釧路市教委が講座「大館に学ぼう」 子の可能性伸ばす授業 大館市の教諭2人が示範授業(市町村 2023-10-16付)
大館市マイスター根本教諭と中嶋教諭
【釧路発】釧路市教委は3、4日の2日間、研修講座「大館に学ぼう」を開催した。秋田県大館市授業マイスター2人(大館市立桂城小・中嶋恵教諭、東中・根本大輔教諭)を招聘。市内小・中学校での示範授業の公開や釧路市授業マイスターとの授業力向上シンポジウムを行った。市内小・中・義務教育学校から145人が参加。今求められている授業の在り方に向けた授業改善について研修を深めた。
市教委は、全国的にも高い学力を維持している大館市と3年前から視察研修などを通して交流を開始。昨年は大館市教委の高橋善之教育長が来釧。教育講演会を開催するなど、大館市での授業の様子や授業力向上に向けた教員の取組等を釧路市の教員にも伝える研修会などを進めてきた。
また、前年度からは大館市の授業マイスターを基盤とした「釧路版授業マイスター」がスタート。誰一人も置き去りにしない教育を目指し、どの学校でも子どもたちが主役となり、自分の可能性を伸ばすことができる授業構築に向けた取組に力を入れている。
今回の事業は、大館市授業マイスターの授業を参観するとともに、釧路市授業マイスターとのシンポジウムを通しながらさらなる授業力向上を目指すもの。
初日は大館市授業マイスターの2人による示範授業が行われ、中嶋教諭は芦野小学校4年1組で算数科「考える力をのばそう」、根本教諭は鳥取中学校2年4組で国語科「新聞の比較読み」をそれぞれ公開した。
うち芦野小4年1組では算数科「考える力をのばそう~共通部分を通して」を公開。本時のねらいを「図を使って共通部分や差に着目し、数量の関係を単純化して考えることを通して、2つの未知数について言葉や図、式を用いて説明することができる」と設定した。
本時の問題「小プールと大プールで、ももかさんは小プール1回と大プール2回、全部で63㍍泳ぎ、かいとさんは小プール1回と大プール4回、全部で113㍍泳いだ。小プールと大プールの長さはそれぞれ何㍍ですか」から、分かっていることと聞かれていることを明確にした上で、課題「回数と全部の長さが分かる時、それぞれの長さはどのように求めると良いだろう」を確認した。
子どもたちは、線分図や計算などを駆使しながら、それぞれのプールの長さを求めた。「小プールは2人とも1回だ」「大プールの回数が違うね」など、共通部分や差に着目。差を求める考え方や共通部分を削除する考えなどを発表し合った。
「目をつけたところは?」という発問から、2人の泳いだ距離の差や、同じ距離を泳いだ部分を明らかにする点に注目。分かりやすい図で比べたり、共通部分を引いて簡単にしてから差を使って計算したりすることを確認した。
授業後、体育館で行われた研究協議では、授業者が今回の授業でのポイントや課題などを解説した。
また、授業前に子どもたちと交わした話のルール(自分の意思をはっきりと表すこと。友達の発表に対してうなずくなどのアクションを示すことなど)について、その意図や目的を説明。授業をする上で基盤ともいえる児童との信頼関係の構築についても触れた。
このあと、討議の柱「授業から学んだこと・見えた良さ」を中心に、12グループに分かれての協議に入った。
参加者からは「やってごらんという声かけで、子どもも安心して取り組んでいた」「カードや考え方の流れが分かりやすく掲示されており、いろいろなことが発見できる板書構成だった」「子どもの意見を教師が上手につなげる子ども主体の授業だった」といった意見が出た。
最後に中嶋教諭は、勉強とは子どもがやっているものであり、私たち教師はその手伝いをするだけとした上で「きょういただいた多くの意見を持ち帰り、大館の子どもたちのために授業改善に励みたい。ぜひ、釧路の先生方とは情報交流などを通してこれからも互いに頑張ろう」とエールを送った。
◆授業像明確化へシンポジウム ゴールから課題逆算を 両市授業マイスターが討論
