盛山文科大臣 6年年頭所感 質高い教師確保へ改革 DX加速や不登校対策強化(道・道教委 2024-01-09付)
盛山正仁文部科学大臣は6年年頭所感で「質の高い教師の確保」を喫緊の課題と強調し、教師の養成・採用・研修の一体的改革を推進する決意を示した。小学校高学年の教科担任制の強化、スクール・サポート・スタッフの配置充実、副校長・教頭マネジメント支援員の新規配置など人的体制の強化を図るほか、端末更新の基金の造成や高校DX加速化推進事業(DXハイスクール)に着手。国策のGIGAスクール構想実現に向けた取組を推進する。
盛山大臣は「公教育の必須ツール」である1人1台端末の着実な更新を図るため、各都道府県に基金を造成するほか、自治体・学校への伴走支援の強化や好事例を創出・展開することで端末活用のさらなる促進を図る考えを示した。
高校段階においては高校DX加速化推進事業(DXハイスクール)に着手。公立・私立高校1000校程度を選定し、ハイスペックパソコンや3Dプリンターなど最新のICT機器を100億円を投じて整備する新規事業で、成長分野を支える人材の育成を図る。
不登校・いじめ対策では、校内教育支援センターや学びの多様化学校の設置を促進するほか、ICT端末を活用した早期発見・支援、自治体へのサポートチームの派遣を開始して対策を強化する。
改革推進期間の中間年を迎える休日の部活動の地域移行に向けては「地域の実情に応じて可能な限り早期の実現を目指し、文部科学省全体で取り組む」との考えを示した。
特別支援教育においては特別支援学校と小中高いずれかを一体的に運営するインクルーシブな学校運営モデルを構築するモデル事業を展開するほか、学校における医療的ケア実施体制の充実に力を入れる考えを示した。
高等教育では、デジタル・グリーンなどの成長分野をけん引する人材の育成を図る学部再編を支援するほか、国立大学の経営改革や少子化時代を見据えた私立大学の経営改革を図る。
◆盛山文科大臣 年頭の所感 働き方改革など一体的推進 端末更新基金、高校DX化も
盛山正仁文部科学大臣による6年年頭所感の概要はつぎのとおり。
【はじめに】
文部科学省が担う教育、科学技術・学術、スポーツ、文化芸術は、社会が激しく変化する中で、変化を力にし、個人や社会の未来を切り開くために極めて重要です。文部科学大臣として、あすはきょうより良くなる、誰もがそう思える社会を形成していけるように、文部科学行政を着実に進めていきたいと考えております。
わが国の将来を展望したとき、少子高齢化の進展、地球規模課題の解決、地域間格差の拡大といった社会課題が存在する中で、教育こそが社会をけん引する駆動力の中核を担う営みです。公教育の再生は少子化対策と経済成長実現の観点からも重要であり、あらゆる地域で、教育を通じ、一人ひとりの豊かで幸せな人生と社会の持続的な発展が実現できるよう、教育振興・教育投資の充実に努めます。現下の物価高の影響下でも、学校等において安心して活動が継続できるよう、関係省庁とも連携しながら対策を講じます。
今月1日、令和6年能登半島地震が発生いたしました。亡くなられた方々に心からお悔やみを申し上げるとともに、被災された全ての方々にお見舞いを申し上げます。文科省としては、地方公共団体や関係機関・団体とも緊密に連携し、被災地の復旧・復興、被災された方々の支援に全力で取り組んでまいります。
【初等中等教育】
教師は学校教育の充実・発展を通じた公教育の再生に欠かせない存在であり、質の高い教師の確保を図ることは喫緊の課題です。子どもたちへの教育の質の向上に向け、教師の養成・採用・研修の一体的改革を着実に進めるとともに、小学校高学年の教科担任制の強化、教員業務支援員の全小・中学校への配置および副校長・教頭のマネジメント支援をはじめ、できることは直ちに行いつつ、中教審での議論を踏まえ、学校における働き方改革の更なる加速化、処遇改善、学校の指導・運営体制の充実、教師の育成支援について、文部科学行政の最重要課題として一体的に進めます。
1人1台端末は、個別最適な学びと協働的な学びに不可欠な公教育の必須ツールです。国策として推進するGIGAスクール構想の実現に向けて、各都道府県に基金を設置し、1人1台端末の更新を安定的、かつ着実に進めるとともに、自治体や学校への伴走支援の徹底強化や好事例の創出・展開を通じて端末の活用促進を図ります。その際、デジタル教科書の導入によって、児童生徒の学びの充実を進めます。
また、高校のDX化の推進等を通じたデジタル人材育成の抜本的強化や、文理横断・探究的教育の充実、女子高校生の理系選択者の増加に向けた取組を行うとともに、初等中等教育段階での国際交流を進めます。
幼児教育の質の向上も重要です。こども家庭庁とも連携し、幼児期および幼保小接続期の教育の質的向上を図ります。
