加しており、継続している児童生徒数の経年比較を見ると不登校期間が長期化している傾向が顕著となっている。

 こうした現状を踏まえ、重点2については「全ての教育活動を通じて取り組むいじめの防止に向けた取組の促進」と「関係機関との連携等による不登校児童生徒への支援の充実」を柱とし、具体の取組を進めていく。

【重点3 生活習慣の改善】

 子どもたちが夢や目標を実現し、将来自立して生きていくためには、望ましい生活習慣や学習習慣を身に付けることが大切。これまでも多くの学校や家庭において、子どもたちが主体的にルールを決めて生活リズムを整えられるよう取組を進めてたが、3年度全国学力・学習状況調査の結果では「1日当たり1時間以上勉強している」と回答した管内の中学生の割合は全国平均を下回り、学年に応じた学習習慣の定着など、改善していかなければならない点もあるところ。また、3年度全国体力・運動能力、運動習慣等調査の結果からは「平日、2時間以上テレビやDVD、ゲーム機、スマートフォン、パソコンなどの画面を見ている」と回答した児童生徒の割合が小・中学校ともに全国平均を上回るなど、望ましい生活習慣の定着にも課題が見られた。

 こうした状況を踏まえ重点3については「家庭と連携した生活習慣の改善に向けた取組の推進」と「正しい電子メディアの利活用に向けた啓発活動の推進」を柱とし、具体の取組を進めていく。

【重点4 地域との連携・協働】

 今回新たに追加したもの。

 子どもたちがふるさとへの誇りと愛着を持ち、ふるさとの未来を主体的に切り拓いていこうとする思いを持たせるためには、学びの場である学校が家庭や地域と育成を目指す資質・能力や育てたい子ども像を共有し、その実現に向けて必要な取組を子どもや学校、地域の実態に応じて具体化することが欠かせない。

 そのため、家庭や地域との連携をこれまで以上に密にし、多様な価値観を認め支え合う社会づくりに向け、地域と共に「ふるさと教育」の取組を進めていくことが大切だと考える。

 昨年、洞爺湖町の「入江・高砂貝塚」と伊達市の「北黄金縄文貝塚」を含めた「北海道・北東北の縄文遺跡群」がユネスコの世界文化遺産に登録され、管内における文化遺産に対する関心は大きく高まったことは承知のとおり。

 教育局としては、管内全ての小・中学校おいて胆振の文化遺産について学び、ふるさとの良さを再発見できる学習の機会の設定についてお願いするとともに、胆振総合振興局と連携を図りながら、小学生向けの「北海道いぶり五大遺産」に関するパンフレットを作成し、管内の4~6年生の児童に対して配布したところ。

 これまでの取組や管内の文化遺産に対する関心が高まっている今を「ふるさと教育」のさらなる充実を図る好機と捉え、重点4については「いぶり五大遺産などの地域素材を活用した“地学協働”の推進」と「まちづくりにかかわる人材を育てるふるさと教育の推進」を柱とし、具体の取組を進める。

【重点5 教員の人材育成】

 今回新たに追加したもの。学校における課題が多様化する中、活力ある学校づくりを推進するためには、教職員それぞれが持つ力を十分に発揮できるよう、管理職が適切な組織マネジメントを行うことが重要。しかしながら、管内においては、ベテラン層の大量退職や教頭昇任希望者の減少、女性管理職の割合の低さなどの課題を抱えていることは承知のとおり。これらの課題を解決していくため、各市町教委、学校、教育局が課題を共有し、中・長期的な視点で、計画的に管理職候補者を育成していくことが必要であると考え、前年度末に管内における「管理職候補者等育成方針」を策定し、周知を図ったところ。この方針では、教員育成指標において管理職として期待される資質能力の育成・向上を図るために、教育委員会と学校、教育局が連携し「ミドルリーダーの育成」「教頭受検者の確保」「女性管理職候補者の育成」について取組を進めていくとしている。

 こうした取組を踏まえ、重点5については「学校の総合力を高めるための中・長期的かつ計画的な人材育成」と「北海道における教員育成指標を活用した取組の推進」を柱とし、具体の取組を進めていく。また、キャリアステージに応じた研修会や、昇任予定教頭を対象とした研修会も開催するほか、学校経営指導訪問による人材育成の指導・助言なども行っていくので、協力をお願いする。

【重点6 働き方改革の推進】

 道のアクション・プランに掲げている2年度および3年度までに100%とすることを目標とした11の指標のうち、管内においては「月2回以上の定時退勤日の実施」や「職員のメンタルヘルス対策の推進」など、5つの指標が目標を達成していない状況。そのため、第2期アクション・プランの期限となる5年度までに、全ての指標が目標を達成できるよう「働き方改革の推進」を重点6とし、前年度から継続した重点としたところ。この重点6については「教育活動の質を高めるための学校における働き方改革の推進」と「北海道アクション・プランに基づく学校、市町教育委員会と連携した取組の推進」を柱とし、具体の取組を進める。

 教育局としては、具体の取組に関わり「働き方改革推進会議」の開催や各種研修会等において『Road』の活用方法の説明などを行い、各学校の取組を支援し、働き方改革のさらなる促進を図っていきたいと考えているので協力をお願いする。

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4年度胆振管内教育推進の重点
4年度胆振管内教育推進の重点(クリックすると拡大表示されます)

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