オール檜山学び合いプロジェクト　管内の資源理解深め　アイヌの歴史と文化テーマに

（道・道教委 2022-10-25付）

オンラインで２１人が参加

　【函館発】檜山教育局は１４日、オール檜山学び合いプロジェクトをオンラインで実施した。上ノ国町教委文化財グループの塚田直哉主幹が「アイヌの人たちの歴史と文化」をテーマに、学習に役立つ管内の見学施設や社会科における指導のポイントを紹介。アイヌ民族の生活に触れることができる貴重な管内の環境資源を生かし、児童生徒に正しい知識を身に付ける指導を求めた。

　「アイヌの人たちの歴史や文化」は社会科の新学習指導要領において、児童生徒の発達段階を考慮しながら正しい知識を身に付けさせることが求められている。

　適切な指導を図るため、今回は上ノ国町教委の塚田主幹がアイヌ民族の歴史や文化について解説したほか、道南地域の文化施設を紹介。管内の小学校教員２１人が参加した。

　管内におけるアイヌ民族の現状について、平成１５年北海道アイヌ生活実勢調査を引用し、振興局別の人数を紹介。様々な社会背景によって、民族であることを公にできない実態を明かし、近代のアイヌ政策を理解する必要性を訴えた。

　町の取組として約３０年にわたって行われているアイヌの慰霊祭を紹介。　

　アイヌと和人の戦いで亡くなった首長・コシャマインを弔うもので「イチャルパ」と言われる先祖供養や感謝祭などの一連の儀式を体験できることを伝え「管内でアイヌの人と交流できる貴重な機会」と述べた。

　町は和人地と蝦夷地の境目にある地域だったことを解説し、国史跡勝山館跡で発見された多くの資料や出土品について解説。

　見つかった墓や出土品の写真を示し、骨格器と呼ばれる装飾品やガラス玉等の出土品から垣間見える当時の生活風景を説明。

　埋葬方法の違いから読み取れる和人とアイヌ民族の宗教観や考え方について「和人は神仏習合の信仰であるのに対し、アイヌ民族は独自の宗教観を持つ思想がうかがえるが、日本古来の考え方も持っていることが理解できる」と説明した。

　和人との共生時、アイヌ民族は交易を盛んに行っていたという時代背景を踏まえ、せたな町においても交易を行っていた可能性を周知。生涯学習センターでは、室町時代の出土品や資料を展示しており、檜山北部で生活していたアイヌ民族の歴史に触れることができることを紹介した。

　このほか、上ノ国町の重要文化財旧笹浪家住宅は、アイヌ服「イクパスイ」などを通して江戸時代におけるアイヌ民族の生活を知ることができる施設であることを説明。町教委で企画したアイヌ歴史体験プログラムでは、アイヌ模様のエコバッグ制作など環境学習と結び付けた取組を行っていることを紹介した。

　塚田主幹は社会科における適切な指導について「アイヌの歴史文化を理解するためには、和人の歴史文化も知る必要がある。それぞれの違いや共通部分を理解する教育が求められる」とし、身近な見学施設を活用した学習を推奨した。

　講話後、参加教員からは「外部講師として是非授業に参加してほしい」などの感想が寄せられた。

(道・道教委 2022-10-25付)