宗谷管内4年度教育推進の重点 資質・能力 確実に育成 山﨑局長 地学協働体制構築を推進
(道・道教委 2022-05-13付)

R4管内教育推進の重点(一枚物)
宗谷管内教育推進の重点(クリックすると拡大表示されます)

 【稚内発】宗谷教育局の山﨑義一局長は4月中旬、オンライン開催の管内市町村教委教育長会議等において4年度管内教育推進の重点を説明した。本年度の管内教育推進の重点は「資質・能力を確実に育成する学力保障」、サブテーマを「OVER70の実現」「12年間継続する学力保障」に設定。各種施策を通して未来のまちづくり、人づくりにつながるための地学協働体制の構築などの取組を通して、全ての子どもに確実に資質・能力を身に付けさせていく考えを示した。

 教育推進重点の概要はつぎのとおり。

【管内教育推進の重点の意義】

 教育推進の重点は、宗谷管内の学校教育における課題を明確にし、その解決方策を示すもの。そのため、この重点は管内の全ての学校が重点的に取り組む教育施策を示すものであり、学校経営に適切に位置づけ、全ての児童生徒に確実に資質・能力を育むために必要なものである。したがって、各学校において確実に学校経営に位置づけ、学校評価で進捗状況を判断し、迅速な課題解決を通して児童生徒に資質・能力を育成することが重要である。

【管内教育推進の重点のつくり】

 道教委4年度教育行政執行方針を受け、管内全ての公立学校が重点的に取り組む内容を焦点化した。その際、各市町村教委における課題解決の方向性および各学校の課題解決の方向性を十分に踏まえて、管内的な課題解決の方向性を焦点化した。

 本年度は、道教委の教育施策に基づいた活動を展開していくことは例年と変わらないが、現在、管内の全ての学校で取り組むべき最重要課題は学力保障であることから、本年度の管内教育推進の重点を「学力保障」1点に絞った。

 道教委の行政執行方針との関連性は、ウィズコロナ・ポストコロナを見据えたICTのさらなる活用におけるオンライン学習支援や、国の答申にある「個別最適な学び」「協働的な学び」「主体的・対話的で深い学び」を実現する授業改善、生徒指導上では望ましい人間関係を気づく力を授業で育成すること、そして、教育の効果が未来のまちづくり、人づくりにつながるための地学協働体制の構築などの取組を通して、全ての子どもに確実に資質・能力を身に付けさせ、子ども自身が自己実現を果たす子どもの未来保障に向けて重点を設定した。

 4年度の管内教育推進の重点は「資質・能力を確実に育成する学力保障」である。サブテーマを「OVER70の実現」「12年間継続する学力保障」とした。

 本年度は「子どもの未来保障」を掲げて3年目になる。そのため、管内の最重要課題「学力保障」については、一定の成果を上げてけりを付けたい。この点については、管内教育関係者と共通理解が図られている。

 そのため重点を一点に絞り「資質・能力を確実に育成する学力保障」とした。念のために申し上げるが、学力保障は資質・能力の育成状況の一定の指標としての位置づけであることから、学力に関する客観的な調査等において、決して「点数を上げる」という意味ではないことは重々承知であると考えている。あくまでも学習指導要領にある資質・能力の育成が目的であり、その目的の実現状況を図る方法として客観的な調査を指標として活用することを意味している。

 重点にあるとおり、全ての児童生徒に対して教育課程を通して確実に、つまり必ず資質・能力を育成し、学力を保障するという強い目的意識が必要である。その重点を推進するための具体的な取組を5つの重点推進のポイントとして設定した。この5つの取組について、各学校で取り組み、評価していただく。

▼授業改革

 授業改善ではない、授業改革である。授業を通して、確実に資質・能力を育成するためには「これまでの授業ではいけない」という観点に立ってほしい。

 教育局では、学習指導要領にある資質・能力を身に付けさせる授業改革のために、学校訪問や研修会を通して自ら考え、他者と価値観を共有したり協議したりして、より良い考えをみつけていく授業の進め方と、児童生徒に「自己決定の場を与え」「自己存在感を味わわせ」「共感的な人間関係の構築を図る」という生徒指導の3つの機能を活用した授業改革を進めるよう指導助言する。

