根室管内4年度教育推進の重点 組織的な人材育成を 日向局長 これまで以上に関係者と連携(道・道教委 2022-05-02付)
日向正明局長
【釧路発】根室教育局の日向正明局長は4月中旬、4年度管内教育推進の重点を示した。新型コロナウイルス感染症拡大防止の観点からオンライン形式で説明。テーマを「根室の未来を託す子どもの育成~質の高い教育を届けるために」とし、3つの重点を設定した。学習環境の整備や人材の組織的な育成、組織力の充実を掲げたほか、4年度管内学力向上支援事業「チーム根室で学力向上を!」を示し、管内教育委員会連合会をはじめ全ての管内教育関係者とこれまで以上に連携を密にしながら、管内教育の充実・発展に努めていくとした。
教育推進の重点はつぎのとおり。
◆テーマの設定
本年度のテーマについては、道総合教育大綱および道教育推進計画の基本理念を踏まえつつ、ふるさとへの誇りと愛着を持ちながら世界に視野を広げ、社会を支えていくたくましい人材を育成するために、これまでの管内教育の成果を生かしながらさらに質を高めていくという視点で「根室の未来を託す子どもの育成~質の高い教育を届けるために」として設定。
本テーマの重視するポイントは、一人ひとりの子どもたちが自分の良さや可能性を認識するとともに、あらゆる他者を価値のある存在として尊重し、多様な人々と協働しながら様々な社会的変化を乗り越え、豊かな人生を切り拓き、持続可能な社会の創り手となることができるよう資質・能力を育成することである。
さらに、テーマの具現化に向けて大切なことは、教委、幼児教育施設、学校、家庭、地域が、子どもたちに育みたい資質・能力を明確にして共有するとともに、連携協働することである。
◆教育推進の重点
本年度の重点については、取組の浸透とさらなる質の向上を目指し、前年度のスタイルと内容をもとに整理した。
本年度については、それぞれの重点に3つの具体的項目を位置づけるとともに、現在の教育の動向等を踏まえ、それぞれの重点の具現化に向けて特に考慮する視点を共通重点事項として「ICTの活用による教育活動、日常業務の改善・充実」「全教職員による働き方改革を通じた業務改善、学校改善の推進」「新型コロナウイルス感染症対策を踏まえた教育活動の実施」の3点を設定した。
▼重点1 確かな学力を育む組織的な取組の充実
これからの変化の激しい社会を生きていくため、一人ひとりの子どもたちの可能性を伸ばし、確かな学力を身に付けることができるよう、基礎的・基本的な知識・技能の習得と思考力、判断力、表現力等の育成、主体的に学習に取り組む態度のかん養を目指す教育の実現が求められている。
特に、子どもたちに確かな学力を育むためには、好ましい人間関係を基盤に豊かな集団生活が営まれる学級や学校の教育的環境を形成することが大切である。
このような中、各学校においては学習指導要領の趣旨や各種調査の結果を踏まえ、カリキュラム・マネジメントの視点による教育課程や学習活動の改善を図るなどの取組が進められている。今後は学校全体で一貫した検証改善サイクルを確立し、一人ひとりの子どもたちが安心して力を発揮しながらより深く学ぶ授業改善を充実する必要がある。
さらに、一人ひとりの子どもたちに求められる資質・能力を育成するために、自校の本質的な課題を明確にして、その解決に向け実効性ある取組を全教職員の参画のもと行い、教育活動の質の向上を図ることや、教育活動全般を通して子どもたちが安心して学ぶことができる環境を整えることなどが重要である。
こうしたことから、子どもたちに確かな学力を育むために各学校等においては、視点①「自校の現状と課題を踏まえた全教職員による検証改善サイクルの確立」、視点②「主体的・対話的で深い学びの実現に向けた絶え間ない授業改善の推進」、視点③「児童生徒が安心して学べる支持的な人間関係の形成」の3つの視点で教育活動の質の向上を図る。
つぎに、質の高い教育を届けるために各教育関係機関ごとの取組事項として、市町教委では「各種調査結果の分析による各学校の学習指導の成果と課題の把握」「各市町のいじめ防止基本方針に基づいた取組や不登校児童生徒への組織的・計画的な支援、新たな不登校を生み出さない魅力ある学校づくりに向けた指導助言」など3点に重点的に取り組む。
