道教委 第5回近代美術館検討会議 教育普及はハードから 新機軸を明確に打ち出して
(道・道教委 2022-09-12付)

 道教委は7日、道立近代美術館とオンラインで、第5回これからの北海道立近代美術館検討会議を開いた。事務局が5本柱としたコンセプト案などを示し、構成員からは「どう社会に貢献したいかなど社会的アウトカムを入れるべき」「課題は押さえているが、新機軸を入れていない」といった指摘や「教育普及事業についてはハード面から盛り込んでほしい」といった要望が出された。

 同館は昭和52年に設置されことしで45年目。老朽化が進み、収蔵環境やスペースの狭あい化などの課題が生じており、耐震基準等は満たしているものの、道の長寿命化診断では、収蔵品を移転できないなどの要因で長寿命化に適さないとの診断結果が示された。

 検討会議は、これまでの近美の活動を検証し、今後の在り方や役割について専門家等の意見を聞くもの。

 5回目となるこの日は、ミッション案(ヴィジョンを意識した、今後の道立近代美術館の使命や役割を示すもの)およびコンセプト案(ミッションを達成するための柱となる概念・基本思想)などを事務局が示し、意見を募った。

 ミッション案は「北海道立近代美術館は、すべての道民が美術の持つ豊かさを享受できる社会づくりの場となります。また、多様性の尊重等、今日の課題を視野に入れながら、創造的で公共的な美術館活動を進めることによって、未来に向かって進む北海道のシンボルとなります」とした。

 コンセプト案は5本柱とし―

①伝える(基本機能の進化)

 調査研究、収集保管、展示、教育普及によって美術作品の美的・歴史的意義等を現在と未来の人々へ伝えるという美術館の基本機能を、社会の変化に即して進化させていきます。

②刺激する(感性と好奇心の活性化)

 地域性、国際性、時宜性、将来性を重んじた独創的な調査研究や企画によって、人々の感性と好奇心を刺激し、活性化させ続けます。

③包み込む(包摂とアクセシビリティの向上)

 すべての世代に、障害や距離の有無等に関わらず美術館を楽しんでもらうために、ユニバーサル・デザインやデジタル技術の活用、ソフト・ハードのバリアフリー化等によって、利用しやすさを向上させます。

④招く(居心地の良い施設と環境)

 都心にありながらみどり豊かという立地を活かして、居心地がよく、また、人間の活動と自然の営みとの調和を実感できるような、施設と環境の整備を進めます。

⑤結ぶ(ネットワークの拡張と地域との協働)

 様々な人々との間にネットワークを広げ、地域の課題に美術館活動の知恵とノウハウを提供し、協働することによって、地域の活力向上に貢献します。

―とした。

 構成員からは「どう社会に貢献したいかなど社会的アウトカムを入れるべき」「過去の課題に対する対応はしっかり述べているが、これから行う新機軸が入っていない」「美術に限定するより幅広い文化的な言葉を入れた方がいい」「他の国でも分かるよう英語での表記も入れてほしい」「近代美術館に来るとこんな面白いことがある、楽しいことがある、ということが見えないといけない」「教育普及事業についてはハード面からそのための整備をしてほしい」などの意見が出され、事務局は「新機軸については今後検討し盛り込んでいく」などと答えた。

 また、現在の近代美術館の老朽化・狭あい化した現状や、先進地の特色ある美術館について写真と共に示し、構成員からは「立派な施設は考えを明確に打ち出した議論の結果。そうした美術館を建てる際どのような議論があったか調べるといい」「世界からの集客を求めるなら世界を認識するべき」などの意見が出された。

 事務局から市民の作品を展示するギャラリーの設置について意見を募ると「地域からのニーズが高いなら作った方がいいが、展覧会に来る層とギャラリーに来る層は全く違い、相乗効果はない」「釧路芸術館では、常設展がない代わりに市民が活用できるフリーアートスペースがあり、子どもの工作展の時に最もにぎわう。そうしたことで認知されるのも良いのでは」などの意見が出された。

(道・道教委 2022-09-12付)

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