道研 新趣向の研修講座本格化 プログラミングに挑戦 本年度初の集合型 体験通し指導力向上
(道・道教委 2022-07-04付)

道研研修講座マイコンボード
マイコンボードを使ってプログラミングを体験した

 道立教育研究所の本年度初の集合型研修がこのほど同所で開かれた。中学校技術教員の実践的指導力向上研修で、プログラミングによる問題の解決を目指す授業づくりの進め方を学習。教師自身がプログラミングの実際や、エラーを体験することで指導力の向上を図った。本年度の新たな研修が初夏を迎え本格化している。

 道研は本年度、オンデマンド、集合、遠隔研修を効果的に組み合わせ、基礎知識を習得してから実践内容を共有・再構築するなど「受講者自身が課題を浮き彫りにし、価値を高める研修」を実施している。

 また、研修で学んだことを学校現場ですぐに実践し授業に生かすとともに、自ら課題を洗い出し、つぎの研修で解決を目指すなど、研修と実践の効果的なサイクルをねらっている。

 研修のこま数が最も多いのは広域な本道でも無理なく参加できる遠隔型。一方的に講師の話を聴講するのではなく、悩みやより良い方法を講師に質問したり、参加者同士で情報を交流し知恵をを出し合ったりと双方型の流れを大切にしている。

 参加者による遠隔の授業公開も予定し、全道規模の授業交流を可能に。管内ごとに分かれ、地域の課題に特化した研修も検討している。

 オンデマンド研修を経て本年度初の集合型となった研修講座は「中学校技術教員の実践的指導力向上研修(プログラミングによる問題の解決を目指す授業づくりの進め方)」。

 演習では、附属情報処理教育センターが新型コロナ流行時の所内換気のため制作したCO2濃度測定器を、技術家庭科の授業用教材として改良した「計測・制御ボード」を活用。講師の指導助言を受けながらマイコンを使ったLEDの点灯・点滅、各種センサーの計測値やネットワークを利用したプログラミングの実際を、段階を踏んで体験し、授業力の向上を図った。

 講義では、白鴎大学教育学部の上野耕史教授が、指導と評価の一体化について「学習活動ごとの目指す目標は、単元の目標をどのような学習活動・指導方法で達成するかを検討した上で、学習活動ごとに単元の目標を細分化するなどして作成する」と述べた。

 また、個別最適な学びについて「孤立した学びに陥らないように、子ども同士で、あるいは多様な他者と協働的な学びを充実することも重要」「集団の中で個が埋没してしまうことがないよう、一人ひとりの良い点や可能性を生かすことで、異なる考え方が組み合わさり、より良い学びを生み出す」とした。

 実践発表は伊達市立光陵中学校の上埜貴久教諭。上埜教諭は前年度の本研修講座の受講者で、勤務校で実践した授業について研修成果を発表した。

 8人の受講者は、実践発表に加え、道研の未来の教室におけるソーラーパネルと土壌湿度・日照・CO2・温度センサーなどを活用した、簡易的なビニールハウスにおける無人の農作物育成管理システムの見学などを通して、「技術の見方・考え方」を働かせた統合的な問題の解決を目指す授業づくりの着想を得ていた様子。

 受講者たちは「プログラミングは周りに相談できる先生がいないので、他者の実践を知ったり疑問をぶつけ合ったりできるのはありがたい」「実際の授業では、生徒が戸惑ったりエラーを起こしたりしたときにどう対処するかが問われるので、そうしたことを体験できる集合型はやはり貴重」などと話した。

◆講師を交え意見等交流 国研の田﨑調査官が講義・演習

 情報科教員の実践的指導力向上研修「科目『情報Ⅰ』の授業づくりの進め方」では、国研教育課程研究センター研究開発部の田﨑丈晴教育課程調査官が高校における情報活用能力の育成について講義・演習を遠隔型で実施した。

 田﨑氏は、オンラインで講義・演習。学習指導要領改訂と社会的変化について「先生の言うことを聞くだけの3年間で、世の中を変える力をどこまで付けられるだろうか」と投げかけ「どれだけ社会に役立つ力を引き上げてやれるか。これまで想像したことのない職業に就く生徒もいる。アクティブラーニングの視点から学習過程の改善が求められ、生徒がどう学ぶか生徒を主語にした教育課程が大切」と訴えた。

 また「予測困難な時代に課題解決する力の育成が教科情報では求められている。情報Ⅰは情報活用能力育成の中核となるため、高校1年生で実施することが望ましい」と提案。

 情報で身に付ける力について「課題を発見し、方策を考える。改善に向け取組をより良くしようとする力」「学びを社会に生かそうとする力。知識・技能の習得だけではなく、問題発見・解決の手法をしっかり学ぶのが大事」と述べた。

