教育まちづくりへの挑戦 子育て魅力化で人口増 復興が大きなエネルギーに
(市町村 2023-08-31付)

あびら教育フォーラム②
現場担当者が教育まちづくりを目指した経緯から現在までを語った

 安平町の「あびら教育フォーラム」では「現場職員が語る!安平教育まちづくりへの挑戦ストーリー」と題したパネルディスカッションを行った。町が教育まちづくりを目指した経緯や、北海道胆振東部地震を機に、各課や民間、ボランティアが一体となって取り組む土壌ができたこと、教育まちづくりにより、移住問い合わせや人口増が起き、店舗の開業も増えるなどの効果が表れてきていることなどが話題に上った。

 パネラーは町政策推進課の木村誠氏、町教委の三上泰明氏と同子育て・教育総合専門員の井内聖氏。㈱FoundingBaseのCCO林賢司氏が司会を務めた。

 概要はつぎのとおり。=敬称略=

林 なぜ安平は教育を軸にまちづくりを行っているか。

木村 安平の人口ピラミッドは60代以上が多く、20~40代を増やさないと将来的に自治体の運営ができない状態だった。そこで人口の構成比率を変えよう、教育・子育てを魅力化しようと考えた。

林 安平の教育の特徴に子どもにやさしいまちづくり(CFCI)があるが、どういうことか。

木村 子どもの権利条約を市町村レベルで取り入れる活動で、日本では5自治体が実践している。一番のポイントは、子どもの意見をしっかり聞くこと。

林 職員研修も水道課など教育に限らず全ての課で行い職員レベルで意思統一していると聞く。

井内 幼児教育は福祉部署が担当していることが多く、0~18歳までを通した教育はやりにくいのだが、安平は0~5歳までも教育委員会が担当している。

 そのため、幼児から大人まで一貫して一方的な知識の教授ではなく、遊びからスタートする事業が行えている。地域コミュニティーも学びの場。独自の社会教育事業「あびら教育プラン」によって大人を含め公教育で日本一を目指している。

(4面から続く)

林 あびら教育プランは、乳幼児~小学生の「遊育」、小学5年生~中学生の「あびらぼ」「ワクワク研究所」、全世代対象の「ABIRA Talks」の4つの事業に分かれている。

 遊育は、遊ぶ環境をつくり、好奇心を刺激し、気付きがある活動。

 あびらぼは教えない放課後教室で好奇心・探究心を育む。「なぜピカソはあんなに絵が下手なのか」という疑問を追究したり、道の駅でポップコーン屋で利益を出すことにチャレンジしたりする。ワクワク研究所はワクワクを自分で創り出し個人で「マイプロジェクト」を進める。プルタブでバッグを作ったり、海水と汗から採った塩は同じか?を追究したりなど自分の好奇心を形にする。

 ABIRA Talksは、対面型のリアルクラウドファンディング。子どもから大人までがこういうことをやりたいとプレゼンテーションし、賛同したサポーターから出資を募る。

 この4つによって学校教育と社会教育の連動、コミュニティーの創出、まち全体での教育を行っている。

林 胆振東部地震で町は大きな被害を受けたが、復旧・復興は大きなエネルギーになったのでは。

井内 地震の日、ちょうどこども園はお泊り会だった。夜中の3時に地震があり感じたのは「これはきっと誰か亡くなった」ということ。そんな揺れだった。そんな事態に対応する災害マニュアルなどなかった。

 とにかく園を避難所として開放し、同時にボランティアセンターにした。来てくれたボランティアの方はとにかく断らず、働いてくれた。何度も来てくれて安平に移住した方もいる。そうして個人の力が町に入ってきた。

木村 医者や看護師、行政職員などが動くには子どもを預かってもらわないといけない。役場の職員は20時間勤務の状態で、子どもの受け入れは大切だった。民間ボランティアは、町長から現場職員まで「一緒にやろう」という姿勢で受け入れた。

林 震災をきっかけとした役場の変化は。

木村 各課で動いていては対応できない。点ではなく、町全体を面で考えないといけない。課を越えなければいけないとみんなが実感し役場の雰囲気が変わった。

井内 町長の発信が前向きだった。町長室に泊まり、つぎあれやるぞこれやるぞと次々と指示を出しており、すごく勇気をもらった。

 トップがそういう意識だと職員の意識も変わる。安平は町長がグイグイと引っ張り、教育長が温かく穏やかに受け入れてくださるのでとてもバランスが良い。

林 あびら教育プランは提案から半年で予算取りまで様々な意思決定が成された。いきなり入ってきた企業になぜ任せられたのか。

木村 少子高齢化によってまちづくりの原動力となる人が不足しているのが課題となっていた。しかしまちづくりに向き合ってくれる企業が少なく、探していた。

 提案が点ではなく町を面で考えてくれていたのがありがたかった。また、プランでは子育て教育が提案されていた。うちの町でも子育て教育を柱と考えていたが、どう実践するかは議論できていなかったのでちょうどプランがはまった。スタッフもみんな一緒にやっていける方々だった。

林 教育まちづくりを行ってまちの変化は感じるか。

三上 教育が町の施策となっていることで、モチベーションになっている。自分の目的になっている。

木村 いろいろな分野で地域プレイヤーが増えてきた。この5年でNPO法人がすごく増えた。スポーツ、福祉など様々な分野でNPOができ、好循環となっている。

林 安平への移住の問い合わせは令和2年度の約10倍になった。高齢者よりも子育て世代からの問い合わせが増えた。

 カフェ、ゲストハウス、おにぎり屋、ラーメン屋、スナック、ダンスクラブなどが続々開業した。子どもたちが挑戦していることで、大人の挑戦のハードルも下がっているのではないか。

(市町村 2023-08-31付)

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