子どもたちの豊かな学びを保障するため、地域や家庭と学校が連携・協働することが必要不可欠です。全ての学校での学校運営協議会制度の導入に向けた取組を加速してまいります。また、休日の部活動の地域連携・地域移行について、7年度までを改革推進期間としつつ、地域の実情に応じて可能な限り早期の実現を目指し、文部科学省全体で取り組みます。
学校施設については、教育環境の向上と老朽化対策を一体的に進めるとともに、災害時の避難所としての機能強化を図ります。
【高等教育】
激しい社会的変化の中で、高等教育機関は人材育成や知的創造活動の基盤として、社会の将来的な発展を支え、推進する使命を持っています。
少子化の進展等を踏まえ、高等教育全体の適正な規模を視野に入れた地域における質の高い高等教育へのアクセス確保の在り方等について、中教審での議論を踏まえつつ、必要な対応を行ってまいります。
デジタル・グリーン等の成長分野をけん引する高度専門人材の育成に向けた学部再編等の改革への支援や社会人の学び直しの充実を図るとともに、大学における質の高い留学生交流の拡大および基盤となる大学の国際化を一体的に推進します。また、国立大学法人運営費交付金や施設整備費補助金、私学助成など基盤的経費を安定的に確保するとともに、高等専門学校の高度化、国際化を図ります。
さらに、先の通常国会で成立した私立学校法の一部を改正する法律や、昨年の臨時国会で成立した国立大学法人法の一部を改正する法律の着実な施行に向けた取組を進め、引き続き国立大学法人や学校法人のガバナンス改革に取り組んでまいります。
【誰もが学ぶことができる機会の保障】
どのような理由があっても、誰一人取り残されることなく、子どもたちの学びの機会を確保することは、文科省の使命です。
4年度には、小中高校における不登校児童生徒数が約36万人、いじめ重大事態の発生件数が923件と過去最多となるなど、極めて憂慮すべき状況です。この状況を踏まえ、昨年10月に不登校・いじめ緊急対策パッケージを策定しました。校内教育支援センターの設置促進やICT端末を活用した早期発見・支援など、昨年3月に取りまとめた不登校対策であるCOCOLOプランの取組を前倒しするとともに、いじめの早期発見・支援の強化や自治体へのサポートチームの派遣、より課題を抱える学校へのスクールカウンセラー等の配置充実など、不登校・いじめ対策を緊急強化してまいります。また、学びの多様化学校の設置を推進します。
特別支援教育の充実のため、インクルーシブな学校運営モデルの構築、医療的ケアが必要な子どもに対する支援の充実などに取り組みます。子どもたちが安心して学校で過ごせるよう、養護教諭等の支援体制の強化を進めます。
外国人児童生徒、貧困や虐待等の困難を抱える児童生徒、へき地の児童生徒等についても、それぞれの教育的ニーズに応える学びの場を提供いたします。
こども家庭庁とも連携し、幼児期までの子どもの健やかな成長のための環境の確保、不登校・いじめ対策、放課後児童対策に取り組みます。また児童生徒等に対する性犯罪・性暴力は決して許されません。「生命(いのち)の安全教育」や、教育職員性暴力等防止法を踏まえた厳正な取組を推進します。
夜間中学の全都道府県等での設置促進や「グローバル人材の原石」である在外教育施設で学ぶ子どもたちのために国内同等の学びの環境整備を推進します。
いかなる経済的な状況でも質の高い教育へのアクセスを確保できるよう、少子化対策の観点からも、幼児教育から高等教育段階まで、教育費負担軽減の取組を切れ目なく行います。特に高等教育の修学支援新制度の中間層への拡大や、大学院修士段階の授業料後払い制度の創設等を6年度から実施するとともに、7年度から、子ども3人以上を扶養している多子世帯の学生等について、所得制限なしに、授業料・入学金を国立大学の標準額など国が定めた一定の額まで無償とする措置を講じます。
わが国に居住する外国人が日常生活および社会生活を国民と共に、円滑に営むことができる環境の整備を行うため、日本語教育機関認定法の施行準備を着実に行うとともに、地域の日本語教育の推進を図ります。
【科学技術・イノベーション】
地球規模の課題に対応し、持続可能で強靱な社会を構築していくためには、科学技術・イノベーションの力が必要不可欠です。外交・安全保障の分野でも、科学技術の役割が一層増しております。他方、わが国の研究力は相対的に低下しております。わが国の研究力向上のため、人材、資金、環境に関する施策を総動員してまいります。
第1に人材。好奇心を持つこと、これが学びや研究の入り口です。初等中等教育段階より、探究的な活動の充実と併せて、科学技術人材の裾野の拡大と才能の更なる伸長のための取組を進めます。また、意欲と能力のある学生が博士課程を目指すことができるよう、博士後期課程学生への経済的支援の強化や、博士人材が産業界も含めて幅広く活躍するためのキャリアパス整備を行います。