学校では「自校の教育目標や各種調査結果を踏まえた学校全体で一貫した継続的な取組の推進」「児童生徒が自らの学習を調整し、粘り強く取り組むとともに、異なる考え方を組み合わせたよりよい学びを生み出す授業改善の推進」など6点に重点的に取り組む。
幼児教育施設では「“幼児期の終わりまでに育ってほしい姿”に基づいた教育活動の実施」など2点に重点的に取り組む。
さらに、家庭・地域の取組として「子どもたちに寄り添い、見守り支え、自尊感情を育むとともに、規範意識、生命を大切にし他人を思いやる心などの基本的な倫理観を養う取組の充実」を示し、家庭や地域と連携した取組の充実につなげる。
▼重点2 根室教育の発展を担う人材の組織的な育成
子どもたちの成長を担う教職員には、時代の変化や要請を踏まえつつ自らが子どもたちの道標となるべく、常にその資質・能力の向上を図り続けることが求められている。
さらに、若手の教職員が多い管内の重要課題である人材育成については、これから求められる資質・能力の姿を明らかにした教員育成指標を効果的に活用して組織的・継続的にキャリア・ステージに応じて進めることが大切である。また、人と人との交流を活性化し、地域に新たな活力をもたらす仕掛けづくりができる人材の育成も大切である。
このような中、各学校においてはメンター研修を通して初任段階教員を計画的に育成する取組や、地域においては行政職員が中心となり、民間団体と協力して家庭教育を支える組織をつくるなどの取組が進められている。
今後は、学校の組織力をより一層高めながら、各教職員のニーズに応じた学びや地域の活動をコーディネートする人材の育成を充実する必要がある。
そのため、組織として教育活動に取り組む体制である協働的な職場環境を整備するとともに、自らの日々の経験や他者から学ぶといった現場の経験も重視しつつ、OJTや校外研修等を組織的・計画的に行うことができるようにするとともに、学校の組織力を基盤に専門性や実践的指導力の向上を図り、地域が抱える課題やニーズに対応できる人材を育成することが重要である。
こうしたことから、人材の組織的な育成に向けて各学校および教育関係機関等においては、視点①「学校の若手教員やミドルリーダーを組織的・継続的に育成するシステムの構築」、視点②「教員の実践的指導力や専門性の向上に資する研修の計画的な実施」、視点③「家庭教育や地域活動の支援および推進を担う人材の育成」の3つの視点で教育活動の質の向上を図る。
つぎに、質の高い教育を届けるために各教育関係機関ごとの取組事項として、市町教委では「各種研修会・会議等の実施を通した教職員や地域人材を育成する環境の整備および研修」「会議等の成果を還元する機会の確実な設定」など2点に重点的に取り組む。
学校では「指導上の悩みや疑問の解決を図る日常的なOJTを推進する組織体制の整備」など2点に重点的に取り組む。
幼児教育施設では「日常の保育の改善につながる園内研修および職員のキャリア・ステージやニーズに応じた研修の充実」に重点的に取り組む。
さらに「家庭教育支援チーム等の家庭教育を支援する組織体制の構築」など2点について、家庭や地域と連携した取組の充実につなげる。
▼重点3 子どもたちの学びを支える環境の整備
今般の新型コロナウイルス感染症の感染拡大によって、あらためて学校・家庭・地域の役割分担や連携協働することの重要さが浮き彫りになった。もはや学校だけではこうした事態に迅速かつ的確に対応することが難しく、学校と地域が連携協働して対処することが求められている時代である。
さらに、現在の学校が抱える課題は、様々なニーズを持つ子どもの対応や家庭への対応など多様化・複雑化しており、学校だけで解決できない課題もあることから地域全体で教育に関わる目標やビジョンを共有するとともに、地域で子どもたちを育むための組織的・継続的な連携協働が求められている。また、人口減少・少子高齢化が急激に進む中、各地域ではそれぞれの特色を生かした自律的で持続的な社会を創生することが求められており、その中で教育は地域社会を動かしていくエンジンの役割を担っている。