 各学校においては、これまでの教師主導型の授業を脱却し、求められる資質・能力を育成するよう抜本的に授業の進め方を見直す授業改革を進めること。

▼学校経営

 1点目の授業改革を進めるためには、児童生徒の実態に応じた授業の準備と授業内容の吟味などが必要となる。教育局では、授業改革を進めることができる学校経営の推進に向け、義務教育指導監による目的実現に必要な教育活動の選択と決断や、それらを計画的に進めるカリキュラム・マネジメントの充実、校長の意思決定が迅速に反映する学校組織の構築の仕方を指導するとともに、学力に関する調査結果におけるいわゆる3層(伸びしろ層、中間層、定着層)それぞれに応じた教育活動進める柔軟な教育課程の推進について指導助言する。

 各学校においては、校長を中心に、資質・能力を育成する教育活動を焦点化する選択と決断を行うとともに、校長の意思決定が迅速に反映し、職員から教育課程の充実を図る新たなアイデアが創出されるような学校組織を構築すること。また、教育基本法にある「教育の機会均等と教育水準維持」の観点から、いわゆる3層それぞれに応じた教育活動を進める教育課程を編成・実施すること。

▼検証改善

 確実に資質・能力を育成したかどうかを短い期間で検証改善することが必要である。その結果に応じて、教育課程を変えていく必要が生じる。

 教育局では、いわゆる3層それぞれの児童生徒が確実に資質・能力を身に付けた指標として、いずれの客観的調査においても70%以上の正答を得ることができるよう、全国学力・学習状況調査はもとより、チャレンジテストやSサポート等の分析を進め、管内の児童生徒の学力に関する成果と課題を明確にした上で、児童生徒一人ひとりの状況に応じた授業改革を進めることができるよう具体的な方策について指導助言する。

 各学校においては、義務教育の機会均等と水準維持向上の観点を重視し、全国学力・学習状況調査結果などの客観的な指標を大切にした検証改善を進め、全ての児童生徒がOVER70の力を身に付けることができるよう授業改革に取り組むこと。

▼働き方改革

 全ての児童生徒に必要な資質・能力を育むためには、授業改革に集中し、教育活動の質の向上を図る必要がある。そのため従来の教育活動を前例踏襲として進めるわけにはいかず、教育的な効果を重視して校長が選択と決断を行い、授業改革に職員全員で取り組む職務体制が必要である。

 教育局では、学校の業務推進の客観的なデータに基づき、勤務時間(1日7時間45分、週38時間45分)を意識し、その中で授業改革に集中することができるよう、次長を中心とする教育局の働き方推進チームによって学校本来の役割に基づいた業務改善の仕方について指導助言する。

 各学校では、勤務時間内において全ての児童生徒に確実に資質・能力を身に付けせる教育活動に焦点化するための選択と決断を進め、全ての職員が授業改革に集中することができるよう業務改善を積極的に進めること。

 その際、前例踏襲を良しとせず、新たに児童生徒の資質・能力育成の観点を重視、抜本的な学校改革を進めること。

▼小・中・高12年間の学力保障

 地域の未来を担う児童生徒の成長を支えるのは、学校はもとより保護者、地域住民である。

 そうした観点から、児童生徒に確実に資質・能力を育成するためには、成人になるまでの小・中・高の12年間にわたり連続性・継続性のある教育活動を推進し、地域の助けを得るとともに、地域の大人へと成長させる体制づくりが必要となる。

