文科省アクションプラン概要 英語教育・対外発信力改善 英語指導プログラム開発へ(国 2022-08-10付)
文部科学省の英語教育・日本人の対外発信力の改善に向けたアクションプランの概要はつぎのとおり。
【学校英語教育の底上げ】
英語力に関する新たな目標を設定するとともに、自治体の取組状況を一層可視化し、改善を加速させる。また、デジタル教科書やパフォーマンステストなど、指導・学習の改善に資するツールの活用を促すとともに、教育課程外の学習活動の充実に資する施策も講じる。
▼英語教育改善に向けた取組状況の一層の可視化
▽現状と課題
毎年実施している「英語教育実施状況調査」では、取組の分析が都道府県・政令市単位であり、課題の可視化が必ずしも十分でない。学校外・教育課程外での取組を詳細に把握できていない。
▽今後の取組
・次回調査(本年冬予定)以降、有識者の協力も得て、分析単位・調査項目を改善し、成果に繋がる取組や課題を徹底的に可視化
・その結果を分かりやすく公表するとともに、各都道府県・政令市の「英語教育改善プラン」に反映
▼デジタル教科書・教材等による学びのDX
▽現状と課題
義務教育段階では、4年度に全ての学校を対象に英語のデジタル教科書・教材を配布しているが、高校段階を含め、デジタル教科書・教材を含むICT機器の効果的な活用が課題。
▽今後の取組
・義務教育段階=本年度、デジタル教科書・教材等を活用した効果的な取組モデルの開発や好事例の収集・分析を行う実証事業を実施。成果を様々なチャンネルで全国に発信
・高校段階=デジタル教科書・教材等の活用に積極的に取り組む自治体を支援(家庭学習を含め、ICT機器の有効な活用方法を調査研究)
▼英語4技能の総合的な育成に向けたパフォーマンステストの実施促進
▽現状と課題
「英語を使って何ができるか」を評価するパフォーマンステストを「話すこと」「書くこと」の両方について行っている高校は全体で4割に満たない。質のばらつきも指摘されており、「指導と評価の一体化」の観点で課題。
▽今後の取組
・高校での「話すこと」「書くこと」のパフォーマンステストの問題、採点基準、具体の評価事例を豊富に盛り込んだ参考資料を作成。全国の指導主事が集まる会議等を通じて活用を推進
▼学校外における自主的・自発的な学習意欲の向上
▽現状と課題
日本人が英語を使いこなすには数千時間の学習を要するとの指摘もある中、授業時間だけで必要な学習量を補うことは現実的でない。しかし、これまで、教育課程外・学校外での学習の促進方策は十分に意識されていない。
▽今後の取組
・外国語指導助手(ALT)や英語が堪能な地域人材の活用を一層促進(ALTを指導者とする課外活動を好事例の横展開等によって積極的に推進等)
・上記課外活動の推進と併せ、各種団体が実施する英語でのディベート、スピーチコンテスト等を積極的に支援(文科省としての後援、大臣賞の創設等)
・1人1台端末を活用した海外との交流の促進(好事例の横展開)
▼中高生の英語力に関する新たな目標値の設定
▽現状と課題
現行の第3期教育振興基本計画は本年度が最終年度。中高生の英語力は、全体としては、目標とするレベルを達成した生徒の割合が着実に向上しているが、地域差が顕著。
▽今後の取組
・次期教育振興基本計画において、現行の目標の確実な達成を目指すことに加え、全都道府県・政令市で一定割合(例:5割)の達成を目指すことを検討
・高校について、特にグローバルに活躍する層を対象として新たな目標を設定することも検討(現在開催中の中教審教育振興基本計画部会での議論を経て結論を得る)
【教員採用・研修の改善】
英語教育の指導力・指導体制の強化を図る観点から、教師の採用段階における各地域の取組の可視化による地域差の解消、「英語で授業」のレベルアップに向けた学習プログラムの開発、特別免許状の活用に向けた取組等を行う。
▼教員採用段階の取組差の可視化
▽現状と課題
英語を担当する教師の採用に当たり、各地域における英語力を確認する取組等に関する状況を可視化し、地域差の解消や全体的な取組の推進を図ることが必要。
▽今後の取組
・英語教師の採用選考試験に当たり、特別免許状を活用しているかどうか、英語力に関する資格・検定・スコア保持者に対する特別措置(加点、一部試験免除、特別選考など)を実施しているかどうか、などについて定期的に調査を行い、取組状況を分かりやすく公表
