教育振興会と退職校長会が教育会議 “地域で”育てる意識を ICTの地域間格差が課題(関係団体 2022-12-20付)
本道の教育課題等について率直な意見交流が行われた
道教育振興会(濱田美樹会長)と道退職校長会(黒坂由紀子会長)は9日、ホテルライフォート札幌で第21回北海道教育会議を開催した。全道の校長、教頭、PTAなどオンラインを合わせ約100人が参加。主題「“令和の日本型学校教育”で目指す子どもの姿をどのように実現するか」のもと意見を交流し、家庭、学校、地域における教育の指針となる「推進指標」を決定した。意見交流ではICTの地域格差など様々な課題や意見、情報が寄せられた。
両会は昭和59年度から本道の教育の正常化を願い、諸問題を協議する教育懇談会を開催。平成14年度からは教育関係機関・団体が一堂に会し、教育に関わる喫緊の課題を議論し、その成果を本道教育の指針として共有する場として北海道教育会議を開催している。
はじめに道教育振興会の濱田会長があいさつ。「急速に変化する予想困難な時代にあっては、家庭・学校・地域が連携・協働して教育に取り組むことが重要」とし「会がその役割を果たすことができれば」と期待した。
また「本日は、各団体等からいただく情報提供を踏まえて協議し、推進指標が北海道教育の指針として全道に広がり、子どもたちの健全な育成につながることを期待する」と述べた。
続いて主題と副主題「自分のよさや可能性を生かし多様な人々と協働しながら様々な社会的変化を乗り越えようとする子どもを育むには」、推進指標案を説明し、これらを踏まえ意見交流を行った。
道高P連から「高卒者の就業後3年目の離職率は3、4割にも上る。職業体験はできなくても、世の中にどんな仕事があるか、その仕事に就くには何が必要かといったことを教えてほしい」「コミュニケーションなど勉強以外の社会に出てから役立つことを教えてほしい」との声が出され、高校側は「同窓会の先輩が講演に来て話してくれている。第三者から話を聞くことで生徒もすっと頭に入っている」などと話した。
札幌市PTA協議会からは「学級・学年の様子を伝えるお便りが親と子の会話に非常に役立っている。ぜひ小まめに学校の様子を教えてほしい」「失敗がないと成功もない。学校ではたくさん失敗させてほしい」「不登校の子がフリースクールに行っても、学校に戻れるような柔軟なシステムとマンパワーがほしい」など、道P連からは「ICTをまだ学校が活用しきれていない。地域差も著しい。最低限の活用ラインを設けてほしい。苦手だからと得意な人に任せるスタンスではなく、一体となって取り組む必要がある」「学校は正解を求めるところではなく、コミュニティーとして、対面して対話して相手との違いなどを学ぶところ」などの声が出された。
続いて札幌市教委の伊達峰史教育課程担当課長が話題提供。
「学校は地域に浮かぶ船。どこに向かうかは家庭・地域と共有する必要がある。航海図は今まで学校がつくっていたが、家庭・地域の声を反映させ、合意形成する時期にきている」「中学校区でグランドデザインを地域・家庭でつくり上げること。教育委員会は市としての航海図を示す。学校はその大きな指針の中で地域の具体に合わせて計画を立てることが大切」などと述べた。
道小からは「1人1台端末はほぼ達成され、小規模校同士の交流が進んだ。へき地と都市部の交流も進んだ」「専科教科担任制は、免許を持った教員が足りず、低学年の指導が薄くなっている。2つの町で3校を回り、1回の移動が70㌔に及ぶ例もある。加配ではなく定数で配置してほしい」との声が上がった。
各地の教育振興会からは
「ICTの環境整備に地域格差がある。子どもが休んだときのオンライン授業など環境の整備が大切」「人口がどんどん減り、小規模校が多くなっており対話的学びの相手がいない」「新型コロナのため地域との交流がストップしている。ICTを使って他校とつながるのが希望」「地域の行事がなかなか再開できない。コロナ禍が明けてからもできるかどうか危機感がある」などの声が出された。
続いて道立教育研究所の松浦隆史研修部研究主幹が話題提供。
「北海道の教員は40~50代が多く、大量退職の時代が迫っている。初任者等の研修を十分にし力を付けていかないといけない」「効果的な研修が必要であり、ウェブを活用した学校にいながらの研修、午後日程の研修など、学校の授業に穴が開かないよう工夫している。希望を募っての授業公開は、文部科学省の視学官や大学教授等からアドバイスや講評を受けることができる」などと述べた。
