【リポート】札幌もみじの森小 道徳で「ChatGPT」 AI時代の学び方とは 情報活用能力育む授業目指して(札幌市 2023-03-13付)
端末でAIの回答を確認する児童たち
札幌市立もみじの森小学校(大嶋稔康校長)で1日、札幌国際大学の安井政樹准教授による未来そうぞう学習「AI時代の学び方教室」が開かれた。6年生が「ChatGPT」などのAIチャットを体験し、AIをどのように学びに生かすかを考えるもの。児童たちは、質問に対し即時に回答するAIの利便性を実感する一方で、得られた情報を吟味する必要性を指摘した。本格的なAI時代の到来が迫る中、教師と児童生徒が共に情報活用能力を養う授業の在り方が求められている。
6年1組の道徳科。安井准教授は冒頭、児童たちにAIのイメージを問いかけた。児童たちは「グーグル先生」「Siri」「アレクサ」「ロボット」などを挙げ、既に生活の身近にあることを確認した。
安井准教授は「友達ってどんな人?」「親友になるためには?」について議論を促した上で、複数のAIチャットを活用し回答する様子を紹介。児童たちは「今、考えているね」「回答が速い!」などと驚きの声を上げた。
「AIが答えてくれるのは便利だね。もう、みんなで話し合わなくてもいいんじゃない?」。安井准教授が児童たちに揺さぶりをかけると、「みんなと話し合うことが大事!」「友達にいろいろな考えがある。だから(考えが)豊かになる」などと答えた。一方で「これは誰の考え?」「(AIの答えが)正しいか分からない」「AIは辞書のようなもの」「AIは答えを1つしか出さない。みんなで話した方が良い」など、AIを学びに生かすための方策を考え合った。
◇
GIGAスクール構想の進展によって、学校現場でのICT活用が一般的な時代を迎えた。社会においても、Society5・0の到来に伴い急速な技術革新が進んでおり、AIが日常生活の一部になりつつある中、学習活動でも取り入れる議論が始まっている。
安井准教授は、道徳科でChatGPTを活用した理由を「人と語り合う良さを感じられる教科だからこそ」と説く。「社会科や総合的な学習の時間で活用すると“便利な面”が強調されてしまう。友情や信頼について考えながら、善悪の判断や節度制約などを組み合わせた情報倫理を伝える必要がある」と明かす。
一方で「子どもの情報活用能力育成の前に、教師の情報活用能力が試される時代が来た」とも指摘する。新たな視点を得たり、基本的事項を確認したりするなど、教材研究の手だてとしての活用例を挙げつつ「安易に児童生徒に情報を入力することがないよう配慮が必要」と警鐘を鳴らす。
出前授業を参観した6年1組担任の山田雄一朗教諭は「授業が単なる知識伝達では、AIに取って代わられる」と危機感を抱く。児童たちが、授業を通してAIの活用方法を深く考え合う姿を目の当たりにし「教師が教える授業から、児童が学び取る授業への転換に向けた具体的な手だてが必要」と話す。
大嶋校長は、短期間で1人1台端末を活用した教育が進展したことに伴い「アプリ等の機能を使うこと自体が目的となってしまうなど、学ぶ力を身に付けていくというねらいが、指導する側にも不透明な場面もあった」と振り返る。AI時代に求められる学びに合わせて「端末を活用した授業像を学校として明確にしていくことが大切」と口にする。
安井准教授は「技術はものすごいスピードで普及しているが、その使い方の指導が追いついていない」と話す。「使えるようになった技術を、どのように使うことが自分のためになるのか、時と場合、目的によって使い分けられる子どもの育成が不可欠」と訴える。変化の激しい時代を生き抜く児童生徒の育成に向けて、学校と関係機関が連携しながら研鑚を積むことが求められている。
◆キーワード
▽ChatGPT(チャットジーピーティー)=OpenAI社が昨年11月に公開した人工知能チャットボット。幅広い分野の質問に詳細な回答を生成できる一方、一見自然に見えるが事実とは異なる回答を生成することもあると言われている。
(札幌市 2023-03-13付)
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