・特別免許状の授与基準の策定・公表の有無、手続の内容(申請受付時期等)、学校種別・教科別の授与件数を自治体別に分かりやすく公表
▼「英語で授業」のレベルアップ
▽現状と課題
中学校・高等学校の英語の授業について、授業は英語で行うことを基本とすることが学習指導要領に規定される中、指導力向上のための取組が必要。
▽今後の取組
・英語の指導法について、基礎的な知識・技能を身に付けられる学習プログラム(英語で授業を行うために必要となる語彙・表現等を網羅的に習得させる等)を国が開発。教職員支援機構において提供。プログラムを修了したことが証明されるための試験等もあわせて作成・実施
・オンデマンド学習プログラムについては、養成段階での活用を促進することも視野
▼特別免許状等を活用した英語教師登用の拡充
▽現状と課題
特別免許状の活用状況は増加傾向にあるものの低水準であり、英語に関する知識やスキルを有し教育に熱意がある者で、教員の普通免許状を有していない者を特別免許状制度を活用して積極的に登用を図る必要。
▽今後の取組
・ALT経験者、民間英会話教室経験者などの登用促進(特別非常勤講師として登用し、その経験を加味して特別免許状で採用することも含む)
・特別免許状の授与基準の策定・公表の有無、手続の内容(申請受付時期等)、学校種別・教科別の授与件数を自治体別に分かりやすく公表
・中期的には、上記の国で開発する学習プログラムを修了した者を登録するデータベース(人材バンク)を構築し、当該者に対する教育委員会による特別免許状の授与審査や採用試験の簡略化を促進
【大学入試・社会との接続】
初等中等教育段階で英語4技能を総合的に育成する教育を受けてきた生徒が大学に入学してきていること、また大学卒業・就職後の産業界等でも英語力の必要性が高まっていることを踏まえ、高等学校教育と大学教育をつなぐ大学入試における英語力評価の充実等を図る。
▼4技能の総合的な英語力評価も含めた入試の好事例の公表
▽現状と課題
入試における総合的な英語力評価の先進的な事例のノウハウを他大学にも普及していくことが必要
▽今後の取組
・3・4年度の大学入試において、4技能の総合的な英語力評価を導入している好事例について、その導入に至る背景・課題、制度設計のポイント、実施体制等を入試の好事例集としてまとめて公表し、各大学の取組を促進する
▼私学助成・国立大学法人運営費交付金によるインセンティブの付与
▽現状と課題
4技能の総合的な英語力の育成・評価を普及していくため、各大学のモチベーションアップを図ることが必要。
▽今後の取組
・私立大学等改革総合支援事業(私立大学等経常費補助金)における調査項目を見直し、4技能の総合的な英語力を評価した入試を行っている大学に対し加点する
・国立大学法人運営費交付金において、4技能の総合的な英語力の育成・評価に関する優れた取組等を進める組織整備に対して支援することを、5年度概算要求に係る事務連絡上で明確化する
▼4技能別出題状況・英語資格試験導入状況の実態調査・可視化
▽現状と課題
わが国の大学入試における英語力評価の実態を可視化するとともに、英語力を高めたいと努力している受験生への情報提供の充実を図ることが必要。
▽今後の取組
・入試の英語科目における4技能別の出題状況および英語資格・検定試験の活用状況について、2年度入試に続き4年度入試に対しても選抜区分ごとの実態調査を行い、全体としての傾向を把握し、今後の政策立案に活用する
・入試における総合的な英語力評価や英語資格・検定試験を導入している大学については、英語力を高めたいと努力している受験生への情報提供の充実を図るため、大学名等を公表し、各大学の取組の見える化を進める
▼アドミッション・ポリシー見直し促進のための教学マネジメントのあり方の検討
▽現状と課題
大学入試のあり方に関する検討会議の提言を踏まえ、入学者受入の方針(アドミッション・ポリシー)において、入学者に期待する英語力についても明確にしていくことが必要。
▽今後の取組
・総合的な英語力の育成の観点から、教育理念や教育内容等を踏まえどのように入学者を受け入れるかを定めるアドミッション・ポリシーについて各大学における見直しを促進するため、文部科学省において教学マネジメントのあり方を検討することで、各大学における入試の充実を促す
