ICT融合で部活動指導 プロの技術を生徒たちに 指導者育成にも期待 浦幌町
(道・道教委 2023-03-31付)

浦幌町・ICT融合部活動指導
プラットフォームで練習計画を確認する越前さんと生徒たち

 【帯広発】浦幌町内の中学校で今冬、スポーツ指導者の専門知識を蓄積できるICTシステムと対面・遠隔指導を組み合わせた部活動指導の実証事業が終了した。生徒の現状や課題のデータ化・蓄積に基づく個に応じた練習計画の立案、元プロアスリートの実践的な指導等により、生徒の技術・意欲の向上に大きな成果が見られた。部活動指導者の確保や教員の負担軽減の在り方などが全国的な課題となる中、実証成果の普及は「地域人材の現場参入や指導員の育成にもつながる」と期待の声が上がる。

 昨年11月、浦幌町で経済産業省の「未来のブカツ」実証事業が始まった。町立浦幌中学校サッカー部を対象に、十勝うらほろ樂舎理事を務めるA―bank北海道代表の曽田雄志氏が指導者として参画。元プロサッカー選手の立場から、基礎練習の方法や必要な観点を学ぶ対面指導と、遠隔指導としてミーティングを隔週で実施し、専門的な知識・技能を生徒たちに伝えた。

 2月上旬の遠隔指導では、曽田氏と生徒たちが日々の練習内容について意見を交わした。曽田氏が「ボールを置く場所やプレーの先を見る感覚」など、前週の対面指導を踏まえた実践について尋ねると、生徒たちは「周りを見ることが増えた」「パスのスピードなど、基礎をもっと練習したい」と答え、練習に対する意識の変化を確認した。

 日々の指導は外部指導員の越膳慧太さん(十勝うらほろ樂舎)が「NECスポーツ育成支援プラットフォーム」を活用して行っている。曽田氏が考案した練習メニューをシステムに蓄積し日々の練習計画立案に生かしているほか、部員一人ひとりの練習や試合の様子を記録することで生徒自身の振り返りにも活用している。

 越膳さんは「編集画面がシンプルで使いやすい」と、プラットフォームの利点を語る。「個人の部活動に対する目標設定に応じた練習内容を設計でき、全員が挑戦しやすい環境づくりにつながっている」と、生徒の意欲向上への効果を口にする。

 生徒たちは「曽田さんの指導は、練習に必要な視点をプロの目線で教えてもらえる」「個人のデータは、口頭での指導よりも自分の課題として理解しやすい」とそれぞれの利点を挙げる。

◆教員の負担軽減に貢献 多種目の導入も

 町内には高校がなく、若年層のスポーツ経験者が指導現場に入りづらい環境にある。越膳さんは、プラットフォームの活用が「指導への自信がないスポーツ経験者を、現場に連れてくる一つの手だてになる」と話す。中核となるプロの指導者が練習メニュー等を送り、地域の人材が練習計画を立案して子どもに伝えることができるからだ。コーチングの手法や効果的な指導方法など、曽田氏から得た学びを振り返り「地域の指導者育成にもつながる」と手応えを感じている。

 一方、顧問の教員の負担軽減にもつながっている。プロの指導者や外部指導員が指導を担当することで、教員は部活動の進行における事務・管理の業務に注力できる。「経験のないスポーツの指導を専門の指導者に任せることができ、他業務に必要な時間を確保できる」と胸をなで下ろす。

 実証事業は2月で終了したが、同校サッカー部では継続してプラットフォームを活用。バドミントン部など、他種目への導入も進んでいる。今後は生徒の思考力・判断力を育成するための適切な期間を設けたフィードバックなど、事業推進によって明らかになった課題を検討していく。

 児童生徒が持続的にスポーツに親しむ環境を維持するための一手として、ICTを活用した部活動指導の在り方に注目が集まっている。

(道・道教委 2023-03-31付)

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