学校と家庭、地域との連携した取組については、域内の小・中学校が互いの学校経営の成果や今後の方向性を共有して自校の教育活動に生かしたり、PTAと連携してメディアの活用に関するルールを決めて全ての家庭で実行したり、地域の教育資源を活用して自然や文化を学習したりするなどの取組が進められている。
今後は、域内の学校間の連携の質の向上を図るとともに、家庭や地域社会に積極的に働きかけ、それぞれがもつ本来の教育機能が総合的に発揮されるようにすることが大切である。
そのため、学校と地域で目標を共有しながら連携体制を構築して教育活動を展開するとともに、家庭・地域が望ましい生活習慣・学習習慣について話し合う場の設定や地域の教育資源を活用した取組を一層充実することが重要である。
こうしたことから、子どもたちの学びを支える環境の整備に向けて、各学校・教育関係機関等においては、視点①「発達や系統性・発展性を踏まえた幼小中高の連携や一貫教育の推進」、視点②「学校・家庭・地域の連携協働による生活習慣・学習習慣の確立」、視点③「地域の教育資源を活用した教育活動の推進、地域に根ざした魅力ある学校づくり」の3つの視点で教育活動の質の向上を図る。
つぎに、質の高い教育を届けるために各教育関係機関ごとの取組事項として、市町教委では「学校・家庭・地域との連携協働による児童生徒の生活習慣・学習習慣の確立に向けた指導助言」「地域を支える人材の育成に向けた地元の高等学校との連携」など3点に重点的に取り組む。
学校では「児童生徒が自ら計画を立てて学習し、規則正しい生活を送ることができる環境づくりに向けた家庭・地域との協働体制の確立」など4点に重点的に取り組む。
幼児教育施設では「子育てに関する学習機会の設定および基本的な生活習慣の確立」など2点に重点的に取り組む。
さらに「家庭・地域と連携したスマートフォン等の使用方法やメディアに触れる時間等のルールづくり」など4点について、家庭や地域と連携した取組の充実につなげる。
◆共通事項
それぞれの重点の具現化に向けて、特に考慮してほしい視点を「共通事項」として設定した。
▽ICT活用による教育活動、日常業務の改善・充実
▽全教職員による働き方改革を通じた業務改善、学校改善の推進
▽新型コロナウイルス感染症対策を踏まえた教育活動
これらの取組は、どの学校種においても緊要な経営課題と言えるものである。
3つの重点および共通事項について、各教育機関が組織内で共有して主体的に取組を進めていただきたいと思うが、教育局としてもさらに質の高い教育を展開できるよう、研修事業や会議の開催によるキャリア・ステージに応じた人材育成、各種指定事業の取組の推進や各教育機関の優れた実践の成果普及、学校等への訪問による指導助言や支援など、教育局の総力を挙げて支援していく。
新型コロナウイルス感染症の感染拡大が継続する中で、私たちの価値観、行動様式が大きく変わる現在、ますます一人ひとりの子どもたちが主体性を発揮しながら互いに力を合わせ様々な課題を解決していく資質・能力を身に付けることが求められる。
また、正解のない時代と言われているこのようなときだからこそ、校長のリーダーシップを遺憾なく発揮し、新しい発想で活力ある学校をつくっていくことが大切であると考える。
◆おわりに
根室管内は、全小・中学校児童生徒に占める特別支援学級在籍者数の割合が全道的に高い地域である。障がいのある子どもの教育の本質は、教員と子どもとの信頼関係づくり、コミュニケーションの確立であると考えている。経験の浅い先生方が特別支援学級を担当するケースが多いと思うが、これらのことを大切にした学級経営をお願いしたい。
本年度も管内教育委員会連合会をはじめとして、全ての管内教育関係者とこれまで以上に連携を密にしながら管内教育の充実・発展に努めていく所存であり、一層の協力をお願いする。
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(道・道教委 2022-05-02付)
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