札幌市内小学校 夏休みの宿題 自由研究 減少傾向に コロナ契機に任意提出も
(札幌市 2022-09-12付)

札幌市創意くふう作品展
一昨年の札幌市創意くふう作品展。創造性豊かな自由研究作品が並んだ

 親子、友達と頭を悩ませ、共に作品を作り上げた自由研究。札幌市内の小学校で近年、夏休みの宿題の一つとして課す学校が減少しつつある。新型コロナウイルス感染症が急拡大した2年が転換期となり、ある区では半数の小学校でなくしているという。一方で、児童の任意による提出に切り替える学校も増えている。学校関係者は、共働き世帯が増加し保護者への負担が増加するなど、家庭を取り巻く環境の変化に理解を示しつつ「児童たちが自主的にやり遂げた自由研究は夏休みの誇り」と話す。

 自由研究は、昭和22年の学習指導要領で教科として位置付けられたのが始まり。その後、26年の学習指導要領改訂で教科外活動の時間と改められ、発展的解消をみた。一方で、児童の興味・関心を大切にするとともに、自主性や問題解決能力を育てることを目指して、長期休業中の宿題に姿を変えて現在に至っている。

 長年、当たり前だった自由研究が近年、変わりつつある。学校関係者によると、百貨店や書店で夏休み自由研究キットが増え、それを作品として提出するケースが増えているという。学校管理職や教諭らは、保護者の負担が大きいことに一定の理解を示しつつ「自由研究のねらいが子どもや保護者にしっかりと伝わっているのか。自分で調べたり工夫したり、自主的なものでなければ意味がない」とため息を漏らす。

 いまだ終息をみせない新型コロナ感染症の感染拡大も、自由研究の在り方を変えた大きな要因。2年4、5月、感染症の爆発的な流行により、全国の学校で一斉臨時休校の措置が取られた。これに伴い、学習時間の確保を目的に夏季休業期間の短縮を余儀なくされた。市内の複数の学校では、コロナ禍でストレスが増した児童たちのリフレッシュや、家庭で過ごす時間確保などのため、自由研究を課すことを取りやめた。

 こうした学校では、コロナ禍を契機に、現在も長期休業期間の自由研究を再開させていないところも散見される。ある学校は「自由研究を取りやめ、宿題のみを課す現在のスタイルが定着している」と説明する。市教委担当者も「実際に(実施校数などを)調査したわけではない」と前置きしつつ「取りやめる学校が増えていると聞いている」と話す。実際、ある区の校長は「区内の半数の学校が取りやめている」と明かす。

 また、教職員の働き方改革や、学習塾の夏季講習を受講する児童の増加など、夏休みの生活の変化などを要因に挙げる声もある。

 一方で、児童全員に自由研究を課すのではなく、任意での提出に切り替えた学校が複数ある。三角山小学校(渋谷一典校長)では昨年、教員らが自由研究の意義や今後の在り方などについて議論。「児童たちに自主的に、積極的に取り組んでもらいたい」と願い、本年度から任意での提出に見直したという。

 田口牧教諭は当初「実際に取り組んでもらえるか不安だった」と話すが、夏休み明けには多くの児童が作品を持ち寄ったと振り返る。「自由研究に取り組むことは簡単ではなく、家族の助けが必要になる場面も多い。やり遂げた自由研究は夏休みの誇りと言える」と、児童たちの頑張りをたたえる。

 資生館小学校(村元秀之校長)も、本年度から任意提出に切り替えた。菅野智広教頭は「家庭学習の延長として自由研究に取り組んでもらえれば」とし、保護者の負担に配慮しながら、児童の自主性に期待する。

 自由研究の作品を展示し、児童たちの創意工夫教育の育成・向上を図ってきた札幌市創意くふう作品展は、今月開催する作品展をもって終了する。昭和50年代後半から平成初頭にかけて、多いときには40校から500点余りの出品があったが、ここ数年は半減。青田佳寿紀実行委員長(手稲山口小校長)は「参加校が固定化し、出品数も大きく減少した。閉会することは本当に残念」と話す。会の活動を通して「児童の科学する心や創造する喜びを育むことができたと思っている」と振り返る。今後も新しい時代を迎えた自由研究を通して、自主性や創造性にあふれた児童の育成を願っている。

