【社説】安定的予算確保は未来への責務
(国 2023-01-01付)

 中学校部活動の地域移行や新たな教員研修体制の構築など、5年度は教育を取り巻く環境が大きな動きを見せる1年となる。文部科学関係概算要求をみると、活用段階に入るGIGAスクールの充実、デジタル教材活用の調査研究などに資する予算配分が目に留まる。

 一方で、小学校35人学級の整備や高学年の教科担任制推進を担う義務教育費国庫負担金の要求額は、前年度予算額並み。教員の働き方改革、複雑化・困難化する教育課題への対応は、緩やかな前進にとどまる。

 施策の着実な実現には十分な予算確保が必要不可欠。しかし、近年の予算をみると、厳しい状況が待ち受けていると言える。

 平成28年度以降の文部科学関係予算は、5・3兆円台で推移。概算要求段階では5・8~5・9兆円台となっており、要求の9割程度を堅持している。ただ、科学技術関係費を除いた文教関係予算を一般会計に占める構成比でみると、平成28年度の4・2%以降、令和3年度には4%を割り込み、4年度は3・7%に落ち込んだ。

 OECDが公表したデータをみても、わが国の初等~高等教育の政府総支出に占める公財政支出割合は2019(令和元)年時点で7・8%と、加盟国平均の10・6%を大きく下回った。対GDP比でも平均4・4%を下回る3・0%にとどまった。各国の状況が異なり単純比較はできないが、わが国の教育への投資は十分とは言い難い。

 国は近年、補正予算を含めた15ヵ月予算として編成。3年度補正予算では、GIGAスクール構想の推進やICTを活用した授業環境高度化など、喫緊の課題に対する予算が措置された。文科省のこうした姿勢は一定程度評価される。

 しかし、教育予算は、流動的な要素が多い補正予算ではなく、当初予算段階で安定的に確保される必要がある。全国都道府県教育長協議会は「諸外国の公財政支出等の教育投資状況を参考にしつつ、安定的な財源を確保し、総額の拡大を含めた教育予算の充実」を求めている。

 「令和の日本型学校教育の構築」の実現は、先行き不透明な時代を生き抜く全ての児童生徒に等しく享受されるべきものだ。様々な教育改革を国策として推し進める以上、長期的視点で安定的に予算を積み上げてこそ、未来への責任を果たすことにつながる。

(国 2023-01-01付)

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