 演習では、参加者からの悩みや疑問について、田﨑氏を交え意見交換。

 レポートの評価規準についての意見交換では、田﨑氏は、体裁を満たしているか、参考資料を引用した上で自分の意見が述べられているか、考察の内容で推論が深いと見取れるか、を考慮し観点別に評価規準を設定することが考えられると助言。参加者から「毎時間評価し、(目標の達成状況を)見える化することで生徒の意欲につながっている」との声も上がった。

 「大学入試に向けて情報Ⅰの主体的活動の時間と大学入試に対応した学習のバランスは」との問いには、学習指導要領に基づき授業を行うことを念頭に、「生徒が習得すべき知識・技能を活用する場面を設定し、課題解決に向け考える探究的活動を設定する」などと助言した。

 最後に田﨑氏は「情報通信ネットワークの授業で、TCP/IPなどのプロトコルやインターネットの仕組みなどを解説だけしてもテストの結果は良くなかった。しかし、授業を改善してネットワークを自分で考え組み立てる実習を行ったところ、テストの正解率は8割に達した」との自身の経験を紹介し、「教師が教えるというプロセスがどこまで必要なのかを実感させられた」と述べた。

この記事の他の写真

道研研修講座上野教授
白鴎大の上野教授が講義した

(道・道教委 2022-07-04付)

その他の記事( 道・道教委)

道研 実践的指導力向上研修 統計学 基礎を理解 札幌学院大の中村教授講義

道研講座①講義する中村教授  道立教育研究所は6月中旬、同所で「商業科教員を対象とした実践的指導力向上研修」を開催した。札幌学院大学経済経営学部の中村永友教授が「情報の分析と統計的な推測」をテーマに講義し、記述統計と推...

(2022-07-06)  全て読む

道いじめ問題審議会 本年度初会合 潜在的いじめの発見を 新会長に北翔大・飯田教授

 道いじめ問題審議会は6月27日、札幌市内のかでる2・7で本年度第1回会議を開いた。会長に北翔大学の飯田昭人教授を選出。議事では本道におけるいじめ認知件数の少なさが課題として挙がり、オンライ...

(2022-07-05)  全て読む

道教委 部活動在り方検討へ 協力地域 北見など5市町 各地の説明会等に助言者派遣

 道教委は部活動の在り方検討協力地域として、石狩市、松前町、日高町、留萌市、北見市の5市町を決定した。各市町では地域における新たなスポーツ・文化活動の環境の構築に向け、部活動の在り方を検討す...

(2022-07-05)  全て読む

名寄市名寄小 大久保氏ら10人 4年度道学校給食功績者表彰

 道教委・道学校給食会は4年度道学校給食功績者表彰の被表彰者を決定した。名寄市立名寄小学校の大久保美幸栄養教諭ら10人が受賞の栄に浴した。表彰式は8月2日に紋別市民会館で開催する第63回道学...

(2022-07-05)  全て読む

道スポーツみらい会議17日に発足 官民連携でスポーツ振興 全国レベルの大会など誘致

 道は、本道のスポーツ振興を図る新たな官民連携組織「北海道スポーツみらい会議」(仮称)を立ち上げる。行政だけでなく、経済界やプロスポーツチームなどが連携し「北海道スポーツ条例」の目的・理念の...

(2022-07-05)  全て読む

道道教委等 特別支援教育全道セミナー 教育・福祉 連携推進を 発達障がい支援の取組等交流

 道教委と道保健福祉部は6月23日、特別支援教育充実セミナー(全道セミナー)をオンライン開催した。開会あいさつで特別支援教育課の仙北谷逸生課長補佐は、教育・福祉の連携の一層の推進に向けて関係...

(2022-07-04)  全て読む

道教委 社会との共創推進PJ 8月から講義・演習 STEAM教育を推進へ

 道教委は、本年度新規となるS―TEAM教育推進事業「社会との共創」推進プロジェクトを8月から開始する。実社会での課題解決に向け、大学、研究機関、企業、自治体等と連携して生徒が探究活動に取り...

(2022-07-04)  全て読む

高校配置計画地域別検討協議会 8日から19会場で 最終意見を調整 道教委

 道教委は、第2回公立高校配置計画地域別検討協議会の開催日程をまとめた。8日の胆振西学区を皮切りに14管内19会場で順次開催。集合・オンラインのハイブリッド開催とし、学区ごとの最終意見調整を...

(2022-07-01)  全て読む

道教委 健康教育推進リーダー 各校種4校の養教に 生活習慣定着等へ研究推進

 道教委は本年度から新たに指定する健康教育推進リーダーとして、旭川市立東町小学校など各校種4校の養護教諭に決定した。生活習慣の定着や目の健康などをテーマに児童生徒の健康課題の解決に向けた実践...

(2022-07-01)  全て読む

道教委 道立高CS設置基本方針 導入促進へ要件改定 「域内全小・中導入」を削除

 道教委は6月29日付で道立高校における学校運営協議会設置の基本方針を改定した。コミュニティ・スクール(CS)の導入促進を図るための措置で、要件の一つだった「域内の全ての小・中学校がCSを導...

(2022-07-01)  全て読む