道町村教委連が第57回研修会 子を守る体制の構築を 今日的な課題について研鑚(関係団体 2022-07-20付)
研修会には全道から600人以上が駆け付けた
道町村教育委員会連合会(道町村教委連、本庄幸賢会長)は15日、札幌市教育文化会館で第57回道市町村教育委員会研修会を開催した。全道から教育長、委員ら600人以上が参集し、新たな教員の研修制度や世代別のコミュニケーションの取り方など今日的な課題について理解を深めた。
冒頭、本庄会長があいさつし、当面する課題として①子どもの安全②教育のデジタル化③適正配置④教職員の働き方改革と部活動―の4点を挙げた。
子どもの安全については「コロナ禍の影響もあり、子の不登校や自殺が過去最高となった。いじめ問題は後を絶たず、旭川では大変痛ましい事件が起きた」と述べ「どの子どもも健やかに成長する権利を平等に持っている。我々は一人ひとりを全力で支え、二度と悲劇が起きないよう先頭に立ち、保護者、学校、地域、行政が一体となって子どもを守る体制を構築しなければならない」と訴えた。
そして「いじめや不登校、自殺防止の基本方針を今一度見直し、実質化すること。特に、相談体制の整備と重大事態の対処の在り方が喫緊の課題」と述べた。
教育のデジタル化については「OECDの調査では、デジタル機器を活用した授業時間は日本が最下位だったが、子どもたちが生きる社会は、デジタルと無縁ではいられない」とし、一層の環境整備と個別最適で協働的な授業の実現を求めた。
部活動については「地域移行にかかるスケジュールの作成を各教委が進めることになると思う。指導者の確保や予算など課題はあるが、準備を進めていかなければいけない」と述べた。
最後に「全道144の教育委員会が、全ては子どもたちのためにを施策の基本に、結束して一つ一つ乗り切っていこう」と呼びかけた。
続いて、来賓の橋場弘之道教委委員が祝辞。「道内でも年度初めから教員の欠員が生じ、先生方の負担が増え子どもとの触れ合いが減っている。欠員の解消が喫緊の課題である」と述べ「教職の魅力向上の上でも働き方改革が大切」とし、一層の環境整備を図る考えを示すとともに、各学校の取組に期待を寄せた。
続いて「町村教育委員会の機能強化」や「ウィズコロナ・ポストコロナ時代を見据えた教育環境整備」など9事項の実現を目指すとした決議案を満場一致で採択した。
このあと、道教委の青山夕香委員が「世代別コミュニケーションの取り方」と題し講話。文部科学省教育人材政策課の小幡泰弘課長が「教師の資質能力の向上について~教員免許更新制の発展的解消を踏まえて」と題し行政説明。
小幡課長は、教員免許更新制廃止後の免許の取り扱いと研修について説明した上で「記録は目的ではない。できるだけ簡素化すること」「研修は校長から一方的にではなく、教師との対話の上で本人の希望や強み、伸ばしたい能力、学校運営上求める役割などを加味して決定する」と解説。「8月中にもガイドラインを示したい」と述べた。
最後に、遠別町教委の佐藤裕昭教育長と、更別村教委の荻原正教育長が「遠別農業高校の存続とICT教育」「小さな村が地域の力を借りて行う教育の推進」と題しそれぞれ事例発表。
佐藤教育長は、遠別農業高について「作物や家畜を育て、命の大切さをダイレクトに実感できる学校」「進学・就職率は11年連続100%を記録している」などと魅力を紹介。
また、遠別町は町全体に光ファイバーが整備され、全児童生徒にタブレットを配布。電子黒板やドローンの導入も進んでいることを紹介。「子どもがデジタルを使いこなせるかどうかは就職にも大きく影響する。先生方がそういう価値観、考え方を持っているかどうかが大切」と述べた。
また、荻原教育長は「元々地域が学校に関心を持っており、地域の力を借りて行った教育の協力者は2年度が517人、3年度が452人で、人口比ではそれぞれ16・3%、14・2%」と紹介。家庭科でミシンやアイロンがけができる先生が足りないと、地域が協力してくれるなど至るところで地域が協力し、そうして育った子どもたちがまた学校に協力してくれることを述べ「村の人たちの地域愛が伝わり、子どもたちが故郷に誇りと愛着を持つようになっている」とした。
研修会の決議概要はつぎのとおり。
◆
人口減少・少子高齢化の進行や産業構造の変化、ICTやグローバル化の進展、さらには新型コロナウイルス感染症の影響等によって人々の価値観や生活様式が大きく変わるなど、我が国の教育をめぐる状況は著しく変化している。
このような中、各市町村教育委員会は、新教育委員会制度の目的である「責任体制の明確化」をはじめ、「教育委員会審議の活性化」や「迅速な危機管理体制の構築」、「地域の民意を代表する首長との連携の強化」などを念頭に、これまで以上に地域の実情に応じ、時代に対応した教育行政を実現する責任を果たしていくことが求められている。
さらに、学校教育行政においては、新型コロナウイルス感染症対策を十分講じ、「学びを人生や社会に生かそうとする『学びに向かう力・人間性』」、「生きて働く知識・技能の習得」、「未知の状況にも対応できる思考力・判断力・表現力」など、新しい時代に必要な資質・能力の育成、社会教育行政においては、「時代に応じた地域づくり」、「安心な暮らしを守る体制づくり」、「学校・家庭・地域の連携」、「地域における課題の解決に向けた方策と実行」など、一層、重要になっている。
こうした背景を踏まえ、北海道町村教育委員会連合会は、新時代を見据えた教育の実現を図るとともに、北海道教育の喫要な課題である「学力・体力向上」や「学校における働き方改革」をはじめとする多くの課題の解決に向けて、国や北海道教育委員会との密接な連携の下で教育行政を展開し、子どもたちの成長や道民の願い・信頼に応えるために全力を尽くす決意である。
そのため、次の事項の実現を目指す。
記
1 町村教育委員会の機能強化
2 ウィズコロナ・ポストコロナ時代を見据えた教育環境の整備
3 新しい時代に必要とされる資質・能力を育む学校教育行政の推進
4 幼児教育の推進及び幼児教育施設と小学校との円滑な接続
5 インクルーシブ教育の推進
6 総合的な子どもの貧困対策の推進
7 小規模高校の教育環境の充実・強化
8 学校における働き方改革の推進
9 地域の課題解決や地域づくりに資する社会教育行政の推進
(関係団体 2022-07-20付)
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