 教育局では、中学校区を中心に道教委の学校力向上に関する総合実践事業の成果を活用・周知し、中学校区における小中9年間の一貫した教育課程の編成・実施に向けた指導助言するとともに、高校のスクールミッション、スクールポリシーを踏まえた地域の児童生徒の12年間を円滑に接続する教育活動の推進について指導助言する。また、コミュニティ・スクールなどを活用し、地域住民が児童生徒の学力保障の状況を適切に理解し、児童生徒の学力保障の取組に積極的に参画する方策について指導助言する。

 各学校においては、それぞれの校種の担う役割を維持しつつ、他校種との円滑な連続性・継続性を考慮した教育課程のつながりについて研究するなど、地域の児童生徒を成長させる方策を講じるとともに、地域住民に児童生徒の学力保障の状況を分かりやすく説明し、地域を支える人材育成に理解を得て参画していただく方策を講じること。

【各学校における位置づけ】

 各学校においては、こうした5つの推進のポイントに確実に取り組む成果を上げていることを実感するため、学校の実情を踏まえ、管内教育推進の重点の重点推進のポイントの内容を学校経営方針に位置づけることが重要である。

 そのため、適切に評価するための評価計画、評価方法、評価時期などを明確にすることが必要である。管内教育推進の重点について、学校経営方針への位置づけ方、学校経営の具体の取り組み方、評価の具体例について示した。

 位置づけ方については各学校の状況に応じることが重要であるが、流れを踏まえて確実に取り組んでいただきたい。流れとしては、重点推進のポイントを学校経営方針に位置づけ、つぎに具体的な教育活動として取り組み、その検証として学校評価などにおいて評価していただきたい。

 なお、この内容は過日開催された会議において述べており、管内の教員の方々については、すでに学校経営方針に位置づけていただいているものと考える。他管内から来られた方々は、引き継ぎの中で経営方針に位置づいているものと考えるが、仮に位置づいていない場合、バージョンアップとしてすぐに位置づけていただきたい。大切なことは、こうした形で重点やその推進ポイントを絵にかいた餅にしないこと。計画的・意図的に教育活動を進めるためには、拠り所と目標、評価が必要である。

 この位置づけの例について、拠り所は道教委行政執行方針、それに基づく管内教育推進の重点であり、目標は、重点推進のポイントに基づく各学校の経営方針である。

 その経営方針を評価するのが学校評価などである。年に2回程度、管内教育推進の重点に基づき重点推進ポイントの進ちょく状況を適切に評価していただく予定。その際、くれぐれも印象評価ではなく、客観的な評価として適切に行っていただくようお願いする。

 さらには、評価の結果と重点である学力保障としての結果が伴っていることが重要である。前年度の重点評価では、学校の取組としての評価が高くても客観的な学力保障の評価は低いなど、評価と取組結果の齟齬が生じている学校も見られた。これらの評価は、評価のための評価ではない。あくまでも全ての児童生徒に確実に資質・能力を身に付けさせるための方策の評価である。

【まとめ】

 私たち教育関係者は、子どもたちに未来を見せ、明るい未来を築き、生きていくためのモチベーションを上げることが役割である。そのための具体策として、全ての子どもが自己実現を図り、納得した人生を送ることができるための資質・能力を身に付けさせることが、我々の役割である。

 その際、印象的な子どもの成長を喜ぶだけではなく、教育課程を通して客観的に確実に生きる力を身に付けさせることが、これまでの我々の取組を反省し、子どもの未来保障に貢献することとなる。これまでの教育活動にとらわれず、全ての子どもに確実に資質・能力を育成する教育活動について、教育局の持てる力を全て発揮し、皆さんを支える覚悟である。

 皆さんにおいても、校長の選択と決断を集中的に進め、確実に資質・能力を身に付けさせる充実した教育活動を展開し、本年度、学力保障問題に一定の成果を上げる意気込みで取り組んでいただきたい。そして、子どもが資質・能力を身に付け、教員がやりがいをもって指導に当たる「教育立国宗谷」の樹立を果たすよう、日々子どもの未来保障に向けて尽力いただきたい。

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宗谷教育局長・山﨑義一
山﨑義一局長

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