第2に資金。イノベーションの持続的創出に向けて、科研費などの競争的研究費と基盤的経費による支援等を通じ、学術研究・基礎研究の充実を図ります。また、大学ファンドの支援対象となる国際卓越研究大学の認定に向けた取組を着実に進めるとともに、地域中核・特色ある研究大学の抜本的強化等を通じ、わが国全体の研究大学の研究力の向上を図ります。
第3に環境の整備。ハードとソフトの両面で充実が必要です。放射光施設NanoTerasuの共用、SPring―8の高度化をはじめ、世界最高水準の大型研究施設の整備・共用を進めるとともに、国際的に魅力ある拠点の整備や先進国、ASEAN等との国際頭脳循環を進めます。
科学と社会とのつながりも重視します。大学や研究機関における研究成果を社会に実装するため、宇宙や医療系も含めたスタートアップの創出力の強化、学術論文等のオープンアクセス化の推進、産学官が連携した起業家教育の充実を通じて、イノベーション・エコシステムの強化を図ります。総合的な国力の強化に資する研究開発の推進や科学技術分野における経済安全保障の取組を関係府省と連携しながら進めます。
生成AIの研究開発や次世代AI人材育成を抜本的に強化します。また、素材・材料などのマテリアル、脳科学をはじめとするライフサイエンス、量子技術、フュージョンエネルギー等の国家戦略を踏まえた重要分野の研究開発を戦略的に進めます。
2050年カーボンニュートラル実現に向け、革新的なGX(ジーエックス)技術の研究開発、ITER計画等の推進、高温ガス炉に係る研究開発や高速実験炉「常陽」の運転再開を含めた原子力分野の革新的な技術開発、人材育成に取り組みます。「もんじゅ」や「ふげん」の安全・着実かつ計画的な廃止措置等の取組も推進します。
宇宙開発はフロンティアとしてのみならず、新たな産業創出や安全保障の観点からも重要です。日本人初の月面着陸を目指すアルテミス計画や、基幹ロケットの開発等の研究開発を推進するとともに、国立研究開発法人宇宙航空研究開発機構に「宇宙戦略基金」を設置し、民間企業・大学等による複数年度にわたる宇宙分野の先端技術開発や技術実証、商業化を支援します。
【スポーツ】
スポーツには、国民一人ひとりの人生を豊かにするのみならず、社会を変え、未来を創り上げる力があります。第3期スポーツ基本計画に基づく施策を着実に推進し、スポーツそのものの価値や社会活性化等への寄与といった価値をさらに高め、スポーツ立国の実現を目指します。
本年開催のパリオリンピック・パラリンピック競技大会に向けた競技力向上を図るとともに、ドーピング防止活動等を通じたスポーツの誠実性・健全性・高潔性の確保等を進めます。
国際競技大会等の運営の透明性・公正性の確保、スポーツ団体のガバナンスや経営力の強化に向けて取り組みます。セカンドキャリア形成支援、学校体育の充実や地域における持続可能で多様な子どもたちのスポーツ環境整備、国民のスポーツ実施率向上を図ります。また、スポーツを通じた健康増進や経済活性化、地域振興や共生社会の実現に取り組みます。
【文化芸術】
文化芸術は、国民の心を豊かにし、社会・経済的にも様々な価値を生み出す源泉です。文化庁移転を機に、文化芸術による地方創生、食文化や文化観光建築文化の推進など新たな文化行政の展開に取り組みます。
第2期文化芸術推進基本計画に基づき、心豊かで活力ある社会を形成するため「文化芸術と経済の好循環」を加速し、文化芸術立国の実現に努めます。
コロナ禍の影響を受け、継承の危機に瀕する文化財について、文化財の匠プロジェクトを推進し、修理、防火・耐震対策、災害復旧等の強靱化を図るとともに、京都移転を契機として文化庁ならではの地方創生を実現するため、ハード・ソフト両面からの文化財の上質で思い切った活用や、日本遺産等の地域の文化資源の磨き上げを進めます。日本博2・0、文化芸術のグローバル展開を進めるとともに、クリエイター・アーティストの育成や国立を含む博物館や劇場等の文化施設の機能強化への複数年度にわたる支援を図ります。文化芸術のデジタルアーカイブ化を図るとともに、AIと著作権の関係について、侵害リスクに関する懸念払拭に向けた議論を進めます。芸術家等を対象とした相談窓口の開設など文化芸術活動の基盤強化、子どもたちの文化芸術体験の機会充実を図ります。
【終わりに】
私は就任以来、30ヵ所を超える現場を積極的に訪問し、お話を伺ってまいりました。現場の多様な声にしっかりと耳を傾けつつ、国民の皆さまが夢や希望を持ち、それを実現できる社会をつくっていけるよう、必要な政策を実行してまいります。本年もどうぞよろしくお願い申し上げます。
(道・道教委 2024-01-09付)
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