科学的に探究する力を 道中理 旭川で第61回研究大会
(関係団体 2023-11-22付)

道中学校理科研究大会開会式
開会式

 【旭川発】道中学校理科教育研究会(道中理、小林直人会長)は10月下旬、旭川市内の大雪クリスタルホールで第61回道中学校理科教育研究会旭川大会を開催した。旭川市教育研究会理科部との共催で、全道から教職員約150人が参加。新たな研究主題「学びの再構築を通して、自然との共生に向かう理科教育~自ら問い続け、主体的・対話的で深い学びをデザインし、科学的に探究する力を育てる理科学習」のもと、分科会や札幌・釧路・函館地区の研究発表を通じて実践の成果を共有し、指導力の向上に励んだ。

 道中理では、本年度から新たな研究主題を設定。中学校の3年間で、自然環境の保全や社会の発展のために自身ができることを考え、行動するとともに、自然の尊さ等を感じ取ることができる態度を養っていくことを目的としている。

 開会式では、小林会長が登壇。新たな研究主題に言及し、自分の考えと他者の考えを比較・分析しながら、自身の解釈を更新する“知識の再構築”と、課題解決に向けた思考の過程を振り返り、有効な取組や探究方法を模索する“学びのプロセスの再構築”を「車の両輪」と強調。「4ヵ年計画で研究を進めていきたい」と展望した。

 つぎに、上原大岳運営委員長があいさつ。旭川大会を契機とした理科指導に関する相互の学び合いを期待し「新研究主題に迫る旭教研理科部の考え方や研究成果の検証になれば」と述べた。

 来賓では、上川教育局の岸本亮局長と旭川市教委の野﨑幸宏教育長が祝辞を述べた。

 岸本局長は、将来の予測が困難な時代において「他者と協働して課題を解決していく能力の育成が求められている」とした上で、道中理の新研究主題に基づき「生徒の資質・能力を育てる理科学習の在り方などの研究協議を行うことは、大変意義深い」と、大会の成果に期待を寄せた。

 野﨑教育長は、教育界の今日的課題として、ICTの効果的活用など情報活用能力が求められていることに触れ「新たな研究主題のもと、情報の収集、処理、一般化などを通して科学的に探究する力や態度を育てることは、生徒の情報活用能力向上につながる」と述べた。

 このあと、学年ごとの分科会や地区別での研究発表を通して、本道における理科教育の向上に向けて研鑚を積んだ。

◆全体会 3地区代表者が成果発表

 全体会では、札幌・釧路・函館地区の代表者が研究成果を発表した。札幌市立東白石中学校の室永瑞貴教諭、道教育大学附属釧路義務教育学校後期課程の三光楼正洋教諭、函館市立亀田中学校の中村英彦教諭が登壇。うち室永教諭は「試行錯誤を通して納得解を求め、知識を再構築していく授業実践」をテーマに報告。生徒が自身の考えを納得いくものにできるよう、自由度の高い教材や場所を与えることの重要性を紹介した。

 室永教諭は冒頭、研究のねらいを解説。「生徒が知識の再構築を積み重ね、概念的な理解へと高めていくためには、継続した試行錯誤を行い、納得解を求めていくことが重要」とし「知識の定着につなげるため、生徒が構想、実行、検討・改善の間で行き来する思考や探究の過程を活発にすることが必要」と説明した。

 続いて、研究内容を紹介。中2生物「生物の進化」での授業実践を例に①生徒と教材との対話を促す工夫②生徒同士の対話を促す工夫―の2つの視点から取組を説明した。

 ①では、生徒が自らの探究に合わせて自由に実験・観察をやり直せる環境と教材を整えることで、多様な考えや気付きの表出を可能にしていく取組を解説した。

 始祖鳥の化石のレプリカを教材に、始祖鳥が何の動物に進化したかを考察する授業を例示。教材選択の意図を「手を動かしながら自分の考えを具現化できるもの」としたことを説明した。「生徒たちは“始祖鳥とトカゲの尻尾は長いが、カラスは短いから爬虫類に進化した”や“哺乳類と関節が似ている”などの考察があり、自然事象に触れながら学びを進めることが確認できた」と述べた。

 ②では、生徒が自分の考えと他者の考えを比較・分析し、自身の考えを検討・改善していく取組を紹介した。「進化は本当に起こっているのだろうか」という議題を設定し、生徒たちが議論する授業を展開。その際、前時で生徒たちが考えた仮説や結果、考察をまとめたワークシートを配布するなどの工夫を説明した上で「生徒たちは、ワークシートを参考に議論を進め、他者の考えに触れ、必要な情報を取捨選択し、自分の考えを検討・改善していくことができた」などと解説した。

 また、他者の考えに対する自分の納得度合いを「納得」「どちらとも言えない」「納得できない」の3段階で意思表示するよう指導。生徒同士の対話がより活発になったことを伝えた。

 最後に、研究成果と課題を発表。「ワークシートを活用したり、自由度の高い教材や環境を整えたりすることで、納得解を求めて粘り強く探究する生徒の姿が見られた」と述べた一方で「途中で思考をやめる生徒も一定数見られた」として、生徒の主体的に学ぶ姿勢を一層引き出す手だてを講じる必要性を課題として示した。

◆分科会で3教諭が実践発表

 開会式のあと、学年ごとに分科会を開催した。旭川市立東鷹栖中学校の森憲児教諭ら3人が、研究成果やレディネステストの結果と分析を踏まえた生徒の実態などを発表。参加者は各分科会の研究発表を通して、授業改善への参考とした。

 第1分科会では森教諭、第2分科会では旭川市立中央中学校の三上貴也教諭、第3分科会では旭川市立神居中学校の高橋理教諭が発表した。

第1分科会では、森教諭が単元「身のまわりの現象」のうち、光に関する授業を題材にした研究成果を発表。目標「理科の見方・考え方を働かせながら、問題を見いだす力を高め、主体的に学び続ける生徒の育成」のもと、①問題とつながる自然の事物・現象に触れさせる②理科の見方・考え方と問題をつなげさせる―の2点を柱に説明した。

①では「水中に光を当てると屈折する様子を観察させ、“水中に光を入れるとどう反射するのか”など、素朴な疑問を見つけるように指導する」と説明した。

②では「①で見つけた疑問に対する解決の見通しが持てない状態なので、仮説や実験計画が立てられない」とした上で「数値の値や関係性、ものの性質などを理科的に観察する視点と分類や比較、規則性など理科的に考える方法を教える」と解説。「教えた理科の見方・考え方と素朴な疑問をつなげさせることで、生徒の疑問が”光が反射するときの角度の大きさに決まりはあるのか”といった解決の見通しのあるものに変わり、主体的に学ぶことができる」と説明した。

レディネステストの結果と分析については「“なぜだろう”と感じることから問題を見いだそうとする生徒は9割以上に上った」「自分の考えを振り返りながら学習を進めている生徒も9割おり、試行錯誤しながら学習を進めている様子が見て取れる」と、主体的に学ぶ生徒が増えたことを報告した。

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