釧路市と釧路教育振興会 合同講演会 ウェルビーイング重視 心理的安全性確保し人材育成
(市町村 2023-08-31付)

釧路合同教育講演会
西口教育指導監は学校経営で求められるリーダーシップの発揮へエールを送った

 【釧路発】釧路市と釧路教育振興会(桐木茂雄会長)は26日、釧路センチュリーキャッスルホテルで5年度合同教育講演会を開催。道教委の西口昌司教育指導監が釧路管内の教育関係者約200人を前に「教育の今日的課題」と題し、2040年以降の社会を見据えた講演を行った。教育改革の動向を分かりやすく解説し、自己肯定感や幸福感、利他性といったウェルビーイングを重視し、向上させていく教育活動の推進を呼びかける一方、チーム学校の取組においては、心理的安全性の確保が最も重要な成功因子となり、人材を育成する力の土台になるとした。

 講演会には、管内小・中学校、高校の校長、教頭、主幹教諭らが参加したほか、釧路教育局、管内各市町村教委の幹部が来賓として出席した。

 西口教育指導監は、2040年以降を見据えたテーマに基づき①教育改革の動向②北海道教育の現状③チームとしての学校―の3点について講話を進めた。

 教育改革の動向については、次期学習指導要領の改訂を見据えた改革ロードマップや中教審答申、内閣府におけるSociety5・0の実現に向けた教育・人材育成に関する政策パッケージ等を説明。様々な改革計画を分かりやすく読み解くポイントを示した。

 内閣府の政策パッケージに関しては「一人ひとりが多様な幸せ(ウェルビーイング)を実現できる社会」の実現を掲げ、教育現場では持続可能な社会の創り手の育成を目指し全国の教師が必死に取り組んでいる状況を位置付けたこと、子ども目線への転換を図ったことなどを注目すべき点とした。

 また、政策パッケージは画期的内容として、教室の中にある多様性を明確に示したことを紹介。国は教室の中にある具体的な多様性や厳しい状況を危惧し、改善に向けて学校現場の具体的な窮状を共有し、現場感覚で検討していく方向性を示したことを強調。

 ことし5月に金沢市で開催されたG7教育大臣会合の富山・金沢宣言においては、魅力ある優れた教師の確保、資質・能力の向上、学校の指導・運営体制の整備を行うために、少人数学級の推進や教師が担う業務の適正化、処遇を含む働きやすい労働条件の整備を明記し、国としての改善の方向性を世界に示したとした。

 加えて、一連の教育改革においては「将来の担い手」ではなく「未来に向けての社会の創り手」を育成することを示していることを強調。

また、教育に関するウェルビーイングについては、幸福感や自己肯定感、利他性・協働性などをその要素とし、一連の教育改革においては、日本社会に根差したウェルビーイングの向上として、協調的幸福と獲得的幸福のバランスを重視していることを大きな特徴とし、注視するよう求めた。

 引き続き西口教育指導監は、北海道教育の現状について講話。本年度から9年度までの北海道教育推進計画や北海道における教員育成指標の改訂、教職員研修計画に触れながら、北海道の課題として一部校内委員会の形骸化、多様な学びの場についての認識不足などを指摘した。

 対策として、校内委員会については、校長のリーダーシップのもとにどの学級にも特別な教育的支援を必要とする児童生徒がいることを前提とした校内委員会の在り方を再点検する必要性を示し、必要に応じて見直しを図り、全校的な支援体制を確立するよう要請した。

 また、多様な学びの場に関しては、義務教育段階における多様な学びの連続性において、専門家の助言、専門的スタッフ、通級指導の部分の理解が弱い傾向を示した。

 教育課程の適切な編成・実施に向けて、1人1台端末の「活用」から「利活用」への転換や、全国学力・学習状況調査における質問紙調査への注視などを要請。質問紙調査の結果からは、自己有用感や挑戦心、幸福感といったウェルビーイングを子ども目線で見取ることができるとし、今日的教育課題の解決につながる具体的手だての構築に役立つものとした。

 最後にチームとしての学校について、人材を育成する力の土台として、心理的安全性の確保が問われていると強調。学校のトップが職員の心理的安全性を確保し、教職員を大事にし、各教職員の持つ強みを生かし働きがいが高まるように心がけるよう訴えた。

 心理的安全性の確保は、教職員の持続的な成長を支える環境づくりに不可欠とし、児童生徒への指導・支援の充実につながるとした。

 また、チーム内に求められる心理的安全性の本質を分かりやすく解説。チームにおいては対人関係が悪くなるような心配を不要とする信念が共有されていること、決して仲の良い職場ではなく、率直に伝えるべきことを伝える厳しい組織であることを示した。

 講演のまとめで西口教育指導監は、学校経営におけるリーダーシップ像に言及。児童生徒、保護者、地域住民、教職員のウェルビーイングを向上させるリーダーシップの発揮が求められているとし、常に心理的安全性を念頭に置いたマネジメントを心がけるよう呼びかけた。

(市町村 2023-08-31付)

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