(札幌市 2022-09-12付)

その他の記事( 札幌市)

札幌市教委4年度学力・学習状況調査実施報告書③ 中学校 全領域で全国以上 小学校は地球領域で全国超に

札幌市教委学テ実施報告書理科 理 科 小学校 【「エネルギー」を柱とする領域】 【「粒子」を柱とする領域】 【「生命」を柱とする領域】 【「地球」を柱とする領域】 ▼課題 ▽予想が確かめられた場合に得られる...

(2022-09-13)  全て読む

冬季競技普及に1.5億 札幌市 3定補正予算案

 札幌市は12日、21日に開会する第3回定例市議会に提出する補正予算案を公表した。教育・子育て関連では、ウインタースポーツ普及振興費の追加として1億4900万円を計上した。市立小・中・高校の...

(2022-09-13)  全て読む

4年度運動機会の充実環境整備推進校 小15校、中5校選定 札幌市教委 子の習慣定着へ

 札幌市教委は、学校における運動機会の充実を図る環境整備推進事業の本年度推進校を決定した。授業以外で子どもの運動機会の創出を図る環境整備推進校として小学校8校、中学校2校、1人1台端末を活用...

(2022-09-13)  全て読む

札幌市教委4年度学力・学習状況調査実施報告書② 小・中とも図形で全国超 中学校は関数、データ活用も

表 算数・数学 小学校 【数と計算】 ▼課題  示された場面を解釈し、除法で求めることができる理由を記述すること。 ▼改善の方向  日常生活の問題を解決するために、一つ分、幾つ分の大...

(2022-09-12)  全て読む

22日 21園で保育公開

22日 21園で保育公開 北私幼、札私幼が研究大会  道私立幼稚園協会(北私幼、近藤宏会長)、札幌市私立幼稚園連合会(札私幼、藪淳一会長)は22日から2日間、札幌市内のカナモトホールなど...

(2022-09-12)  全て読む

札幌市教委4年度学力・学習状況調査実施報告書① 小学校 読み書きで全国以上 中学校は言葉の特徴等で全国超

表2  札幌市教委は、4年度全国学力・学習状況調査実施報告書を取りまとめた。ここでは、小・中学校各教科の概要や改善の方向性、児童生徒質問紙調査における結果と分析を連載で紹介する。 国 語 小学...

(2022-09-09)  全て読む

静岡県の3歳女児死亡で札幌市 安全管理の徹底を通知 バス乗降時の人数確認など

 静岡県牧之原市の認定こども園で、3歳の女児が通園バスの中に取り残され死亡したことを受けて、札幌市子ども未来局は7日、市内の保育所や認定こども園、認可外保育施設などに対し、安全管理の徹底を求...

(2022-09-09)  全て読む

札幌市 家庭教育学級の開設状況 4年度80校 回復傾向に オンライン開催定着等が効果

表1  PTAが運営し、家庭における教育力向上のため、親同士が集まり自主的に学ぶ場「家庭教育学級」。過去10年の札幌市内の開設状況をみると、平成25年度は180校で実施していたが、新型コロナウイル...

(2022-09-09)  全て読む

札幌市立大看護学部 模擬講義 17~25日に配信 市立高ポータルで閲覧受付

 札幌市教委は、17~25日の期間にオンデマンド配信する札幌市立大学(看護学部)模擬講義2022の募集を開始した。  札幌市立大では、札幌市立高校との連携事業の一環として、看護学部およびデ...

(2022-09-09)  全て読む

札幌市教育ビジョン振り返りシートの概要⑲ 電子書籍貸出2.5倍に 読書する子の割合 減少傾向に

【市立図書館における読書・学習環境の充実】 ▼現行計画策定時の課題  貸出登録者数が市民の約3割にとどまっており、また、レファレンスサービスをはじめとする各種サービスを知らない市民が多い...

(2022-09-08)  全て読む