マイスター・ハイスクール静内農高 3年間の研究成果を披露
(道・道教委 2024-01-09付)

静内農業高・マイスターハイスクール成果発表会
静内農業高・マイスターハイスクール成果発表会

 【苫小牧発】静内農業高校(赤穂悦生校長)は昨年12月中旬、新ひだか町公民館で「マイスター・ハイスクール事業」成果発表会を開催した。食品科学科、生産科学科園芸コース、生産科学科馬事コースの代表生徒が3年間の研究成果や事業を通して感じたこと、学んだことを報告。地元企業等と連携した商品開発やバイオ炭と緑肥を活用したミニトマト・デルフィニウムの栽培試験、軽種馬の高度な知識と技術の習得に向けた授業などに取り組んだ成果を発表した。

 同校は3年度から、文部科学省のマイスター・ハイスクール事業の指定を受け、本年度で最終年度を迎える。

 「地域発次世代イノベーター人材の育成~持続可能な日高農業の創り手」をテーマに研究を推進。1年目は「発見」、2年目は「挑戦」、3年目は「進化」をキーワードに、行政機関、企業、法人、団体、大学と協働で、食品産業、園芸、馬産などの農業・農業関連産業を支える人材育成を目指して取り組んできた。

 発表会は、事業成果を全道の高校生、教育関係者・産業人材育成に興味のある道民に普及させることで将来の本道産業を支える人材育成につなげることがねらい。同校生徒や教育・農業関係者らオンラインを含め126人が参加した。

 冒頭、全校生徒を代表して遠藤愛歩農業クラブ会長があいさつし、3年間の事業を振り返り、多くの食品関連企業と関わり、各取組が自身の成長につながったことを報告。発表会では、これまでの学習で身に付けてきた専門的な知識をもとに活発な討議を求めた。

 引き続き、食品科学科3年の梅木優歌さん、生産科学科3年園芸コースの山本唯人さん、3年馬事コースの牛尾夢我さんが研究成果を発表した。

 梅木さんは、食品製造や商品開発に関わる高度な知識や技術を深めるため、多くの関係機関や企業と連携してきたことを報告。4年度に開始した科目「商品開発Ⅰ・Ⅱ」の授業で、新ひだか町や地元企業と連携した商品開発や、科目「課題研究」で、雪印メグミルク㈱、ベル食品㈱、㈱南華園など、様々な食品関連企業と連携した商品開発を進め、計8点を商品化したことを伝えた。

 開発商品は、国分北海道主催の商談会で出品したり、大阪あべのハルカス近鉄百貨店で販売したりするなど、様々な機会で学習成果を発表してきたことを紹介。「多くの企業から食品に関わる知識や技術を学ぶことで食品関連産業に就職を希望する生徒も増えてきている」と成果を話した。

 山本さんは、農業の担い手育成、高度な栽培知識と実践的な技術の習得、農業経営と情報の活用、持続可能な農業技術の4分野にわたって事業を展開してきたことを報告。ことしから、みどりの食料システム戦略として、新ひだか町、JAしずない、JAみついし、日高農業改良普及センター、日高振興局と同校で構成する「新ひだか町みどりの食料システム推進協議会」を設立し、バイオ炭と緑肥を活用したミニトマト・デルフィニウムの栽培試験を行ったことに触れ「環境に配慮した持続可能な農業について学びを深めている」と伝えた。

 牛尾さんは、軽種馬産業の担い手となれるよう、競走馬の繁殖から育成、販売までの学習を通して、軽種馬を取り扱う上での高度な知識と技術の習得を目標に設定。日本軽種馬協会と連携し、軽種馬の栄養管理、繁殖、育成、調教、販売等の分野に関する授業を行ってきたことを報告した。

 また、以前、日本軽種馬協会で勤務していた人を産業実務家教員として同校に招き、競馬界の最先端の知識や技術も学んできたことも紹介した。

 このあと「10年後の日高を考える」をテーマに食品部門、馬事部門、園芸部門の3分野10グループに分かれて討議を実施。食品部門は、10年後における「地域の食の在り方」、馬事部門は「日高馬産地」、園芸部門は「花き・野菜の生産と活用」についてそれぞれ提言した。

◆経験生かし夢の実現を 倉本教育長と生徒が懇談会

 静内農業高校のマイスター・ハイスクール事業成果発表会では、終了後に道教委の倉本博史教育長と同校生徒との懇談会が開かれた。

 倉本教育長のほか、相馬利幸課長ら高校教育課から3人、行徳義朗局長ら日高教育局から3人、静内農業高の赤穂悦生校長、工藤淳教頭、食品科学科の3年生2人、2年生1人、生産科学科の3年生2人、2年生1人が参加した。

 高校生は、成果発表会を終えての感想や事業における外部講師の講義で印象に残っていることなどを話したほか、卒業後の夢について「マイスター・ハイスクールを通して関心を持った分野について大学で学び、農業経営をしたい」「家業を継ぐために静内農業高に入学した。これからも知識や経験を積み重ねるなどして学び続けたい」などと力強く語った。

倉本教育長は「マイスター・ハイスクール事業を通して、普段ではなかなかできないことを経験できたり、人と出会ったりしたことが何よりも財産になっていると思う」「今までの高校生活で失敗したことも含めて良い経験として、自分の夢の実現に向けてこれからも頑張ってほしい」と激励の言葉を贈った。

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静内農高倉本教育長と生徒との懇談会
静内農高倉本教育長と生徒との懇談会

(道・道教委 2024-01-09付)

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