【解説】闘病・学習への意欲向上に効果

（解説 2023-06-16付）

　高校・特別支援学校高等部における遠隔教育は平成２７年度から制度化。広域分散型の本道では長期間の療養を要する入院生徒を受け入れる病院が札幌市をはじめとする都市部に集中し、在籍校の教員が病院を訪れて対面による指導を行うことに難しい課題があった。

　このため道教委は２年度から文部科学省の指定を受け、高校段階における入院生徒に対する教育保障体制整備事業を開始。推進校において同時双方向型の遠隔授業を実施するとともに、治療内容や体調不良によって欠席する場合は授業動画を収録したオンデマンド教材を配信するなど、学びの保障に取り組んできた。

　病気療養中の生徒は治療状況によって学習時間が前後することもあるため、体調に応じ同時双方向型授業とオンデマンド型学習を併用。各教科で必要な学力のみならず授業前後でクラスメートとコミュニケーションを取る機会を提供した。

　生徒や保護者からは「クラスの雰囲気も知ることができ、復学後のイメージを持ちながら療養できた」「病気と闘いながらも進路の目標を持ち学校生活を送り卒業することができた」などの声が寄せられている。　

　円滑な実施を図るために運営組織を立ち上げ、教科担任・学年等の調整を担うコーディネーターを配置した学校も。４年度実施校のある教頭は「学習の遅れに対する不安解消や学校とのつながりを実感するなど心理的な側面も大きい」と指摘。ＩＣＴ機器の活用に積極的に取り組む教職員が増加し、教職員の意識にも変化が生じているという。

　病気療養中の高校生に対するオンデマンド型授業はこれまで文科大臣の指定を受けた特例校でのみ可能だったが、４月からは通常校でも実施可能に。道内の先行事例を踏まえた校内体制や効果的な指導方法の確立が求められている。

(解説 2023-06-16付)