中学校からは「ことし創設22年目の親父の会は、地域の方約130人が参加し様々な活動を行っている。総合的な学習の時間には、おやじの会が講師となり、職業や得意な分野のメッセージを伝える。自分の親や近所の方から人生観、生き方を学んでいる」「大人が地域の子は地域で育てるという当事者意識を持ち、生き生きしている姿が子どもにとって一番大事。そうして育った子が親となり、またそうした子を育てるという好循環になっていく」「いじめや不登校への対応に学校は多くの時間を割かれている。学校、家庭、地域が子どもへの思いや困り事など情報を交流し、子どもを真ん中に考えていくことが大切。令和の日本型学校教育の実現には、学校だけでは限界がある」「札幌市は小中一貫した教育、コミュニティ・スクールを検討しているが、新型コロナで地域との関わりがストップしていることが不安」「実際に社会に出て活動している時の子どもの目の輝きは端末を見ている時とは違う。何とか工夫していきたい」「部活動の地域移行は大変大きな課題だが、5年度は4年度並みのやり方しかない。PTAや地域の力を借りたい」といった声が出された。
道国公立幼稚園・こども園長会からは「コロナ禍の3年間で子の育ちがゆっくりになってきている。経験が不足しており、幼稚園に来て初めて親以外の大人と関わるなど体験の量に差が出ている」「体験を通して学んでいないとひずみが出てくる。育ちきれないまま小学校に送っている状態」「幼少接続は、地方は町ぐるみでやっているが、都市部ではもっとつないでいかないとつながらない。札幌は今10区に9園あるが、2年後には5園になる。幼少の接続ができるよう、公立私立が一緒になって研修を進めていきたい」などの声が寄せられた。
道特別支援学校長会は「特別支援学校は、一人ひとりに個別の教育支援計画をつくり、保護者と共有して教育を行っている。子どもの良さ、保護者の願い、本人の希望をもとに、保護者が教育の一部に深く入っている」「子どもの抱えている困難の解消ではなく、良さに着目し、できることを伸ばしていく。高校生の離職率に驚いたことがあるが、特別支援では極めて少ない。小さいころから子どもの良さをベースにした教育をしているからだと思う」などの情報を寄せた。
最後に、道教委社会教育課の佐々木直人主査が話題提供。
「交流の場は絶対に必要なもの。越境的な学びをすると子どもの視野はどんどん広がっていく」「新型コロナの影響で、地域から何かをやりませんかと持ちかけるのはハードルが高い。CSなどで対話を深めてほしい。社会教育委員や社会教育課を媒介にしてより地域と話す場を持ってほしい」「“もっと言ってくれたら良かったのに”という声をよく聞く。互いに遠慮し合ってしまっている。子どもの成長は大人の対話度を超えない。CSや社会教育関係者をうまく活用してほしい」などと述べた。
このあと推進指標について審議し全会一致で承認。全道で教育を展開する際の指針とした。
推進指標
「令和の日本型学校教育」で目指す子どもの姿を実現するために、「自分のよさや可能性を生かし、多様な人々と協働しながら様々な社会的変化を乗り越えようとする子どもをどのように育むか」という視点から、あるべき姿や具体的な手立てを共有し、家庭・学校・地域が連携・協働していく
▼家庭では、子どもが自分のよさを生かし、他者と協力してよりよい生活を送ろうとする家庭環境をつくる
▽子ども自身が自分のよさや可能性を認識し、生かそうとする団らんの場を作りましょう
▽学校・園と育みたい子どもの姿を共有し、子ども自身が自分のよさや可能性を生かし、関わる人たちと協力しようとする目標づくりを支援をしましょう
▼学校では、「個別最適な学び」と「協働的な学び」の一体的な充実を図る
▽「主体的・対話的で深い学び」や「社会に開かれた教育課程」の充実を目指すとともに、学校の“働き方改革”を積極的に推し進めましょう
▽家庭や地域と連携しながらICTの環境を有効に活用し、子ども自身が自分の学びの過程や高まりが自覚できるような展開の工夫を図りましょう
▼地域では、学校や家庭と連携して子どもの成長を支える体制づくりを進める
▽子どもが地域のよさや課題を知るきっかけを得られるように学校や家庭に様々な方法を駆使してはたらきかけましょう
▽学校や家庭を支えることで地域も活性化する環境を整備していきましょう
(関係団体 2022-12-20付)
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