【解説】食物アレルギー事故防止へ(解説 2023-05-31付)
食物アレルギーによるアナフィラキシーショックへの対応は、エピペン投与が有効な手段であることは論を待たない。一方で、エピペンは医師の診断のもと処方される薬剤で、学校に常備することは現法下ではかなわない。広域分散な地域医療、薬剤の所持忘れや予期せぬ発現時の緊急対応など、本道の学校現場の大きな課題として横たわる。
食物アレルギー疾患のある児童生徒が在籍する道内小・中・高校、特別支援学校の割合は9割前後。対して、生活管理指導表の提出状況は小学校で7割、中学校で6割弱、高校で3割。エピペンを保持する児童生徒の在籍は、いずれの校種も3割前後にとどまる。
ことし2月、道内の中学校で発生した食物アレルギー事案。養護教諭や校長らによる迅速かつ適切な対応によって大事に至らなかったが、学校給食におけるアレルギー対応の重要性があらためて注目された。
平成24年、東京都調布市で発生した事案では、発症からわずか14分で心停止に至った。エピペン投与は医療行為だが、学校での教職員による緊急投与は厚生労働省の見解で「医師法違反に当たらない」。緊急時は迷いない投与や救急要請など迅速な対応が不可欠だ。
近年は食物アレルギーのある児童生徒が増加傾向にあり、予期せぬアナフィラキシーショック発症のリスクがつきまとう。エピペンの学校での保管は対象児童への使用に限られ、不測の事態に対応するための常備は認められていない。
海外諸国では、学校での緊急使用を想定し、常備を義務付ける法整備が進んでいるという。地域医療圏が広大な本道の特性を踏まえると、児童生徒の命を守るエピペン常備に向けた「法改正の議論を加速させるには、学校現場の声が必要」(医療従事者)とする意見が広がりつつある。
(解説 2023-05-31付)
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