学習履歴で学び改善へ 道教大附属函館中が研究大会
(学校 2023-11-10付)

附属函館中研究大会(研究協議・有金教諭説明)
数学科研究の成果と課題を振り返った

 【函館発】道教育大学附属函館中学校(中村吉秀校長)は2日、教育研究大会をオンライン開催した。研究主題「1人1台端末環境下における指導と評価の一体化~学習履歴の利活用による学びの改善」のもと、事前公開した8教科の授業動画に関する教科別分科会、文部科学省初等中等教育局の武藤慶久修学支援・教材課長による講演を実施。生徒が日々の学びから課題を振り返り、見通しを持った学習計画につなげる自己調整学習の検証成果や課題を共有した。

 研究は前年度から2ヵ年計画で開始。「1人1台端末環境における指導と評価の一体化の実現」をテーマに、全教科でグーグルフォームを活用したCBT形式の小テストを導入してきた。

 本年度はCBTで蓄積した生徒の学習履歴を活用し「自己調整力」に視点を当てた授業改善を推進。ソーシャルスキルトレーニング(SST)や自らの学校生活を振り返るセルフレギュレーションフォーム(SR)を学級活動等で導入することで、生徒が日常学習を振り返り、見通しを持たせる場を徹底し、教職員は生徒が自らの学習を調整しようとする側面や粘り強く取り組む姿勢などを見取り、評価の3観点に役立てている。

 大会には全国の教育関係者約100人が参加。研究主任を務める金子智和教諭が研究概要を発表したほか、事前配信された国語科、社会科、数学科、理科、美術科、保健体育科、技術・家庭科、外国語科の8科目に参加者がブレイクアウトルームに分かれて授業者と交流した。

◆公開授業1年数学 1次方程式の利用

 公開授業のうち、有金大輔教諭による「1次方程式の利用~答えのない問いを生かした数学的活動」では「具体的な問題の中の数量やその関係に着目し、1次方程式をつくることができる(知識・技能)」「1次方程式を利用して求めた解が問題に適しているかどうかを説明することができる(思考力・判断力・表現力等)」「方程式を活用した問題解決の過程を振り返って検討しようとしている(主体的に取り組む態度)」など評価の3観点に応じた目標を設定。生徒は単元の節ごとにSRシートを記入し、自身の学習履歴を蓄積してきた。授業ではCBT形式の小テストを導入し、結果を全体共有することで学習状況を確認。「ある整数を3倍してマイナス3を足すとマイナス12になる。ある整数を求めよ」との問題について「正解マイナス3が問題に適しているか」について、ジャムボードを活用し、集団思考で考えさせる指導を展開した。

 問題に適していない回答を考えさせる協働活動を通して生徒は「整数ではなく自然数や少数とする」などと回答。どのような場合が問題に適さなくなるのかを根拠を持って説明できる能力を身に付けさせた。

◆単元ごとにCBT 振り返る機会設定

 数学科ではグーグルサイトを開設し、授業で用いた資料やワークシートなどを蓄積することで振り返りをしやすい環境を整備している。有金教諭は単元の節終了ごとにCBTを実施。生徒は自身の課題を踏まえ、次時の学習目標をSRシートに記入している。

 有金教諭は研究協議で「生徒に振り返りの必要性を実感させる必要がある」とし、振り返りができる問題文の意図的な出題や生徒同士の学習履歴交流会を導入したことを振り返った。

 生徒に対し、視覚的かつ継続的な成長を促せた一方、グーグルサイトの蓄積は操作に時間がかかり、生徒間で差が出たこと、SRシートの質の向上が図られたが、指標を示すことができなかったことなどの課題を共有。思考力、判断力、表現力の評価に関するCBTは即時的なフィードバックが難しいことも挙げた。

 参加者の「SRシートを効果的に活用している生徒の成果について具体例を教えてほしい」との意見について「具体的な方策を自分で挙げる記述ができているなど、自分が何をすべきかを捉えられていること」と説明。膨大な学習履歴を指導者が効率的に整理するとともに、全ての生徒がシートを効果的に活用できるよう、寄り添った指導支援に努めていくとした。

 渡島教育局の三笠裕也指導主事は「有金教諭をはじめ、附属中の授業づくりが基盤にあるため、実践に結び付いている」と評価。「個人思考、協働思考の場面を適宜取り入れる効果的な指導ができていた。生徒が自己調整できるよう、言語活動を通して対話やパフォーマンスを表現する場を設定することで様々な場面で工夫することができるようになる」と述べた。

◆文科省・武藤課長 自前主義の脱却を

 教科別の研究協議後、文科省初等中等教育局の武藤課長による教育講演会を実施。近未来を見据えた授業改善や働き方改革の重要性を説いた。

 武藤課長は小規模化が進行している北海道では、デジタルを活用した指導の重要性が求められていると指摘。平成31年のPISA調査で明らかになった読解力の課題から、児童生徒が自分なりの考えや根拠を持てる教育の重要性を訴えた。

 民主主義にとって必要な当事者意識について「問いを立て、議論し、提案したり対話や合意を図る学びの場を増やすべき」と強調。

 自己調整学習はメタ認知能力の育成に役立つとした上で「AI(人工知能)の発達によって音読の採点なども進み始めている」とし、即時的なフィードバックの必要性を強調。「授業づくりに関する番組や動画は増えている。良いコンテンツを知り、使うことが教室の資質・能力を高める鍵」と述べ、自前主義からの脱却が働き方改革につながることを説明した。

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附属函館中研究大会(武藤課長講演)
武藤課長が講演

(学校 2023-11-10付)

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