札幌市教委 4年度人間尊重の教育 多様性に向き合う学校教育の推進② 大切にされている実感を 中央中 ピアシート作成へ(札幌市 2023-07-03付)
▼成果
▽後期生徒アンケート結果から、ほぼ全ての項目において肯定的な数値が上昇した。
▽各教科で、これまで実践してきた内容を精査し、実施時期を調整し、教科横断的な視点で、既習事項を他教科でつなげたり、行事の導入と振り返りの内容に関連させたりすることで、生徒の学びが広がりと深まりを見せ、人間尊重に係る感度が上がったものと考える。恥ずかしながら、新たな教材開発や教材研究を行ったわけではなく、これまでの教科の学びを整理しただけである。「まずは、ここから」という気持ちで取り組んだ実践ではあったが、これまでの教育課程の中に、「人間尊重の教育」に関する事柄がいくつも組み込まれていたのだと実感した。さらに、生徒が協働的に学びを進める機会を大切にするために課題探究的な学習をこれまで以上に全教科で意識して実践した結果、生徒の「学ぶ力」の育成にも寄与する結果となった。「人間尊重の教育」を学習の基盤とする札幌市の学校教育の重点は非常に重要な視点であると感じている
▽生徒会活動では「一人ひとりがより良い学校づくりのために参画意識を高く持ちながら主体的に進める生徒会活動」を目指し、活動してきた成果が、設問3「自分の声(意見や考え)が、生徒会役員に届く学校であると感じる」の数値上昇に寄与したものであると考える。
▽設問7「自分が大切にされている学校であると感じる」に関しては、授業や行事での協働的な活動や対話を重視した授業研究が数値上昇に起因していると考える。さらに、第3学年に関しては、1年間かけて、きめ細かな進路指導に従事してきた。その結果、生徒のコメントの中に「進路に関して先生方が真摯に向き合ってくれた」などの記載が増加した。さらに、各学年の中で、第1学年の上昇が最も高かった。入学時より生徒に寄り添いながら傾聴し丁寧に接してきた成果であると感じている。そこから、教師が生徒支援に係る感度を普段から上げ、生徒が本当に困っているときや、相談したい時に即対応できるような学校体制や教師の姿勢づくりを大切にしていくことが肝要であることが分かった
▼課題
▽全体的に肯定的な回答の数値は上昇したものの、否定的な回答の生徒が各設問で10~20%いるということが課題である。「人間尊重の教育」は札幌市の学校教育の基盤であることから、否定的な回答の生徒を教師側で把握して、教育相談や普段の生徒支援の場で適宜傾聴し、改善を図っていくことによって、一人ひとりの生徒の人権尊重意識を育み、支え励まし合う温かい人間関係の中で、健やかに成長していく生徒の姿を目指したい
▽4年度の取組の内容は、本校のこれまでの教育課程を「人間尊重の教育」の視点で整理したものであるため、特段新たな視点や活動を組み込んだものではない。5年度は、4年度の成果を整理・分析し、教育課程を「人間尊重の教育」の視点も含めながら再編していく中で、新たな取組(実践)を組み込んでいきたい。
▽保護者、地域の人々との連携を図る機会が少なかったことが課題である。コロナ禍ということもあり、積極的に参画していただく機会を設定することが難しかった。保護者や地域の方々と生徒が交流を図る利点は、特に、社会の現状や多様性(様々な人々がいるため)を深く理解できることであると捉える。5年度以降は、様々な機会を設定し、参画を促していきたい
▼これからの取組の方向性
▽4年度同様継続的に実践していくこと
今回の推進事業の最終目標は、われわれ教師や生徒の「態度形成」であることから、単年度の実施で完結するものではないと考えている。よって、5年度以降も「生徒一人ひとりが大切にされていると実感できる学校創り」を目指し、実践を進めていく必要がある。5年後、10年後の本校生徒の健やかな成長を目指し、カリキュラム・マネジメントしていく。また、4年度はこれまでの教育課程の整理に重きを置いていたため、5年度は新たな取組を追加していく方向である。以下の内容がそれに当たる。
・大学教授など専門家との連携
今回の実践で、宝塚大学看護学部教授日高庸晴氏の講演を拝聴できる機会があった。やはり専門家の話には事実に裏付けられた根拠と説得力があり、大変勉強になった。さらに、本校研修会において講演内容を還元することもできた。5年度以降は、研究協力者という立場で、道内大学や関係機関の専門家の方に意見や助言をいただく機会を設定していきたい。
・小中一貫した教育のグランドデザインの内容に「人間尊重の教育」の視点を追加
中学校3年間で「人間尊重の教育」は完結するものではなく、小学校段階からの積み上げを生かし、中学校で実践し、上級学校へとつないでいくことが理想である。そのためにも、今後はパートナー校と「人間尊重の教育」に関する教育課程のすり合わせを密に行い、児童生徒の学校生活の基盤となる内容にしていきたい。
・保護者・地域との関わり
本校では、社会を「家庭→学校→地域→市町村→北海道→日本→世界」と捉えている。その一端を担う、家庭生活と地域生活を考えたときに、保護者や地域の方々の協力は必須である。4年度はコロナ禍ということもあり積極的な協力を仰げなかった部分がある。5年度以降は、本校の取組に積極的に参加していただいたり、講師として生徒やわれわれ教師に向けて話をしていただいたりする場面を設定していきたい。また、保護者や地域の人々が生活をしている社会の現状を「人間尊重の教育」の視点から話をしていただくことで、生徒の考えがより深まり、「人間尊重の教育」がより一層推進されるものと考えている。
・ピア・シートの作成
各教科で「人間尊重の教育」に係る内容を実践した折に、生徒の感想や考えをグーグルスプレッドシートにまとめておき、特別活動の時間を利用して、学期末や、学年末ごとに各内容を一枚のシートに移動し、振り返りを行う。そうすることで、生徒もわれわれ教師も「人間尊重の教育」に関する学びの軌跡を把握することが可能になると考える。その集約シートの名称を「ピア・シート」としたい。また、その内容を教師が把握することで、今後の相談活動を推進する材料にもしていきたい。
(札幌市 2023-07-03付)
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