釧路市教委は4日、研修講座「大館に学ぼう」の2日目を開催。昭和小学校と北中学校での授業参観や釧路市授業マイスターとのシンポジウムを行った。前日の示範授業公開と合わせ、義務教育9年間を通した基礎学力の確実な定着を図るため、目指すべき授業像と授業改善の視点等を明確にし、授業力向上を推進することを目的としている。
この日は、大館市授業マイスター2人と釧路市授業マイスター4人が、それぞれ北中と昭和小に分かれて授業を参観。その後、昭和小で両市の授業マイスターによるシンポジウムを開いた。
シンポジウムには、大館市授業マイスターの中嶋恵教諭(大館市立桂城小)と根本大輔教諭(東中)。釧路市授業マイスターの柴田敬祥教諭(幣舞中)、佐藤義人教諭(昭和小)、細野歩教諭(鳥取西中)、三守絢子教諭(新陽小)が参加。6人の授業マイスターが、様々な視点から課題や今後の取組などについて討論した。
シンポジウム開催に当たり、あいさつに立った岡部義孝教育長は、大館市との交流のきっかけとなった3年前の視察研修の際に、根本教諭の授業を参観したことに触れ「子どもたちが教え合う姿はまるで50分のハーモニーを奏でているように感じた。一人も置き去りにしない教育が当たり前に行われていたことに感銘を受けた」と当時の様子を振り返り、今回の研修で、目指すべき授業像や授業改善の視点が明確になることに期待を寄せた。
はじめに、釧路の子どもたちについての感想を聞かれた大館市授業マイスターの2人は「学びたいという意欲を強く感じた」とした上で、学び合いの構築や学び合う喜びを体感できることが大切であり、子どもの意欲をどう引き出し、持続させるかが重要であるとした。
また、大館市が目指すものに対し、全小・中学校がベクトルを同じ方向に向けていると説明。相手が共感する動き(うなずくなど)などを示すと、より真剣に聞こうとする姿勢につながり、話し合いや学び合いなどのつながりが生まれ、学習集団の基礎づくりに結び付くといった実践例などを紹介した。
中嶋教諭は、子どもの問いはとても大切であり、みんなで解決することに意味があるとし、学習の意味は学習課題にあるとした。また、根本教諭は、学習課題をゴールから逆算することで、ゴールの姿が明確にイメージでき、話し合いでの発言などを予測することにもつながるとした。
釧路市授業マイスターからは「ゴールから課題を探すことで期待する子どもの姿が見えてくる。生徒理解は不可欠になるのでは」という意見が。また、前年度、市教委がまとめた「釧路市が目指す授業」が各学校のつながりに効果を示し、小中連携に役立つとともに、9年間の接続と今後の継続の大切さが明確になったとした。
釧路市でも全小・中学校がねらいに向けたベクトルを同じ方向にする取組が少しずつではあるが、進み始めている実態などを報告した。
後進の育成に関する取組に関して、大館市では5年目以下の若手教員は主に授業マイスターの授業参観が中心。長期休業中などに授業を含めた様々な悩みなどを聞く機会を設け、横のつながりも大切にしているとし、少ない時間をいかに有効活用するかがポイントになるとした。
釧路市授業マイスターからは、場や機会を意図的に設けるなどの工夫や、校種・教科を越えた研修が必要であり、マイスター制度もその一つではないかという声が上がった。
2日間の研修を終えて感想を聞かれた中嶋教諭は「釧路も秋田も子どもは同じ。学びたい姿はどこにいても変わらない」とした上で「市全体でのスタンダード(共通理解・共通意識)が大切では」と話した。
根本教諭は「今回の研修を通して互いに授業にかける思いがつながった気がした。生徒指導の機能を生かしながら、ぜひ生徒と共に創り上げる授業を」と力強く訴えた。
最後に、今後も大館市そして釧路市の先生と情報を共有する中で、子どもたちの可能性が発揮できる子どもたちのための授業づくりに全力を注ごうと、互いにエールを送った。
今回のシンポジウムの様子は、今月下旬にオンデマンドで全市小・中学校・義務教育学校に配信される予定。
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授業マイスター討論
(市町村 2023-10-16付)
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