全国学力調査北海道版結果報告書で声明 点数学力偏重施策撤回を “理念なき”改善の方向性非難 北教組(関係団体 2023-11-13付)
北教組(木下真一中央執行委員長)は9日、道教委が7日に公表した2023年度「全国学力・学習状況調査北海道版結果報告書」に対する声明を発表した。調査結果を受けて道教委が示した4つの改善の方向性を「理念なき方向性」と断じ、教職員の「自主性・創造性を奪い意欲をそぐもの」と非難した。教職員の超勤・多忙化、なり手不足が依然として深刻な課題である中、「人的・物的両面での環境整備に徹するべき」とし、子どもたちの学びを矮小化する「点数学力」偏重の教育施策撤回を強く求めた。声明概要はつぎのとおり。
道教委は7日、2023年度全国学力・学習状況調査北海道版結果報告書を公表した。その中で、「平均正答率が全国平均に達していないものの、その差が小学校の算数および中学校の数学と英語の3教科で縮まり、07年度の調査開始以来初めて、全ての教科で2・0ポイント以内となるなど改善の傾向が見られる」とした。
また「目的や条件に応じて、理由や根拠を示したり、筋道を立てて考え説明したりすること」「授業以外で勉強する時間が短い」など、例年同様の課題を挙げた。
その上で①調査を客観的な指標とし、エビデンスに基づいて検証改善サイクルの充実を図る②ICT端末も積極的に活用しながら授業改善を進める③小中連携の推進④児童生徒がICT端末を日常的に活用し、計画的に勉強する習慣を身に付けさせる―など、昨年と大きく変わらない、理念なき4つの改善の方向性を示した。
4つの改善の方向性は、「教員おのおのが日常的に行っている教育評価活動よりも調査に基づく形式的なPDCAサイクルが優先され多忙化に拍車をかけている」「授業改善や小中連携と称して子どもの実態を無視した画一的な授業展開を押しつけられる」「ICTの活用を強制される」など、いずれも教育内容・方法の管理統制と一層の超勤・多忙化を招くばかりか、教職員から自主性・創造性を奪い意欲をそぐものとなっている。
また、道教委が毎年各教科の管内平均正答率の分布を明示することで、チャレンジテストの強制に加え、管内独自のテストや研修等、各市町村・学校においてさらなる対策が求められることになり、事前対策の強化や学習規律重視など短絡的な対策が横行している。
学校現場では、過労死レベルにある超勤・多忙化が解消されていない中、11月に結果公表が行われるにもかかわらず、調査実施後に解答用紙をコピーし、直ちに自校で採点・分析後、授業改善が命じられるなど、教職員はまさに調査に翻弄されている。そもそも教職員は、超勤・多忙化で疲弊しきっており、十分に教材研究や授業準備を行う余裕がない。
こうした状況に追い打ちをかけているのが、全国学力調査にほかならず、本末転倒と言わざるを得ない。教育全体の問題を見ても、子どもたちのいじめ・不登校の増加には歯止めがかからず、教職員のなり手不足も深刻化している。
道教委は学力調査における数ポイント差にこだわる「木を見て森を見ず」の教育施策ではなく、現場を信頼し教職員・子ども同士が対話を通して関わり合う環境づくりのための人的・物的両面での環境整備に徹するべきである。
また、国連子どもの権利委員会の日本に対する「あまりにも競争的な制度を含むストレスフルな学校環境から子どもを解放すること」とした勧告を真摯に受け止め、競争的・管理的な学校から子どもたちを解放すべきである。
併せて、文部科学省・道教委に対して、07年の学力調査開始以降の教育政策・施策の検証改善を強く求める。
北教組は、教職員の自発性・創造性を尊重し、子どもたちが「わかるよろこび」を感じることができる学校を目指す観点から、「報告書」「結果公表」に断固抗議するとともに「全国学力・学習状況調査」に反対し、子どもたちの「学び」を矮小化する「点数学力」偏重の「教育施策」の撤回を強く求める。
私たちはこれまでと同様、今後も、憲法および「47教育基本法」「子どもの権利条約」の理念に基づく「ゆたかな教育」の実現のため、子どもの主体性・創造性を尊重し、意見表明権を保障した教育実践を積み重ね、市民と共に教育を子どもたちのもとへ取り戻すための広範な道民運動を進めていくことを表明する。
(関係団体 2023-11-13付)
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