帯広市教育研究所 5年度夏季研修講座(市町村 2023-08-22付)
特別支援教育
【帯広発】帯広市教育研究所は7月下旬から8月上旬にかけて、市内各所で夏季教員研修講座を開いた。令和の日本型学校教育における今後の方向性や特別支援教育、校務支援システムの利活用など、今日的な教育課題に応じて全10講座を展開。講座によってはオンライン配信による受講枠を設け、より多くの教職員に学びの機会を提供した。
◆カリ・マネ充実やICT活用が重要 千葉大・天笠氏講義
千葉大学教育学部名誉教授の天笠茂氏は「“令和の日本型学校教育”の構築に向けて~予測困難な時代に未来の創り手を育てる」と題して講義した。
中教審の答申に基づき、DXが進み社会が非連続的に変容する“変革の時代”を迎えていることを強調。令和の日本型学校教育について①感染症や災害の発生等を乗り越えた学びの保障②持続的で魅力ある学校教育の実現③質と多様性や包括性を高めて教育の機会均等を実現④履修主義・修得主義等の適切な融合⑤これまでの実践とICTの最適な融合⑥連携・分担による学校マネジメント―の6点を今後の方向性として示した。
「個別最適な学び」「協働的な学び」の一体的充実が求められる中、子どもたちの多様化を把握した上で、9年間を見通したカリキュラム・マネジメントの充実・強化やICTの効果的な活用が重要な視点となることを示唆。学習者の主体性、持続可能な社会の創り手の育成に向けて、主体的に学びを深める学習指導を行い「知・徳・体のバランスの取れた学校教育」の実現を目指すことの必要性を説いた。
◆子を受け入れる環境整備が大切 特別支援教育
帯広大谷短期大学社会福祉科専任講師の角田隆二氏は「一人ひとりに応じた切れ目のない支援体制の充実」と題して講義した。第61回帯広市特別支援教育研究大会と共催。
角田氏は昨年まで帯広市内の小学校に勤務し、“つながり”を意識した特別支援教育の実践を積み重ねてきた。具体的には、知的障がい学級のイメージキャラクターのデザイン案を全校児童および教職員から募り、同じ学校の仲間である意識を醸成した。また、知的障がい学級の児童たちはカレンダーや新聞づくりに毎月励み、地域の各所に配布。目的を持って活動する力や地域に貢献する意識を育みながら、校内外との関係づくりにつなげた。
「授業は学校のものだが、学校は地域のものであり、子どもは地域の存在」とし「子どもを受け入れる環境をつくることが大切」と強調。大人と子どもが地域で共に育つ教育が「地域型インクルーシブ教育」につながり、地域づくりに結び付くことを説いた。
また、子どもは「追い詰められている感覚」があると、怒りや混乱、不安などからパニックに陥りやすいことを説明。「子どもの言動を自身の想像に当てはめるより、子ども理解の守備範囲を広げてみてほしい」と伝えた。
◆次世代校務支援システム活用へ 開発者ら招き研鑚
市教委はことし2月、次世代型校務支援システム・iFutureを全小・中学校に導入した。各校のさらなる利活用に向けて、システムの開発・普及に携わる東京書籍(株)教育システム開発部の堤直樹氏、田中純輝氏を講師に招いた。
講師はこれまでに導入した学校からよく挙がる質問をもとに講座内容を構成。通知表や指導要録の作成、通知表様式の編集などに関して操作画面を示しながら説明した。
成績処理の初期設定では、通知表評価細目やしきい値の設定方法を解説。学習記録の評価や評定などは、前年度や前期の設定をコピーすることができ、作業時間の短縮につながることを説いた。
また、特別活動や行動の記録、通信欄の入力に関しても画面を表示して解説。出欠管理においては、日別に入力した情報を学期別に自動集計でき、成績表に反映できることを示した。
◆教員が教えるから子が学び取る授業 ICTで授業改善へ 文科省アドバイザー
文部科学省学校DX戦略アドバイザー、春日井市教委教育DX推進専門官を務める水谷年孝氏は、ICTを活用した授業改善に向けて講義した。
春日井市は約20年前から教育の情報化に取り組み、全国に先駆けて校務および授業の改善を推進。学習規律の徹底とICTの日常的な有効活用を推進し「かすがいスタンダード」として市内全校に水平展開している。
取組をけん引してきた水谷氏は、学力観や仕事に必要とされる力が変化している現代の状況を説き「人生のマルチステージ化に伴い、学び続けること、学び続けられる環境が必要」と示唆。AI技術の発展が教育にもたらす影響に触れ「まずは教員が使ってみることで、活用方法を考えていくことが大切」と説いた。
また、春日井市で行われている「複線型」の授業を紹介した。情報の収集・整理・分析の末、表現のあとに対話することで思考の質を向上させており、全ての活動が生徒の学び方に沿って、個別・協働・教員からの指導など複数の在り方があることを説明。「子どもに育成したい力を考えた結果、授業の型が出来上がった」と振り返り「教員が教える授業から、子どもが学び取る授業に」と伝えた。
◆学校は非認知能力培う場所 横浜国立大・藤原氏 効果的な学級経営
横浜国立大学教職大学院准教授の藤原寿幸氏が「生徒指導と学習指導の統合を目指した学級経営~学習集団づくりの視点から」と題して講義した。
藤原氏は小学校教諭を経て現職に就き、教員のパーソナリティー等に任されることが多い学級経営について科学的な視点から研究を進めている。
教育活動に向けた条件整備とする「狭義の学級経営」、一人ひとりの自立・自治を目指す全人教育とする「広義の学級経営」の2点から、時代とともに変容する学級経営観を解説。学級を“学習集団”として捉え、「主体的・対話的で深い学びは、学級内の人間関係に規定される」「学級の実態や教員としての力量を考慮して、アクティブ・ラーニングを進める必要がある」と示した。
藤原氏は「効果的な学級経営によって子どもに育つ力」を質問した。参加者間から自主性や社会性、協調性などの意見を受け「学級経営では目に見えづらい部分が育つため、資質・能力を意識して進める必要がある」と強調。「学校は単に勉強をする場所ではなく、意欲や自制心、創造性などの非認知能力を培う場所」と伝えた。
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次世代型校務支援システム活用へ
ICTで授業改善へ
効果的な学級経営
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