▼大学教育における英語教育の充実
▽現状と課題
初等中等教育を通じて培い、受験準備でも伸長を求めた英語力が、大学入学後の教育で必ずしも十分に伸ばせていない実態があるとの指摘がある。
▽今後の取組
・学生の英語力の目標値設定および達成支援、学修成果・教育成果の把握・可視化など、各大学における総合的な英語力の育成・評価の取組を好事例として周知を図り、各大学の取組を促進する
▼大学生に期待する英語力等に関する積極的な情報発信の要請
▽現状と課題
卒業生の受け皿である社会が必要とする英語力の水準が必ずしも十分に可視化されていない。
▽今後の取組
・大学入試のあり方に関する検討会議の提言を踏まえ実施した「社会で求められる総合的な英語能力に関する調査」の結果を経済団体等に広く周知するとともに、企業が大学生に期待する英語力等についてより積極的に情報発信することを要請する
【国際交流体験活動・文化発信の推進】
学校外における高校生の国際交流体験活動や文化発信を推進し、わが国でのG7開催などを契機に若者に開かれた日本をアピールする観点から、留学生と日本人生徒が交流する国際交流キャンプの実施や、国立青少年施設における国際交流事業を実施する。
▼留学生との国際交流キャンプの実施
▽現状と課題
・高校生の意識として、外国への関心が低く内向き志向が課題。学校外において一定期間英語を中心的に活用する環境に身を置くことで、英語学習の抵抗感の減少や意欲を喚起するとともに、国際交流活動を通じて参加国やわが国の文化を発信する機会等を増やしていくことで海外に対する関心を醸成することが必要。また、新型コロナウイルス感染症の拡大によって高校生留学生や国際交流事業にも大きな影響を及ぼし、我が国のイメージも毀損している。
▽今後の取組
・文化の異なる国の優秀な留学生と日本人生徒が共同生活をしつつ、国際社会での現実に即した英語交渉や文化発信・交流を行う事業を実施
・国際交流体験を通して、国際的な視野や、海外留学への関心を醸成し、国際的に活躍できる人材育成を推進
・G7サミットの日本開催などを契機に、若い世代に開かれた日本を世界にアピール
▼国立青少年施設における国際交流事業の実施
▽現状と課題
子どもたちの体験活動の拠点である国立青少年施設において、青少年の異文化理解の増進を図るため、国際交流活動を推進していくことが必要。
▽今後の取組
・国立青少年施設で行われている国際交流・異文化理解活動(イングリッシュキャンプ等)の取組をさらに推進
・地域課題を解決するための高校生向け探究プログラムにおいて、英語を活用して取組を推進
【海外留学の促進】
新型コロナウイルス感染症の拡大は、わが国だけでなく世界各国において、大学間交流や学生間交流などに深刻な影響があった。日本人学生・生徒が海外に飛び出し、日本では得がたい様々な経験を積み、多様な価値観を持つ世界中の人々との交流することによって異文化理解の促進、アイデンティティの確立、国際的素養のかん養等、産学官を挙げてグローバル人材の育成を図る。
▼海外留学の拡大と段階に応じた留学支援の強化
▽現状と課題
新型コロナウイルス感染症の拡大によって上昇基調にあった日本人の海外留学者は激減。多様な文化や価値観に触れ、世界中の人々や国内の多様な文化的・言語的背景を持つ人々と協働できる力、広い視野で自ら課題に挑戦する力を身に付けた真のグローバル人材として育成していくことが不可欠。
▽今後の取組
・日本人学生の海外留学(海外留学支援制度等)の強化
・高校生への留学支援の強化
・高校段階における国際交流体験の充実
・留学を希望する生徒・学生の段階(高校生、学生(学部、修士、博士))に応じたシームレスな留学支援・促進策の最適パッケージ化の推進
▼「トビタテ!留学JAPAN」の発展的推進
▽現状と課題
平成25年度から官民協働で若者の海外留学を後押しする「トビタテ!留学JAPAN」を推進し、語学力や対外発信力も含め、グローバルに活躍できる資質・能力の育成に大いに寄与している。
▽今後の取組
・海外留学の機運を再び醸成し、若者の海外留学の促進に向けて、企業・地方自治体等の参画を促進することで、官民協働によって「トビタテ!留学JAPAN」を発展させた事業を推進
(国 2022-08-10付)
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