渡島・函館国際理解教育研究会 国際問題で教材づくり 各校に広がる道教大との連携(関係団体 2023-11-15付)
グループ交流を通して、互いのアイデアを確認する参加者
【函館発】渡島・函館国際理解教育研究会(石山史会長)は、外国語と国際理解教育の研究を進める道教育大学函館校と連携し、児童生徒の興味・関心を育む国際理解教育の授業づくりに向けた研修をことしから開始した。学生と教職員が国際問題のトレンドを意識した教材づくりのポイントを確認する交流活動を展開しており、学生による出前授業も管内各校で広がりをみせている。児童生徒が国際問題に関心を持てる教材を研究できる活動は、教職を目指す学生の刺激にもつながっている。
学習指導要領では、グローバルな諸課題の解決に向け、主体的に行動する人材の育成を目標に掲げている。国際理解教育の授業づくりに向けては、平和や人権、環境問題など地球規模の課題を子どもたちの身近な課題と関連付けて指導することが求められており、道徳科や総合的な学習の時間、外国語、特別活動などの多様な教科で取り組むことを重要視している。
近年では、SDGsを中心とした教育活動が主流となっており、持続可能な社会の実現を考える参加型学習が活発化。学校現場では公平な社会の実現に向けた指導力の向上が欠かせないものとなっている。
日本人学校などの在外教育施設派遣経験者や外国語を専門とする教員らで構成する同会では、ことしから道教育大函館校の石森広美准教授の協力を得た研修活動に着手した。10月27日には、道教育大附属函館小学校でことし2月に続く2回目の研修会を実施。石森准教授が講師を務め、児童生徒が世界の課題を身近に感じられる体験的な学習の一つ「フォトランゲージ」を取り上げた。
ワークショップでは、教職員と学生混合のグループで男性が多数の子どもをロバで運ぶ写真から疑問点を話し合う活動を実施。各グループでは「アラブの文字が書かれているため、中東の地域ではないか」「人身売買の可能性がある」などと浮かび上がった疑問点を交流し合った。
石森准教授はパレスチナ自治区のガザ地区で撮影された写真であることを示し「ガザ地区では一人でも多く子どもを産むことが重視されている文化がある」と説明。平均年齢が18歳のガザ地区では、イスラム組織ハマスによるイスラエルへの大規模攻撃によって、パレスチナ自治区とイスラエル双方に多くの子どもの犠牲者が発生している現在の世界情勢へ話題を展開。「こうしたフォトランゲージはタイムリーなニュースとリンクさせる学習提起として効果的。想像力を働かせるとともに、他人事を自分事として捉えさせるプロセスにつながる」と提案した。
宮城県の高校教員として務めた経験がある石森准教授は、当時高校2年生の英語の教科書で扱った題材をもとに生徒が国際問題を自分事として捉えることのできた授業実践を振り返った。玩具の銃で遊んでいたパレスチナの子どもがイスラエル兵に頭を打たれ、脳死による臓器提供をイスラエルの子どもを含む複数人に行ったという内容を取り扱ったのを機に、宮城に訪れたガザ地区の住民を招き、命の授業を行ったことを紹介。こうした経験を踏まえ、研修では「空爆で父と娘を失った人の話を聞き、英語で手紙を書く活動が生徒の共感的理解を図る活動につながった」との視点を共有した。
参加教員らは「世界の問題を身近に考えられる授業づくりのヒントを得た。子どもの視野を広げるためには、教員が様々な視点でものを見る必要がある」と指導力を高めるこつを実感。函館市立中島小学校長の石山会長は「学生と教員が国際理解教育について熱心に協議に取り組むいい機会。将来の教育を担う若者の明るい未来を感じた」と振り返った。
石森准教授によると、現職教員との交流は教員養成課程の学生に好評を得ているという。管内小・中学校では研究室に所属する学生の出前授業の活用機会が増えており、今後も知内小学校などで授業を実施する予定。学生がベテラン教職員と共に磨いた授業づくりの成果が児童生徒の国際理解を深める教育の充実につながることが期待される。
(関係団体 2023-11-15付)
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